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押されてくれない



 一度や二度の失敗でへこたれたら負けよね!


「というわけで今日も今日とて会いに来たわよ!」

「帰れ」


 即帰宅を命令された。

 話し方は本人が気に入らないようなので、元々していた話し方にした。

 猫被ってないときの私も知っているのだから、そりゃ気に入らないわよね!


「何がいや? 可能な限り直すから言ってよ」

「帰れ」


 返される言葉は変わらない。

 しかし、いきなり突撃した割に家に入れてくれたのだから頑張れば何とかなるんじゃないかと期待していた。ポジティブでないとやっていけない。


「ほら、私と結婚したら、好きなだけ胸揉めるわよ」

「お前自分で言っていて悲しくないか?」


 悲しいに決まっているでしょうが!

 可能ならこんなはしたない言動したくないわよ!


「しょうがないでしょ! 私の武器はこの肉体しかないんだから!」

「可哀想なやつだな……」


 同情された。

 やめて、そういうの一番心にくるから。いっそ「このアバズレ!」って怒鳴られたほうがマシだからやめて。


「じゃあ足? 好きなだけ足触りなさいよ!」

「おい、痴女がいるぞ! 摘まみ出せ!」

「あ、待ってごめんなさい、執事に追い出させないで待って待って!」


 呼ばれて出てきた執事に対して、私害ないですよとアピールするために両手を上げる。執事は私とナディルの顔を交互に見ながら思案している。自分なりの答えが出たのか、ポン、と手のひらを叩いた。


「あ、わかりました! ナディル坊ちゃんのコレですね?」

「お前クビな」

「殺生な!」


 コレと言って小指を立てた、私とそう年齢が変わらないように見える執事は、悲痛な声を出しながら主に謝っている。


「追い出されたら生きていけませんよー! 坊ちゃんー! ねー!」

「うるさい坊ちゃん言うな」

「だって言い慣れているんですもん。あ、この人追い出せばいいんですね!」


 そうすればお咎めないと思ったのか、執事は急にこちらに向き直った。

 執事が主にそんな馴れ馴れしい態度でいいのかとか、ナディルがそれを許していることだとかが頭を占めて動きが遅れた。

 ひょい、と執事に担がれた私は、屋敷の扉の前に打ち捨てられた。


「ちょっと! ポイポイ人を放らないでよ!」


 抗議するも、執事はぴゅーぴゅー口笛吹いて素知らぬ顔だ。

 ナディルもなかなかの性格してるけど、この執事もいい性格してる……!

 ナディルは律義にも、追い出した私の前に立つと、心底馬鹿にした表情で言った。


「おい、無駄なことするな。今度来たらお前の親に言うからな」

「あ、親はやめてください、お願いします」


 心の底から額を地面につけて懇願した。

 親だけはやめて。叱るとかじゃなくて私に苦労を掛けていると思って泣いちゃうから義父母。


「ふん、じゃあしばらく大人しくするんだな」


 義父母を出されては引き下がるしかない。

 渋々帰り道を歩きながら、思ったより打ちのめされている自分に気付いた。

 意外とメンタル弱かったのかも。ちょっとくじけそう。

 でもまだあきらめるわけにはいかない!


「お父様お母様、ブリアナはやります!」


 闘志をメラメラ燃やす私を、道行く人が不審に思っていることに気付く由はなかった。



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