第12話 魔王候補は鍛冶師勇者と秘密を共有する
モニカと二人で…
-双子の兄アム(勇者アム)視点-
モニカは俺が負けたらエリに言うことを聞かせる代わりに、自分が負けたら俺の言うことを聞く約束をしていたのか。
別に頼みたいことなんてないんだけどな。
仲良くできればいいし、さっきの戦いのも痛かっただろうから謝っておきたいし。
どうしようと思いながら、モニカの部屋の前に来てしまった。
そもそも隣の部屋だからな。
それにあまり離れていると、またエリと引き寄せあうし。
コンコンコン
「どうぞ」
がちゃ
「来たわね、アム。最初に謝らせてほしい。私はあなたの実力を知りもせずに侮辱をした。どうか許してほしい。いや、今からする『命令』でその罪を償っても構わない」
「『命令』って?」
お願いじゃないないのか?
「まだ未熟な体だが、裸にして鞭打っても、慰み者にしてもいい」
『ぶぶっ!』
あれ?壁の向こうから何か聞こえる。
「どうやらエリが聞き耳を立てているみたいだな。黒魔法が使えるなら『黒楼結界』で音や視界を防げるんだが」
「お父さんからモニカの『封魔の呪印』の効果を弱める魔道具を借りてきているけど。低レベルの黒魔法なら使えるようにしようか?」
「いいのか?」
低レベルなら問題ないだろうし。
「『黒楼結界』!では話の続きだ。私は人間の罠にかかって捕まった時、慰み者にされる未来しかなかった。そんなことは絶対に嫌だった。だから隙があれば死ぬつもりでいた。だが、父上に助けられた。あんな高潔な人間が居るのかと驚いた。そして、今、アムに負けたことで思った。私はアムになら全てを奪われてもいいと」
「君は美人だからそう言われると嬉しいけど、駄目だよ」
「なぜだ?」
「そういう関係になりたいと思えない」
「魔族だからか?」
「いや、その、気分を悪くしたら困るが、性格が好みと違って」
「そうか。私は男っぽいし乱暴な物言いだからな」
「そうじゃなくて、もっと悪女っぽい感じが好みと言うか」
俺、何言ってるんだ?
「私は十分悪女だと思うのだが?」
「いや、素直だと思うけど」
「そうなのか?しかし、別に関係など気にせず欲望のままにすればいいだけじゃないか」
さすが魔族だな。
そういう感覚は違うわけか。
よし、じゃあ逆にこっちから攻めてみよう。
「モニカ。そんなこと言ってるけど、俺が君の事を欲しいって言わないとだめなのか?」
「どういう意味だ?」
「俺の事が好きになったから、俺のものにしてほしいって言えばいいじゃないか」
「好きだからアムのものにしてほしい」
即答っ?!
「一目惚れだ。いや、あの戦いでアムに惚れた。惚れっぽいと笑われてもいい。私は本気なんだ」
そこまで言われると悪い気はしないけど。
「悪女がいいならなってみせよう。だから、お前のものにしてくれ」
「まだそういうのは早いだろ」
「魔族は12歳から結婚できる」
「人間もできないことはないけど、普通は15歳からだから!」
12歳で結婚が許されるのは、精神と肉体が15歳以上と認められた場合のみだ。
モニカは…スタイル的には認められそうではある。
少なくとも顔つきだけなら大人以上の美しさだよな。
-魔族モニカ(女神ミュール)視点-
こんなに私が頼んでいるのに駄目なのか?
自分で言うのもなんだが、私はかなり美人でスタイルも良いはずなんだが。
やっぱり性格か?
悪女ってなんだ?
今度エリ様に聞いてみよう。
しかし、男はもっと貪欲なものじゃないのか?
