好意と殺意とヤンデレと
俺は、最近な訳だ。この世界というか状況に置かれたのはだがそれでもわかる。
ここまで弓月が心の丈を叫んだことはなかったのだと。
「だいたいさ!!いっつも女の子ばっかり友達友達言って!!男友達いねぇのか!!」
……いねぇな。関わっているのは女の子だけだし。てか随分前に男友達作ろうとしてたらお前に殺されたのよ?浮気だ、何ちゃらって。支離滅裂だ。
「侍らせて、誘惑してキープして……やってる事はホストと一緒じゃんか!!」
……確かに。的を得過ぎて反論が欠片も出てこない。侍らせている自覚はないけれど。事実として、否定は出来なかった。
「どうせ、女の子抱きまくってるんだろ!?」
「それは的外れだよ!?未経験ですからっ!!」
「へっ……?」
何故赤くなる。そして何故、髪をくるくると指で弄る。そして何故何故に口臭を気にしだす!?
「じゃああたしとしよっか」
「直球っ!!」
「え、してないんでしょ?童貞なんでしょ?」
「どど童貞ちゃうわ!!」
「どっちなの!!」
「て、テンプレなの!!」
話が纏まらんっ!!
てか殺気とは違う、謎のオーラを纏い始めた気がするんだけど。まるで目視するとピンクのような、紫のような。妖艶で、弓月も息が荒くなってるし。
「てか、抱けやー!!」
「な、何でこの流れで!?」
「この流れだからでしょ!?あたしは、ずっとあんたを見てきたのよ!!なのに知らない間にころころころころ女の子に手ぇ出して!!
あたしの気持ちを考えたことあんのかぁ!!!!」
弓月の、気持ちか。
俺は攻略することと、女の子を死なせない事。目の前の殺意から生き残る事を優先させてしまってたまに本来を忘れてたのだろう。
女の子を、ヤンデレを幸せにする事だ。
弓月は涙を浮かべて、バールを二本握っていた。
え、さっきのえっろいオーラは何処へ!?
「本当に、もう。
鈍いし、優しさに遠慮がないし、占ってもそれとは違う行動よくとるし、鈍いし」
「二回も言ったな!!」
「それほどなんだっての。つまりさ、良也」
真剣で、澄んだ真っ直ぐな声に息が止まる。
「大好きだよ、ばーか」
バールを振り上げる弓月。
好意と殺意って両立するんだと、その瞬間俺は知ったのだ。




