きらめく心
……何というか、気まずい。
ボクは良くんが好きだときらら様に伝えた。その時から思っては居たけれど、多分きらら様も。
「心、いいかしら?」
「は、はい?何なりと」
「貴女は、良也くんのどこが好きになったの?」
「へ?」
どこが?と言われると、だ。
気付いたら好きになっていた。何かしら特別な事も特に、ないし……。
素直にボクを見てくれて、笑顔にも目にも嘘はなくて、ボクより弱いのにボクとお嬢様方を守ろうとしたり、ただただ一緒だと嬉しいというだけ……あぁそっか。これが、好きになった理由だ。
「えっと、ですね」
頭に浮かんだ事を言うと、きらら様は扇子で口元を隠しながら楽しそうに笑っていた。
何か相応しくない対応をしたのだろうか。おろおろしてしまうボクにきらら様は手を差し伸べる。
「きらら、様?」
「さん、でいいですわ。まぁ本来は呼び捨てでも構いませんがそこはしっかりしないと」
手を握ると、リムジンの中の空気が変わった気がした。何というか甘酸っぱいようなそんな空気に。
「お、お姉様もしょうがないですわ。あんな、ふわふわして優しくて掴み所がないのに、芯はしっかり座ってる、し。そんな、あの、人を好きになってしまって!!」
「……きらら、さん?」
「何かしら」
「つかぬ事をお聞きいたします。お見苦しい質問をさせていただく事に先に謝罪いたします」
「どうぞ」
さっきの反応、それに良くんへの評価とか、普段を見ていればすぐに気付く。
気付いていないのは、本人たち同士だ。
「良くん好きですよね?」
「は、はぁああ!?なななな、何故わたくしがあんなベストオブ庶民を!?あり得ませんわあり得ない!!」
「ベストオブ庶民……」
何というか、らしくて良い響きだとボクは思う。
真っ赤になって否定する姿を見ているときららさんは静かにジュースを飲み干した。
「わたくしが、好きなわけないじゃないの!!
あんな、あんなっ……」
「そうやって、誰かも思って胸が熱くなって、何だかわからないけれど。誰かを想ってしまうのを、恋と呼ぶ、らしいですよ。ボクも最近知りました」
「へ、へぇ?」
「電話でも仰いました。これで全員、だと。
つまりボクが思うにきららさんははっきりと自覚してないだけなのですよ」
信じられないようにボクの手を強く握って、大きく深呼吸したきららさんは真っ直ぐボクを見ていた。
「恋、ですか」
「恋ですね」
「……そう、なんですのね。わたくしは良也くんが好きなんだ」
そう呟いた表情は、まさに恋する乙女で。
ボクはライバルと誕生に心をざわつかせて、新たにきららさんに生まれた華やかなきらめきを喜んでいた。