「わかった。もしかしてアムの体がまだ未熟なんだな。こことか」
私はアムの股間を鷲掴みに…
「わ、やめっ!」
「え?これって…」
ドドドドドド
ゴゴゴゴゴゴ
「アム、すまない。私はまたお前の事を良く知りもせず侮辱してしまった。まさかこんな『超大剣』を帯剣していたとは。なるほど、これでは私のほうが壊れてしまう。もう少し大人になるまで待ってくれないか」
「…」
「アム?どうした?」
「魔族って、そういう話は平気なのか?」
「そうだな。何しろ股間の形がわかるような服装や半裸の魔族が多いからな。みんなあまり気にしないぞ。でも布越しとはいえ男性のものを触ったのは初めてだな」
「人間はそういう話は苦手で、触られるのは嫌がるから、もうしないでくれ!」
そういうものなのか?
「わかった。アムの言う通りにする。では、改めて、私をどうしたいか言ってくれ」
「その前に『隷属の呪印』の書き換えをして、学校に行けるようにしたいんだが」
「その魔道具で書き換えるのだな。わかった、やってくれ」
「じゃあ、呪印を見せて」
私はワンピースを脱ぐ。
「わっ!」
ん?何を驚いている?
-双子の兄アム(勇者アム)視点-
ワンピース脱いで全裸とか何?!
「腰の後ろにある呪印を見せるには脱がないといけないだろ?」
そうだけど、なんで下着もつけてないんだ?!
「アムに求められてもいいように邪魔な下着はあらかじめ脱いでおいた」
魔族ってそういうことに対する抵抗ってないんだな。
まあ、後ろ向きだからそこまで恥ずかしくもないけど。
「すぐ終わるからな」
この魔道具は呪印の登録者であるお父さんだけが作動できるように設定されていて、今は書き換えが可能な状態にしてもらってある。
魔道具を起動してモニカの腰にある呪印に触れさせ、魔道具についている針を俺の指に突き刺す。
俺の血が魔道具を通じて呪印に吸われ、書き換えが始まる。
…
…
…
「終わったぞ」
「これで私は心身ともにアムのものになったのだな」
「そういう言い方は誤解を生むからやめてほしいな。あと、下着とかも含めて普通に服を着てくれないか」
「わかった」
着替えた服はワンピースではなく、活発そうなパンツスタイルだった。
もしかしてあのワンピースは寝間着なのか。
「それでは改めて聞こう。私をどうしたい?何をさせたい?何でも言ってくれ」
それならさっきの結界を見て思い付いたことがある。
そのくらいのことなら頼んでもいいかな?
少なくともいかがわしいこと頼むよりはいいよな。
「モニカ、それでは頼みたいことがあるけどいいかな?」
「何でも言ってくれ」
「まず命令をする。これから俺が言うこと、俺が教えた俺に関する情報全て。誰にも教えないこと。両親やエリや先生、国のお偉いさんであってもだ」
「わかった」
これを教えるのは本当はしたくないが、モニカの力を借りないと俺は『超勇者』になれないんだ。
-魔族モニカ(女神ミュール)視点-
どういう秘密だろうか?
『超勇者』の秘密とか?
いや、そんな重要なことは教えてくれないだろう。
いったい何だろう?
「俺は『天啓の儀式』で『超鍛冶師』とのお告げを受けた。だから本当は『超勇者』なんかじゃない。それは俺がみんなに付いた嘘なんだ」
「なんだと?!」
代々勇者の一族のはずだぞ。
超が付くとはいえ鍛冶師とは…。
「ふふふ。まさかな。『魔告の儀式』で『魔王』であり『神』であるとお告げを受けた私が、鍛冶師に負けるとは。やはりアムはすごいな」
「見下したりしないのか?」
「それなら、負けた私はどうなる?」
「そうか。そう言ってもらえると助かる」
アムは本当に自分に自信が無いのだな。
「よし、私はこれからアムが自分に自信を持てるようにしてやろう!」
「え?」
「お前は強い。それだけではない、きっとすごい努力家なのだろう。だから、私はアムを肯定する。お前はすごい男だ。きっと『超勇者』になれる」
「ならないといけないんだ。だから、モニカに手伝ってほしい。エリとの距離を取れるようにするために」
アムの話では、呪いのせいでエリ様と30分も離れておられず、距離が遠くなるほどさらに引き寄せる力が強まるとのことだった。
「今持っているスキルを研究したり試したりしたくても、エリに見られたら困るんだ。だから、これから夜寝るまでの間だけでもいい。ここで結界を張って練習をさせてくれないか?」
頼みたいこととはそんなことか。
お安い御用だ。
「私の寝る時間を削ってもかまわないぞ」
「それは…助かる。じゃあ、エリが寝付いてから来させてもらう。あとは、俺のスキルの相談に乗ってくれ。一人で考えていてはどうしても行き詰ってしまうんだ」
「かまわない。むしろ頼られるのは嬉しいぞ」
「それならさっそくだけど…あっ、時間だ」
「何のだ?」
「引き寄せ合う時間だ」
アムは何もしていないのにエリ様の部屋の方向に引っ張られるように体が動く。
思わず私はアムを抱き締めて引き寄せられないようにする。
パリン!
