谷間のヤンデレ
「長いですわね」
「一番人気の、だからな」
「……きららさん、疲れませんか?椅子をご用意いたします。ほら。良くん四つん這い」
「俺をナチュラルに椅子にするな」
「ダメなんですの……?」
えぇ……何故に寂しそうな表情を浮かべる……!?そんな顔するから心のスイッチが入ってますよ!!
「痛い痛いっ!!内腿をゆっくりとつねるな!!」
「じゃあ、ほら。やって。お馬さん」
「ちょっ、意味が変わって」
大衆の面前で四つん這いになった男に座る金髪美少女。夢なら覚めてくれ。……それにさっきから無数に聞こえるシャッター音は幻聴に違いない。
「流石良くんだね。やらなかったら、ボクが直々に立たなくしてやる所だったよ」
「ははー笑えねぇー」
「ほら。列が進みましたわ。はいよー良也くんー」
「ひ、ひひーん」
「……なんか本当様になってるね」
その数十分は地獄だった。体力も何故か点滅するまでなくなっていて、あぁ精神力が減っても死ぬのね。と新しく事実がわかった。
「……二人乗り、ですか」
「良くん、行け。きららさんを離したら死ぬまで殺す」
「よし、乗るぞぉきらら」
「は、はいっ」
並んでいたのは幽霊屋敷をポッドのような物で蛇行しながら乗るアトラクションだった。
……きららはお化けとか大丈夫なのかな。
「きゃぁああっ」
「ぐがっ」
勢い良く抱き着いて来るのは男として構わないが……頭は気をつけて。喉と顎を頭で強打するのは痛いよ?
「ひいぃいっ!?」
「ぐべっ」
頭を持ってポッドに叩きつけるのは確信犯では!?鼻血が服を濡らしたのを感じて溜め息をつくと、ぐいっときららに引き寄せられて顔に柔らかい大きいものが押し付けられる。
こ、これは!?おっ、ぱい!?てか予想以上に大きいのでは!?
顔に当たる重量熱量は半端ではなくブラをつけている筈なのに柔らかい。俺の顔を包むような圧倒的おっぱいに鼻血が別の意味で溢れ出す。
「良也くん良也くんっ」
「だ、大丈夫だからっ!!とりあえず落ち着けってきららっ!!」
「はい……でも、良也くん。鼻血、出てますわよ」
「血が」
まともに見てしまった。俺の鼻血が谷間に吸い込まれて行くところを。
俺は目の前が真っ暗になるほど鼻血を出して。
何とも情けなく死を迎えたのだった。




