新たなヤンデレ
深鈴は事情を話すと仕方ないです。と言って一人で学校に向かってくれた。
よし……これで、家の探索が出来るぞ。
今、俺は石動良也という名前で通っているけれど。元の自分がいて、それに戻るためにはまずは状況を把握しないと。
正直、名前も環境も薄っすらとしか覚えていない。でも戻ることがとりあえずの目的としておいた方が多分原動力になりそうだから。
俺は頑張ってヒロインを攻略しないといけない。
「えーと。深鈴、弓月……あと三人は居た、気が……!!」
頭を掻きむしっても何も出ない。
自分のことすら曖昧なのにキャラを覚えているわけが……ん。でも、名前を聞いたり本人を前にすると名前が出て来てた。
つまり、今俺の頭にはロックがかかっている状態でそれを何らかで解除して行く。それが最適な手順かな。
携帯が震える。深鈴からのメッセージだった。
『お兄さんちゃんと家に居ますか』『外に出て居ませんか』『勧誘などに引っかかってはいませんか』『悪い女に誘惑されてませんか』『そいつの名前は何ですか』
悪い女に騙されている前提……!!そして間髪入れずに届くメッセージ!!うぅん、これぞって感じだなぁ!!
『大丈夫だよ、心配してくれてありがと』。返信っ!!
……あとは、自分の部屋の散策して……。
お、深鈴のメッセージ。
『もうお兄さんたら』
「口癖なのかな……?」
そして、俺の部屋。なのにそう感じないのが違和感で。色々と漁ります、か。
何だろう、今の背筋を駆け巡る悪寒というか。
まるで、誰かに監視されているような。
身体を伸ばすフリをして窓の外に視線を移す。
そこには一人の女の子がいて。
俺を、見ていた。
偶然じゃない、あれは確実に俺を見ていた。
あぁ……あの子も攻略対象じゃんか。
日比野陽菜。
そうだ。思い出した、彼女こそシンプルなやつ。
好きだから渡さない。ヤンデレの王道!!
一目惚れしたわたしの運命の人は誰にも渡さないんだから、精神だ!!
また現れる選択肢。『会いに行く』か『見て見ぬ振り』……フラグは大切に立てておこう。
もう弓月も学校に行っただろうし。行ってみるか。
俺は周囲を確認しながら外に出て、日比野さんのところに向かった。