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転生したら小金持ちの禿げ親父だった  作者: あるかなそーと
第一章
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第四話

風呂の脱衣所の姿見で僕は見知らぬ男の裸を繁々と眺めていた


身長は165cm位だろうか、決して高くはないが元々の僕は158cmだったからそれよりは背が高い、55歳だと聞いていたのだが、想像以上に脱いだ姿は引き締まっている、勿論、若いマッチョマンみたいに盛り上がった大胸筋とかシックスパックな腹直筋とはいかないが、メタボじゃない感じに脂の乗ったお腹とかいい感じに弛んだ鳩胸とか肩と腕と脚にも適度に筋肉がついていてまるで往年の元格闘家、みたいな雰囲気を醸し出している


一体この人はどう言う人だったのだろうか?


そして何よりも目を背けたくなるのが股間の一物、これは、かつて自分のモノしか見た事がない僕にも分かる位デカイ、しかも平常時だと言うのに先端部は完全露出したままで、、、この人には娘が居るのだからこの一物は僕には想像も出来ないような羨ましい事、真っ当な雄としての使命を果たした経験があるのだろう


それを思うと、羨ましい、と言うか、そう言う経験も出来ないままに電車に轢き潰された自分の事が不憫で堪らなくなるから、何と言うかこんな神妙な面持ちになってしまうのだ


「はぁ、」


僕が唯一優越感に浸れるのは、禿げ散らかした頭部位だろうか




ーーー

僕は烏の行水を済ませた後リビングに戻り、何か飲物が無いかと冷蔵庫を物色する、ひとん家のお勝手を勝手に漁るのは少し罪悪感を伴うが、今はこれが僕の家なのだから仕方がない


「何か飲む?」

「あ、」


いつの間にかそばに寄り添ってきたいい匂いのするお姉さん(僕の娘)が冷蔵庫からビールの瓶を取り出して僕に目配せする


「お茶か、水がないかなって、」


本当は炭酸飲料かスポーツドリンクが欲しかったのだが、一応遠慮する


「冷たいのは買ってこないとないみたい、」


僕の娘の悠里さんはシンクの上の戸棚から古いお茶っぱの缶を取り出して、少し呆れたようにフッと笑う


「ママが死んでから、お茶も一人で淹れた事ないんでしょう?」

「さあ、どうだろ、」


恐らく何年も前のそのままの古い茶葉を急須に入れて、ポットからお湯を注いで口元に笑みを溢しながらも、悠里の目には今にも溢れ出しそうな位に不安と心配を湛えているのが分かる


「一人で、全部抱え込もうとしないで、悠里を頼って、」

「うん、」


悠里の言葉が、まるで轟木哲也、僕本人に向けられたみたいに錯覚して、思わず胸が締め付けられて、熱いものが僕の目の前に込み上げてくる

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