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【書籍化】没落寸前だけど結婚したい私【コミカライズ】  作者: 沢野いずみ
本編

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20/39

後悔後先に立たず

レビューありがとうございます!



「終わった……」


 パーティーから一日経った今日。私は何をするでもなく、ドルマン邸で、自分に与えられた自室のベッドに寝そべっていた。

 ベンが今日の仕事はしなくていいと言っていた。おそらくナディルが話したのだろう。気づかわし気な目をしていた。


「もう、婚約者役は終わりかしら……」


 そうなると借金はどうなるのだろう。すでに返してくれているのか、まだなのか。すでに返してくれていたら、今度はナディルに返済を迫られるのだろうか。


「なんてことをしたの私」


 いつもはどんなになじられても大丈夫だったのに。

 最近のドルマン邸での好待遇に慣れてしまっていたようだ。あんな失態を犯すなんて。

 ナディルは怒っているだろうか。怒っているに決まっている。

 一世一代の大勝負だったのに!

 ぐずぐずと鼻をすする。お母様とお父様になんて言おう。怒るかな。いや怒らないな。心配してくれるに違いない。そしてきっと苦労させたと泣くのだ。いやだな、泣かせたくないな。

 コンコン、と扉をノックする音が聞こえた。私は鼻をかんで「どうぞ」と言った。


「ブリアナ、どうだ」


 どうだとはどうだろう。

 ナディルの言葉にどう返したものかと考えつつ、泣きはらした目で見た。ナディルが視線を逸らした。なんだ、見苦しいってことか。自分でもひどい顔なのはわかってる。

 私は意を決して口を開いた。


「お金のことなんだけど」

「…………うん?」


 想定していなかった言葉だったのか、ナディルがきょとんとする。無防備なその顔をうっかり可愛いと思ってしまったが、そんなことを思っている場合ではないと頭を振った。


「できれば肩代わりしてもらって、徐々に返していくって形でもいいでしょうか……」

「は?」


 やはり図々しすぎただろうか。でもここで折れるわけにはいかないのだ。


「必ず返すから。お願いします!」


 そうしなければ実家は終わりだ。私はベッドから降りて、ナディルに頭を下げた。頭上からナディルのため息が聞こえた。


「あのなぁ……」


 ビクリ、と肩が震えてしまった。


「婚約はそのままだ」

「……へ?」


 ナディルの言葉に顔を上げると、困ったように頭を撫でられた。


「あのぐらいどうってことない」


 いや結構なことをしたと思う。

 ナディルに撫でられたまま、訝し気に見つめると、また視線を逸らされた。


「むしろでかした」


 でかした?

 私はますます訳がわからなくなり、首を傾げた。


「こんなに早くことが進むとは思わなかった」


 ナディルは私を撫でながらにこりと笑う。なんだろう。想定していた反応と違う。

 混乱する私とは別に、ナディルは機嫌がよさそうだ。


「坊ちゃん、エイベル様がいらっしゃいましたよ」

「通せ」


 ベンは相変わらずノックをせずに部屋に入ってきた。ナディルは頷く。

 ……待って? 誰が来るって?

 コンコン、と扉がノックされ、ナディルが返事をした。待って、嘘でしょう。今来なくてもいいじゃない。

 私の気持ちを置いて、無情にも扉は開く。そこに立っているのはもちろん、昨日私が胸倉を掴んでしまったエイベルだ。

 さあ、と血の気の引く私とは裏腹にナディルは楽しそうだ。

 エイベルは垂れ目でこちらを見る。そして視界から消えた。


「すみませんでした!!」


 見事な土下座だった。



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