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『1』ヤンデレは些細な事も

家に戻る途中でうららは誰からか電話を受けて「あーと、今から向かいますね。そいつを逃したらいけませんわよ?」とやんわりその誰かを脅して手を振り、去って行く。



「……なんというか、捕まった誰かご愁傷様」


「あれ、良くん。うららさん、居なかった?」


「ん。電話で誰かを捕まえたーみたいなこと言われてて向かったけど」


「あーあいつ捕まったんだ。くわばらくわばら」


「何したのよ、そいつ」


「聞かない方が、いいよ」



心の目は、マジだったのでそれ以上の追求は止めることにした。

そんな俺を見て、心は首に手を回して抱きしめてくる。急なハグについ鼓動が激しくなってしまうのに、心は気付いたようだった。



「んーどきときしてるね」


「そりゃ、な。急に、どうした?」


「いや、良くん。大丈夫かなって。

もう暫く観察というか監視してたからさ。表情の変化くらい、わかっちゃうよ。ねぇ大丈夫?」



みんな、鋭いなぁ。

それを言われる度に俺の中で忘れなきゃいけないと変に意識してしまって、存在が大きくなる。

駄目だろ、俺。忘れて、生きる。

それが約束で、みんなへの答えだろ。



「大丈夫だよ、心」


「ふーん。良くんがそう言うなら、いいんだボクは。なんかあったら言ってね?君はボクの好きな人だからさ、お願いされれば誰でも始末するよ」


「やめて、物騒だから」


「そう?よくある、ことじゃん」



あってたまるか。と返す前に心はうららの去っていった方へと走っていった。うはー速いな。いつか逃げようとしたことがあったけれど。あれじゃ追いつかれるな。なんて、どうでもいい疑問が解決した所で。



「俺、そんなにわかりやすいかな」



頬を引っ張って、離して少しでも表情筋を柔らかくして自然に過ごさないと。

家に入ろうとする俺と同時に、深鈴が出て来て胸に飛び込んでくる。すぐに抱き付いてくるのは流石だなぁと感心して。



「ん。心さんの、匂いしますけど」


「えっと、その」


「まぁいいです。こんな形になるとは思いませんでしたが、お兄さんと結婚できるんです。良しとします、心の広いわたしは」



頭を胸に預けながら、そう言う深鈴を俺は強く抱き締めた。



「っ!?お、お兄さん?」


「少し、こうしてて、いいか?」


「……もう、お兄さんたら。少しと言わず、永遠にどうぞ」


「……それは、ちょっと長いかな。でも、ありがとう」



それから数分後、きららに中断されるまで俺は強く、心に染み込ませるように。

深鈴を抱きしめていた。


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