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自決とヤンデレ

じゃあ、次は承諾してみよう。

命には変えられないよな。伊澄の目は見えないけれど、とりあえず返事を。



「わかった、からっ!!離してくれよ」


「結婚するんだな」


「する、からっ」



俺の返事を聞いて、伊澄は無言のまま。腕を折った。あり得ない方向に曲がる腕に思わず声を上げてしまう。



「うるさいよ」



また、俺の頭を壁へ叩き付ける。

腕の痛みは消えたが、また新しい痛みが思考を鈍らせて行く。

なんで、だ?ここには多分俺に結婚を強要する為に来た筈なのに。



「さっき、とりあえずで返事したよね?

ボクは色々訓練されてるんだ。それくらいわかるよ。しかも、良くんわかりやすいし」



意識が飛びそうになるのを、頭を叩きつけて強制的に戻らされる。

どうしろってんだ。俺に、死んで欲しいのか。結婚してほしいのか。



「潔く断るくらいを想像してたんだけどね。

まさか、その場しのぎで承諾するなんてさ」


「い、すみ。おれは」


「ごめんね。良くん。

中途半端に婚約者になって、お嬢様方を悲しませるくらいならこうするよ。その方が絶対に良い。

純粋な想いもないのに女の子の気持ちを受けないで。誠心誠意受け止めて。

ね。良くん。ボクは君がそうだろうと想ってたのに」



言葉が途切れる。

意識を戻すと、選択肢が現れていて。さっきの言葉を受けたのだ。潔く断ってみよう。



「結婚は、出来ない」


「悲しませるんだ」



あれぇ!?

その声のトーンは想像してなかった!!



「良くんらしいね。この状況で真っ直ぐ断られたら何も言い返せないじゃないか」



みたいな反応じゃないんだ!?

またさっきの俺を殺したようなトーンで、腕に力を入れてゆく。

歯を食い縛り、腕が折られる鈍い音を待っているとゆっくりと手を離されて。



「伊澄……?」


「はぁ。ほっとしてるボク。本当に失格だわ」


「え?」


「今のボクは、良くんが結婚を断って少し嬉しいんだ。でもそれはボクの感情で。

お嬢様方がボクに望んだ事じゃない」



そこからは、全く反応出来なかった。

伊澄が手首に仕込んでいたナイフで喉を搔き切るのをただただ見ているしかなく。



「伊澄!!!!」


「……っ」


「なん、だよ!?」



掠れた声で、なにかを俺に言いたいようかのように手を伸ばす。耳を寄せ言葉を聞こうとする俺に。



「すきだよ」



と呟いて、自分の血溜まりに沈んで行く。

自分の腕の中で死んで行く伊澄に自分の中で何かが溢れて、弾け。

ただ亡骸を抱きながら泣いていた。



「させ、ねぇ。俺は、みんなを幸せにするんだ。

自分が生き残るのは、二の次でいい。誰かの為に自分の命を捧げられる程の、想いを抱えたみんなを。

病む程の愛情を、止めて生きさせてやる」



伊澄の手からナイフを取り上げて、ぴたりと首に当てる。

自分で、自分をなんて勇気があるよ。



虚ろな伊澄を見て、ナイフを思い切り引くように首を切る。

脱力感と、痛み。鮮血が散るのを見て俺は死んだのだった。

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