ふいに結界が破れ、壁をすり抜けてエリ様が飛んできた。
ばっ、がしっ
私を振りほどいて、アムはエリ様を受け止める。
そうか、これが呪いの力か。
壁をすり抜けて、低レベル結界とはいえ、それを抵抗なく破ってしまえるのか。
それでは自由など無いも同然だな。
-双子の妹エリ(女魔王ステラ)視点-
「モニカ!」
「はい」
「今、お兄様と抱き合ってませんでした?」
「壁に引っ張られたので、危ないと思って押えました」
「そう、押さえたんだ。はは。うん、ならいいかな。それで、話は終わったの?」
「すまん、これから本番だ」
本番って何のっ?!
「これから本題なんだ。すまないがもう少し待っていてくれ」
「エリが居たらだめなの?」
「頼む」
お兄様に頼まれたら断れないから、すごすごと部屋に帰るの。
(不安か?)
うん、だって、モニカはすごく綺麗でプロポーションもいいもん。
やっぱり今から『初夜』をする気なの!
(添い寝くらいいいだろ)
もしかしてそれ以上のことをするの?
(いや、物理的に無理だろ)
物理的に?
(エリちゃんみたいなおこしゃまには早い話だな)
ぶー。
(アムがモニカを抱くとかありえないって話だよ)
そうよね。
お兄様の『破城槌』はきっと魔族でも受け止められないの。
(おいっ!なんだその凶悪そうな二つ名は!)
だってそうなんだもん。
(知ってたのか?)
一緒にお風呂に入るし、朝だってわかるよ。
(あれでも隠そうとしていると思うんだが)
偶然見えるのは不可抗力なの。
(あれではアムも相手探しが大変だろうな)
心配ないの。
(どうしてだ?)
双子だから体のつくりも似ているはずだから、きっと大丈夫なの。
(それってどういう…まさか!駄目だっ!絶対にな!)
大丈夫。二人で魔王を倒すまでは我慢するから。
(アタシが嫌なんだ!)
ステラお姉さまはアムお兄様が嫌いなの?
(…嫌いじゃない。だけどそのなんだ。兄妹だからな)
だから魔王を倒すの。
それなら兄妹でも結婚できるの。
(アムの気持ちは知ってるのか?拒んでいるだろ?)
大丈夫なの。
じっくり攻めるから。
呪いのお陰でどうせわたしから離れられないの。
-女魔王ステラ(双子の妹エリ)視点-
とんでもない妹だわ!
このままではアタシの貞操の危機よ!
…この考えは聞こえてないわよね?
心の奥で考えていることは聞こえないはず。
(ステラお姉さま。前に言ってた『複襲』ってエリも入るんだよね?)
そうよ。
だけど胸を押し付けるとか、抱き着くとか、ほっぺにキスとか、そのくらいまでよ。
(うん。まだ12歳だもんね)
良かったわ。わかってもらえたみたい。
(13歳になったら、どこまでいいの?唇にキス?胸とか触ってもらうとか?)
今と変わらないわよっ!
ああもう!もしかしてこの兄妹、自制しているだけで、実はすごく性欲強いの?!
女神入りの魔王も家に来るし、復讐計画を練り直さないと!
お読みいただきありがとうございます。
ブックマークとか感想とかいただけると励みになります(*^^*)
次回は4月25日土曜日18時更新です。




