覚悟完了のヤンデレ
結局、深鈴と弓月とは婚約関係を結びちょくちょくキスをするような仲には何とかなれた。
けど良く深鈴が殺されているのを見かけてしまう。首を折られ、骨をとことん折られて、だらしなく無残に殺されているのを。復活システムがあるとは言え、心が痛む。
ちなみに、これだけやっても弓月は完全攻略出来ていないから殺されると終わりだ。
もし弓月が深鈴に殺されていようのものなら俺は自殺して時間を戻さなきゃあいけない。
何回飛び降りて、死んだことか。
つまり、今優先するべきことは弓月の攻略という事になる。
「……エロい顔してるけど」
「してねぇよ」
「してる、ってあ。いつもの顔だね」
「それはいつも俺がエロい顔してるということかな?弓月ぃー」
「その通りだよっ!!きゃっ!!来るな、生まれながらの変態紳士!!」
「どんな特殊な悪口っ!?」
ハイキックで蹴り飛ばされながら、気合の入った下着を見て体力が少し回復する。って本当の変態ですか俺は。
今日といえば、俺と弓月は水族館デートに来ていた。これも弓月の完全攻略の為、少しでもクリアに近付く為だった。
「良也から誘ってくれるなんて、どうしたの?」
「んーいや。俺としても幼なじみと出掛けたかっただけだよ」
「もう、嫁でしょ?しかも、正妻、ね?」
デート中にアイアンクローは雰囲気に合わないっ!!みしみしと悲鳴を上げる頭蓋骨を何とか救出して、俺と弓月は並んで歩き出す。
「ここ、昔来たの。覚えてるかな?」
「え、あー」
いつもの記憶のロードで思い出す。
まだ、俺と深鈴の父さんと母さんがいた頃に行ったようで。とても、無邪気に走る俺と弓月が居た。
「おう、勿論」
「今の間は?」
「ん?気にすんなー」
「気になるってのっ」
いちゃいちゃして、順路通りに進んで行くと道を逸れた所に展望台への矢印が書いてあって。弓月がふと視線を移したのに気付き、手を引く。
「行ってみるか」
「……うん」
上に着くと、誰も居なかった。
海際に立つ水族館のてっぺんだ。海風が頬を撫でて、少しくすぐったいような感覚。
「……良也、ありがとね」
「ん?」
「こんなあたしを貰ってくれて」
「弓月とは、ずっと一緒だったから、な」
「へへ。なんか、変な感じだ。あたしと、良也が、一緒に居られるなんて、ね」
何も不思議な事は無いだろう。
と、言おうとすると後ろから抱きつかれる。
急な行動に心臓が高鳴ってしまう。それに気付いたのか、弓月は小さく笑った。
「ははっ。キスもしたのに、ハグでドキドキしないでよ」
「し、仕方ないだろっ?」
「おっぱい当たってるから?」
「わかってるのかよ!!」
「わざと、だもん」
少しして、離れて。
弓月の方を向くと、切なげに儚く微笑んでいた。
その微笑みは今にも消えそうで、見たことがない程で。
「弓月?」
「……あのね、良也。
聞いて欲しいんだ。あたしが抱えてるもの。
ずっと話したかった。でも、壊したくなくて。
でも一緒に居てくれるって言ってくれて嬉しかった。から、言うね。
あたしも、覚悟を決めて。良也に話すよ」
そして弓月は話し始める。
弓月が抱えていたもの、弓月の想いの在り方を歪めた出来事を。




