エンディングに、続くヤンデレ
呼吸が、上手く出来ない。
目の前に横たわるひーたんの死体に視線を移す事が出来ない。
何故、いつ、ひーたんは、死んで?
震える足を殴り、ゆっくりと立ち上がって呼吸を整える。
良く考えろ。この状況を、理解して。
部屋の殆どが、切り刻まれていてまともな形を保っているものはない、いや。机の上に一つ封筒が置いてあった。
手に取ると、『りょーたんへ』とだけ書いてあって。開くと、手紙いや遺書の様だった。
『りょーたん。
ごめんね。ごめんね?わたしは、ダメな子だ』
そんなことないよ、俺はそうは思ったことはない。
『わたしは欲張りなダメな子だから。りょーたんがみんなを、幸せにって聞いてもやもやした。
わたしだけを見て、支えて、そばに居てほしい。でも、りょーたんはそんなわがまま言ったら絶対に困ってしまうから。言えなかった』
言って欲しかった。
俺が、気付けなかった悩みを打ち明けて欲しかった。こうなる前に、この結論に辿り着く前に。
『だから、ごめんね。
わたしがこうなることに気付いて欲しくないんだ。だって、怒るよりもあなたは悲しんでしまうだろうから。だから、もしこれを見てしまっているならば、わたしはもっとダメな子って事になっちゃうね』
ただ涙と、虚無感が湧き出てくるのを抑えてるだけさ。悲しみも、怒りよりも、言葉よりも。その二つが強過ぎる。
『わたしがりょーたんを邪魔しちゃうのは自分を許せなくなるから。仕方ない、よね。
自分を曲げることは出来ないんだ。わたしは、りょーたんと一緒。決めた事は、曲げられない。
わたしはりょーたんと一緒で、両親も居ないから。
わたしは、あなたに依存した。
傷を舐め合う為に、依存したの』
知らなかった。
俺は、何も知らないんだ。
ひーたんがこうするくらい悩んでいたのに。
俺が、悪いんだ。
『りょーたんは悪くないよ』
いや、俺だろ?
『大好きな、りょーたん。
わた を忘れて、幸せに ってね』
書いている時に泣いていたのだろう。
所々文字が滲んで、読めなくなっていた。
『大好きなりょーたんへ』
「ったく……よぉ」
忘れられる訳ないだろ。
あんなパワフルなヤンデレを忘れられるわけがないじゃないか。俺の脳裏にびっちり焼き付いて消えそうに、ないよ。
「選択肢……ん?」
『お久しぶりです。
モノです、おめでとうございます。
これが、最後の選択肢です。ご自由に、後悔のないようお選びください』
「最後?」
『エンディングが、すぐそこって事ですよ。
さあ時間はたっぷりありますから、選んで下さい』
選択肢はいつものように三つ。
『ひーたんを忘れて生きて行く』。
これは、ひーたんが望んでいた事。でも、俺は。
後の二つに、俺は目を疑わざるを得なくて。
『完全攻略した攻略対象たちを捨てて、時間を戻してひーたんに会いに行く』と。
『ひーたんと同じように全員殺して俺も死ぬ』だ。
これで、俺とみんなのエンディングが決まる。
俺の、答えはーー




