貞操を守れ、ヤンデレから
これは、本当にヤバいぞ。
狩人の目をしている。逃さないぞ、ここで喰われろと言わんばかりの視線に身体が硬直する。
赤ずきんの気持ちがわかる時が来るとは思いませんでした。
「な、なんで深鈴はよだれを垂らしているの?」
「お兄さんを食べるためです」
「なんで、弓月は服を脱ごうとしてるの!?」
「良也を襲うためだよ」
「どうして手を結束バンドで縛るの!?てか何で持ってるの!?」
「お兄さんを」
「良也を」
「「襲うため」」
いや、逃げ場ないやん!!
逃げろ俺!!これじゃあ、ギャルゲーじゃないエロゲーじゃないか!!いや、画面暗転の朝チュンでどうにか誤魔化すのは、無理か。俺、当の本人だし!!
「ちょっ、待ってくれ。な?雰囲気とかムードとかあるでしょ?」
「えぇ?いらないよ、面倒くさい」
「面倒くさい!?」
「いいから、抱けよ。ああ?」
女の子の台詞じゃあないよぉ!!
えっとここで、卒業式を上げるわけにはいかないんだ。まだ、その雰囲気とか良いところで幸せに卒業したいのだ!!
「選択肢キター!!」
しかも、カウント版かよ!!
えっと『抱かれる』『キスする』『接吻する』ってキスじゃねぇかよ!!
「深鈴っ!!」
「ふぇ?」
突撃するようにして唇を重ねる。仕方ない、優しくしたいが手が使えないものでな。
柔らかく、いつまでもしていたかったが。目の前にはメリケンサックを付けた弓月。
「弓月!!」
「んにゃ?」
深鈴とはまた違った感触に、心臓が大きく鼓動を始める。少しして離すと。
二人揃って鼻血を出して倒れていた。
「っておぃぃ!?」
「お兄さん、から。キスだなんて、もう、お兄さん、たら。わたしが好きなのは、わかりましたからぁ」
「ぐふぇふふへへ……」
結果、オーライ?
こうしてなんとか貞操は守ることが出来たけれど、これ以来二人が軽ーいノリでキスをせがんでくるようになったのは、中々の副産物で。
「まだ、慣れませんが。たまりませんねぇ、弓月さん」
「ですなぁー深鈴氏ー」
何故か異常に仲良くなった、二人だった。
10月20日 12:00 次話投稿予約済み




