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第22話「緊急家族会議」


 その夜、ミュゼルが門限に従い家に帰ったのちの話。


 俺、クロエ、グルカスの三人で緊急家族会議が開催された。

 議題はもちろん「急遽ウチに泊まることになった前勇者の娘、シャロン・ヘルティアの寝床について」である。


 まず前提として、我らがグルカス夫妻宅には寝室が二つある。

 一つはグルカス夫妻の寝室、アルシーナもここで眠る。

 もう一つは俺専用の寝室――平たく言えば屋根裏部屋だ。


 本来は俺もまたグルカス夫妻の寝室でともに眠るはずだったのだが、俺が断固拒否し、単なる物置となっていた屋根裏部屋を寝室として解放したのだ。

 たかが屋根裏部屋と侮るなかれ、俺とクロエの必死の努力により、今ではちょっとしたものである。

 適度に湿気があり、虫たちも大満足の一室だ。


 ……話が脱線した。

 ともかくグルカス夫妻宅に寝室は二つ、ベッドも二つ。

 となれば問題になるのは「シャロンはどこで眠るか」である。


 クロエの意見。


「――私は、シャロンさんには寝室を使ってもらって、私たちが屋根裏部屋で寝るべきだと思う」


 元勇者様の娘を、屋根裏部屋なんかで眠らせるのは無礼千万である、とも付け加えた。


「俺もそう思う」


 うんうん、とそれらしく頷くのはもちろんグルカスだ。

 とはいえ俺もそれがベストだと思う。

 グルカス夫妻と同じベッドで眠るのは不本意だが、そうするほかあるまい。


 満場一致で可決。

 早速俺が当のシャロンへこれを伝えに行くと――


「――すまないが、突然転がり込んできた私が家主たちを屋根裏部屋へ追いやって、一人だけ寝室で眠るわけにはいかない、もしどうしてもと言うなら床で眠ろう」


 暇をもてあましたシャロンは、アルシーナと遊びながらおおむねそんなことを言って、こちらの提案をばっさりと切り捨てた。

 却下、再審議である。


 再びクロエの意見。


「……じゃあ心苦しいけど、ルードが寝室に移動して、シャロンさんには屋根裏部屋で眠ってもらいましょう」


「俺もそう思う」


 うんうん、とそれらしく頷くグルカス。

 初対面の女が俺の城へ踏み入ってくると思うともちろんいい気分はしなかったが、ぐっとこらえた。

 背に腹は代えられない。


 満場一致で可決。

 今回もまた俺が当のシャロンへこれを伝えに行くと――


「――すまないが、こんな子どもを部屋から追い出して眠るというのはいささか……床で寝よう」


 アルシーナにヘタクソな「べろべろばあ」を披露していたシャロンは、一転して凛とした顔でこちらの提案を斬り捨てた。

 俺の作り笑顔が思わずひくつく。


 ……お前は、なんだ?

 床から生まれたのか? そんなに床が好きなのか?

 少しは空気を読んでくれ!

 お前がどちらかの条件を呑んでくれなければ、このバカげた会議は終わらないのだ!

 俺は魔王軍四天王の一人、怪蟲神官ガガルジ! そして今は極秘任務の真っ最中だ!

 少なくとも「客人にどの部屋を貸すか」なんてどーでもいい論議にかまけるような男ではない――!


「――というか少年、私と君が、屋根裏部屋で寝ればいいだろう?」


「はっ?」


 あまりにも突拍子のないバカげた提案に、俺は僅かな間思考を停止させてしまった。

 シャロンは、腕の中のアルシーナをあやしながら「だからな」と続ける。


「私と君が屋根裏部屋で寝ればいい、ご夫妻はいつも通り寝室、少年もいつも通りに屋根裏で、なおかつ私も床で寝ずに済む、Win-Winだろう?」


「ばっ……!」


 バカか!? Win-Winの意味知ってるのか!?

 思わず口から出かけたが、なんとか呑み込んだ。


 どちらにせよそんなふざけた提案が通るわけない、そう思って報告へ戻ったところ――


「……シャロンさんがそう言うなら仕方ないわよね、うん」


「は!?」


 クロエの言葉に、俺は思わず耳を疑ってしまった。

 仕方がない、仕方がないと言ったのか!?


「しゃ、シャロンさん直々のお申し出なら無視するわけにはいかないしね、うん、仕方ないわ……」


「まさか母さん僕に丸投げするつもりで……!?」


「さ、さあ、そうと決まれば明日の朝御飯の仕込みをしなくっちゃ、明日も早いからね、うん、うん……」


「母さっ……!」


 あとはもう知らぬ存ぜず、といった具合にそそくさとその場を後にするクロエ。

 途方に暮れる俺の肩に、グルカスはぽんと手を置いて


「うらやましいぞルード、おっぱいじゃないか」


 思いっきり両足を踏み抜いてやった。


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