デレデレヤンデレ
完全攻略は、出来たけどさ。
……横の弓月を見てイメージの変化に戸惑いを隠せなくて。
「りょーうや」
「はぁいー」
「うへへぇ。大好きだよぉ、あたしの良也ぁー」
可愛い、けど。めっちゃ甘えん坊になってるし。
抱き着いて頬擦りして唇を突き出してくる。あーと、水族館内でのいちゃいちゃはご遠慮下さい。って言わんばかりの周りからの視線が痛いんですけど!!
「良也。あのね」
「ど、どうした?」
「これからも、カッとなって傷付けたらごめんね。そしたらあたしのことも同じだけ、いやもっと傷付けていいから。いや、むしろ殺し「いや、やらないから!!弓月は、そのままでいいって」
急にデレデレなんですが!!
刺激が強くて少しくらくらしてくるよっ!?
このまま水族館の中にいても気不味いし、とりあえず出ようかと出口に向かう俺の耳元で弓月が囁く。
「このまま、ホテル?」
「は、はぁ!?違うよっ!?」
「なーんだ。あたしが、良也を男にしてやろうかと思ったのにぃー」
「しないでいいから!!」
「えっ……」
大粒の涙が、瞳に溜まって泣きそうな顔に……って今ので泣くの!?
攻略して何でメンタル弱くなってんの!!
えっと、助けて選択肢さん!!
任せろと言わんばかりに出てきた選択肢に、すがる俺だったが。
『はははっ!!なんだ泣き虫がぁー!!』『大丈夫だよ、弓月』『泣いてる姿も可愛いよ』って攻めてるなあ選択肢!!
あーもう、とりあえずは大丈夫と言ってみようか。
「大丈夫だよ、弓月」
「良也が泣かせたのにぃー!!」
「号泣っ!?ゆ、弓月落ち着いてっ!?」
「ふえぇんっ!!良也のアンパンー!!」
「どうゆう罵倒!?あぁまだ入り口だから、泣かないでって!!」
「あー良也さーん!!」
聞き覚えのある声……!!
振り返ると、無邪気に手を振るうららと笑顔が怖いきらら。そして今にも飛び掛かってきそうな心。
泣きじゃくる幼なじみをなだめる俺を、婚約者候補たちが睨んでいるというこの状況。
「オワタ」
つい呟いてしまった、俺だった。




