目覚め
ある日、ある時、ある場所でソレは生まれ落ちた。そこにあるのは同じく生み落とされた同族とただただ広く、何も無い空間だけである。
生まれ落ちたソレとその同族達は幼体などといった本来、生物にはあるはずの過程を全て省略して、成体の状態でその場に誕生した。
ソレと一緒に生まれ落ちた同族達は生まれ落ちた瞬間にその場を駆け回り手に持っている木で出来た粗末な棍棒を振り回しながら汚い声で愉しそうに鳴く。
「「「ぐギャ!グギャギャ!」」」
「「「グギャギャギャ!グギャァァ!」」」
ソレは目の前の光景を目にしながら思考を開始した。ここは何処なのか、彼らはなんなのか、何をしているのか、何故走り回るのか、様々な事を思考するが彼が生物として脆弱すぎ思考するために必要な脳も発達していないためだろうか、答えは出ず頭に酷い頭痛を残すだけであった。
彼はあまりにも酷い頭痛に考えるのをやめたが、一つだけ分かった事があった。自分とあの走り回っている生き物は同じ生き物だという事だ、当たり前の事かもしれないが彼にとって、これはとても大きな進歩であった。
彼は一つ、自身の抱いた謎を解き明かした達成感を得たがやはり脳が発達していないためか、次の瞬間には忘れて他の同族達と一緒に駆け回ったり、棍棒を振り回したりして遊んでいた。
しばらくすると、やはり彼は何かを疑問に思い思考を開始する。答えを求めれば求めるほど答えはでない、頭痛は酷くなるばかりで謎は深まっていく。
そんな事をしばらく続けていると彼は思考する事にも慣れてきたのか、今度はいくつかの思考を通して得た答えを記憶する事に成功した。
人間であれば多くの事を瞬間的に覚える事が出来るが、彼の脳は脆弱であるため時間をかけて少しずつでも、3つ覚えられれば良い方である。
思考を続けていると、自身の思考の末に出した結論に満足した彼は本来は使わないはずの脳を使ったためか、この空間を駆け回っている、他の同族達とは比べものにならないほど莫大な精神的な疲労が押し寄せてきていた。
他の同族達が未だ元気に駆け回る中、彼は暴力的なまでの睡魔に襲われ意識を落としたのであった。
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