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それではお楽しみ下さい。
暗く無限に広がる宇宙の闇。その暗闇の中に一つ、青く輝く星があった。地球だ。
「ウホホホー・・・・・・」
その美しい星を小型の衛星機の窓から、うっとりと眺める一頭のオランウータン。夜空の下で光り輝く幻想的で広大な海、ロマンチックな光景にオランウータンは心奪われていた。
しかし、突如地表に小爆発が起きた。一つ、二つ、次第に戦火が広がっていく。灰色の雲、赤い炎、それらがオランウータンの純粋で穢れの無いつぶらな瞳に映る。
絶望を目の当たりにするオランウータンに更に追い打ちをかけるように、衛星機内に警報アラームが突然鳴り始めた。それと同時に激しい揺れが襲い掛かる。衛星機の軌道が変わり、地球の重力に引き寄せられ始めたのだ。
火の海が間近に迫り来る光景に、オランウータンの表情が引き攣る。恐怖でパニック状態に陥り涙と鼻水が宙を漂う。
そして、衛星機は大気圏に突入し赤熱した。
「ウキィーーーーーーーー‼」
窓に映るは赤い炎。オランウータンの絶叫は衛星機と共に炎の中に飲み込まれていった。
それから数日、数週間、数か月。いや、正確にはどれだけの時間が流れたのかは分からない。
「・・・・・・キキィ」
オランウータンが目を覚ました。自分が今どんな状況なのか、一瞬飲み込めなかったが、意識が途切れる前の記憶がフラッシュバックされて思い出した。オランウータンは自分の体を触ったり、匂いを嗅いだりして、精神を落ち着かせる。
生きている事を実感し、安堵したオランウータンだったが、外がどうなっているのか気になり始めた。恐る恐る窓の外を覗き込む。そこには灰色の世界が広がっていた。
自分が宇宙に打ち上げられる際、人間から教え込まれていた知識を思い出し、オランウータンはポッド搭乗口のロックを解除する。ボタンを押してレバーを引くと、プシューと音を立てハッチが開いた。
オランウータンが震えながら搭乗口に手を掛け、地面に足を踏み出す。コンクリートに細かい塵が積もる感触が、足の裏に伝わる。辺りを見渡すと、そこには荒廃しきった世界が広がっていた。崩れた建物の残骸、かつて道路だった痕跡、風に舞う砂埃、とても人間がいるとは思えない光景だった。
人間の姿は見えないが、全ての生物が根絶したわけではないようだった。地を這う虫の姿に、どこからともなく聴こえてくる鳥の声。オランウータンは自分以外の生物を探しに、この荒廃した街だった痕跡を歩いてく。