遊園地デートだヤンデレ
学校、休みか……てかあまり学校に通ってる記憶すら無いのだが。学生なのにイベントがほぼ外で起こるというのも不思議だけれど。
それよりも、だ。
「えっと、おはようきらら、心」
「おはよう、良くん」
「おはようございます、良也くん」
「状況を説明してくれ」
「うん、えっとね」
心が何故休日の朝から俺が鎖で巻かれているかの経緯を話してくれた。
朝、俺と出掛けようと思った二人は家に侵入し捕獲には成功したが深鈴に見つかったと。きららは俺を抱えて脱出に成功したが、心は深鈴と一騎打ちになったらしく。
「え、無事、なの?」
「それが不思議なんだけどね。確実にボクは妹さんの首を捻り折った筈なのに生きてて」
捻り折った!?発言が物騒過ぎるっ!!
「ボクは妹さんの包丁で殺された筈なのに、生きてるってゆうか何というか。訳がわからないんだよね」
復活システムか。システムが作用する二人で殺し合ったから、こんな状況を作ったんだろう。
えっと、とりあえず誤魔化して伝えないと。
「白昼夢、という奴だろうなぁー」
「へぇーそっかぁー」
「そうだよぉー」
「ってそんな訳ないじゃん」
わぁー小指が捻り折られたぁー!!
凄いや!!小指が捻られたマカロニのように!!
「あぁごめんね、良くん。癖で」
「直そうな、その癖」
「そ、その良也くん」
「ん?はい」
「どこか、行きたいところありますの?」
「え、特にないけど」
今日だって寝て休みを潰そうとしたくらいのだらけ具合だったし。特に予定は無い、が。
「ありますわよね?」
「え?だから特に」
「あります、わよねぇー?」
おぉオーラが怖え。
行きたいところねぇ。……確かにこれはきららの好感度を上げるチャンス。なら、ど定番で行ってみますか。
「あ、遊園地とか?」
「いいですわ。心、電話」
「はい。どうぞ」
そう言って、誰かに電話をかけるきらら。
遊園地に連絡してるのか?あぁ今日はやってますか?みたいな確認か。心じゃなくて自分でやるんだなぁ、うんうん。何だか可愛いじゃないか。
「もしもし、わたくし千堂院の者ですが。
えぇ、はい。そうですね、頭金で五億出します」
「……え?きらら、ちょっ」
「何ですの?電話中に……」
「何してんの?」
「え、今から行く遊園地を買い取って貸切にするだけですけど?」
「へぇーそれはありがたいっ!!ってなるけど、ちょっとストップだなその案件!!」
「え?」
電話の主に頭を下げて、謝って。
……きららのスーパーお金持ち生活を甘くみてた。もう少しで俺の軽はずみな発言で何万人の休日を潰すところだった。恐ろしい。
「良也くん、何をしますの?」
「そうだよ良くん。きららさんに何するのさ」
さん付になってるっ!!進展あったのね良かったわ!!じゃあなくて、どう説明したものか。
「えっと、アトラクションには並んで乗るから買わないで大丈夫」
「「並ぶ?」」
「おいおい嘘だろ?」
「前の家では遊園地なんて以ての外だし。
ここに来てからは遊園地は買い取ってるし」
「あとで戻しますから安心してくださいまし」
戻すって遊んだらまた売るの?
……えぇ、まさかのワンデー貸切なんだ。
「じゃあ、今日は俺が庶民の遊び方を教えてやるよ」
「なんで上から?ねぇ良くんなんで?ボクにはいいけど、きららさんに……」
「大丈夫ですわ、心。なら今日は良也くんにエスコートしてもらいますわ」
「おぉ。任せとけ」
「こっちが金銭面全負担なのによく威張れるね、良くん。ねぇどんな気持ち?」
複雑で言葉に出来ません。
攻略しようとしているヤンデレに拉致されて遊園地デートをエスコートとか、準備か必要でしょ普通は。
「まぁ、楽しくやろうか」
「はい、よろしくね良也くん」
「なんで上からなの?ねぇ良くん」
心が、心を責めてくる。
くっそくだらない事を思いながら目的地にどんどん近付いていた。




