会えない、ヤンデレ
とんでもないことになった。
きららは「人生の選択ですからね。あと三日ほど待ちますわ。まぁ答えは一つしかないでしょうけどね」とやんわり脅されて。
心はというと。「断ったらぶっ殺す」とがっつり脅された。女の子の台詞じゃあないですよね?
「じゃあ、今日はお開きにしましょう。
楽しかったですわ、良也くん。庶民もわるくありませんわね」
「そいつはどうも」
「良かったね、良くん。きららさんみたいな美人さんとデート出来たんだよ。これは、ボクらと結婚するしかないよね?」
胸倉を掴みながら拳を握って聞くことじゃあない。きららから三日という猶予を貰ったのだ。じっくり、考えることはイエスかノーがじゃない。
どれだけ自分の思い描く好条件を呑ませるか、だ。
この一夫多妻は回避出来ないイベントなのだろうし、なら。そこにヤンデレ攻略対象達を納める以外にクリアは見えない。
幸い側室にしていい、という条件は出ている。
あと俺がやることはみんなの扱いを平等にさせることだ。
絶対怒るでしょ……!!
特に弓月、ひーたんあたりは臨界点超えてキレそうだ。それを止められる自信はないし、そうなって欲しくもない。
なら未然に止めるしかねぇだろう。
「……ひーたん。電話、ないな」
以前が腐るほど電話があったからか、鳴り止むと寂しさを感じてしまう。たまには俺からかけてみよう。
『ただ今電話に出る事が出来ません。りょーたんは放送禁止用語の後、メッセージをどうぞ』
「ピーってそうゆう事じゃあないだろ。そして名指し……ひーたん。旅行はどう?電話が無くて案外寂しかったので電話しました」
もう一週間近く経つのに、帰ってこないなんて。
ひーたんの家もお金持ちなのだろうか。
……あーこう考えていると、凄えひーたんに会いたいわ。
「旅行から、帰ったら連絡下さい。
何だろう、シンプルに会いたいので。それじゃ」
この時、感じなかったといえば嘘になる。
背中を走る嫌な予感と違和感。
ずいぶん前に寝ぼけて深夜3時くらいにひーたんに電話してしまった時はすぐに反応して家まで乗り込んで来て身体の関係を迫られたっけ。
なのに、今日は出ない。
疑問を追求することはしなかった。
それよりも目先の事に頭が一杯だったから。
その先に何が待ってるなんて、考えなかった。




