#9
ドラム担当のモヒカンがスティック同士を叩き合わせ、スタートの音頭を取り、全員が肩でリズムを刻む。ドラムから音が入り、ギターのツンツンとベースのロン毛が続けて演奏を始めた。モミアゲもキーボードで音を合わせる。
虎寅虎 トラトラトラ とらとら音頭だ
YEAR――――――‼
「うるさあああああああああい‼」
ガラガラガラッと勢いよく音楽室の扉を開けて、力が怒鳴りながら演奏中の彼らにドスドスと大きな足音を立てて近寄る。
「り、力先生⁉ いま生放送中ッス‼」
「うるさーい! わしが手本を見せてやるから、マイク貸せい!」
力がツンツンの前に置かれてあるスタンドマイクの前に立ち、ツンツンを横に移動させる。そして室内の電気を消灯、天井のスポットライトを自分達に当て、ミラーボールを回す。
「ミュージック、スタート!」
いつの間にか用意していた赤いストールとスーツの色に合わせた白ハットを身に着けた力は、カメラに向かって指を鳴らす。キラリと光を反射するサングラスが力のダンディズムを更に加速させる。
虎の子渡しな時代でしょ
雁字搦めにならないで
堂々と千里を歩もうぜ
モンチー達の演奏に合わせて、力が渋い声で力強く、そしてしなやかに歌う。肩を揺らしながら指を弾いてリズムに乗る。
大きいもの求めるのに 失敗してしまうかも
なんて思ってちゃ 一歩も踏み出せないのさ
教室に残っていた生徒達がテレビから流れる生放送に注目していた。
「力先生って歌上手いんだ」
「すごいダンディだよね」
力の意外な歌唱力に聞き惚れる生徒達。
松竹梅 松竹梅 松竹梅
ツンツンとモミアゲとロン毛、モヒカンの四匹が合唱コーラスを入れる。
イエローベース デンジャラスなあいつを起こそうぜ
さあ、トラの尾踏んで踊ろうぜ!
力がサングラスに指を添えた後、その手を横に広げ、反対の手でマイクスタンドを掴む。
「YEAR~~~~‼ HEY! COME ON‼」
力がポケットからリモコンを取り出し、振付に合わせて電源を入れた。