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過去と今のわたくし

気付いた時には、わたくし達の周りには男の人が沢山居た。誰も彼もが婚約者、許嫁だと言われて戸惑いを隠せない時もあった。



ある日、気付いてしまった。

わたくしの手を取るあの人も、お姉様と踊っているあの人も、仲良くしてくれていたあの人も。

全員がわたくしとお姉様を見ていない事に。



結局は千堂院という看板を見ていたんだ。



わたくしかお姉様と結婚したら自動的に千堂院家の跡取りとして世界でもトップの財力や権力を得る。

わたくし達の側にいる男達はみんなそれが目当てだった。



「きらら様、今日も美しい」



わたくし今日は寝癖を直していないのよ。



「うらら様こちらをどうぞ、召し上がって下さい」



お姉様は、それにアレルギーがあるのだけれど?



「きらら様、今度ディナーでも」



貴方と会うのは初めてですのよ。名前くらい名乗りなさいよ。



「うらら様、少し二人きりでお話を」



汚い手でお姉様に触るな。

あぁ、苛々する。どいつも、こいつも。

男達はわたくし達を踏み台としか見ていない。



「大丈夫ですのよ、きらら。わたくし達は一心後退ですからね」



一心同体ですわ、お姉様。

強がらなくてもいいのに。わたくしは双子の妹なのよ。お姉様が怖がって、萎縮して、遠慮して。

自分を見てくれないこの不快感に負けそうなのは、わかっていますから。



「ねぇ、貴方達」



男達に声を掛ける。



「お姉様の好きなもの、ご存知?わたくしには嫌いなものがありますの、ご存知?当然知っていらっしゃいますよね?お姉様とわたくしと伴侶になろうとしているんですもの。ねぇ?」



誰一人として、答えられなかった。

それから何人も何人も質問しても答えは返ってこなかった。



「呆れた。本当に、呆れましたわ」



あれだけ明るく話していたのに、一つの質問でこれですか。

あれだけお姉様を怖がらせたのに小さくなって終わりですか。



「き、らら?わたくしは、大丈夫ですのよ」


「大丈夫。お姉様、もう大丈夫ですわ」



大きく息を吸って、叫ぶ。

長年耐えてきた全て、決して出すことはなかった感情を。



「お前らに、お姉様は渡さないっ!!!!」



空気が静まり返る。

わたくしとお姉様が鳴らすヒールの音が広いホールに響き渡り、それから。お父様も無理に相手を連れてくることはなくなった、が。



「きらら」


「お姉様」



小さく呟くお姉様を、抱き締めて。

胸に固く誓う。



わたくし達を見て、ちゃんと接してくれる相手を見極めなければ行けません。

それ以外の男は排除する。わたくしの手を汚さず、間接的に排除する。



「お姉様、いつか出会いますわ。

あなたの全てを見てくれて、包み込んでくれるような相手に」


「うん。出来れば、きららと一緒の人を好きになりたいな」


「……そこは、わかりませんから」



それから数年後。

お姉様はそれまで見せたことのないような顔で男性と話していた。

黒髪の何とも普通な男。

その普通な男に惚れてしまうなんて思いもしなかったし。



「きらら」



聞こえるはずのない声が、聞こえてしまう。

呼んでくれるだけでこんな気持ちになれるなんて思いもしなかった。

……変な事を、思い出してしまいました。あなたが寝ているせいで調子が狂うんですよ。



「だから、起きてくださいよ。良也くん」



急に倒れてから二日が過ぎ、良也くんはベッドの上でずっと眠っていた。

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