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壁ドンヤンデレ

よくよく考えてみると、もう攻略のボーナスで深鈴に殺されても残機は減らないわけだけど。もう五十回近く死んでいてもやはり死ぬのは怖い。

あの、全てを消してしまうような暗闇をなるべくなら味わいたくはない。



「お兄さん。すいません、少し先に出ますっ」


「おーいってらっしゃい」


「遅刻はいけませんからね」



手を振って家を出る深鈴を見送って、さぁて俺も行く準備するかなと踵を返すと誰かに腕を取られ壁に叩きつけられた。顔面を容赦なくぶつけられて、鼻からたらりと血が滴る。

軋む骨と揺れる視界の隅に、黒いスーツがふと見えた。そこから、すぐに犯人はわかって。



「い、すみか?朝からご挨拶だな?」


「おはよ、良くん。で。答えは?」


「何のだよ」


「お嬢様方との婚約だよ。忘れたの?」



忘れてなんかないけど、こんな早く返答催促されるとは微塵にも思わなかっただけだ。

俺の人生を決めてしまうし、多分簡単に了承しようものなら死に切るまで、殺される。



「どうなの?」


「って……ちゃんと出てくれたか選択肢」



『笑顔で承諾する』『食い気味で拒否する』『だが断る』……並べられると選びたくなるじゃないかよっ!!



「だが断る」


「何っ」


「この俺が好むのは断れないと思っている奴にノーと言う「残念だよ、良くん」



頭を後ろから掴まれて、壁に思い切り叩き付けられる。

鼻が折れただろう鈍痛もすぐに行われた同じ行為で過去のものとなって、新たな痛みが頭を染め上げた。



「がっ……」


「残念、だよっお嬢様方と、良くんならっ!!いい関係を築けただろうにっ!!」



何度も何度も、壁や床に俺の血や歯がばら撒かれようとも伊澄のスーツが血に塗れようともひたすらに俺を壁に叩きつける。



「悲しませるなら、いらない。

いくら……自分が想っていようと、いらない。ボクはボクを殺して、お嬢様方を守るんだ。

ねぇ、聞いてる?良くん」



返事も、出来ない。

顔の感覚どころか頭の感覚全ての一切が消えていて、はっきりと見えたのはもうゲージの殆どが消えかけて赤く点滅する俺の命だけだった。



「さよなら、良くん。貴方みたいなのをまた探すよ。ボクとお嬢様方の心の中で生きててね」



力の入らない身体を寄りかかるようにする俺の後頭部に一瞬の衝撃。暗闇に呑まれ、目を開けるとさっきに戻っていた。

いつもは、一撃で即死か瀕死だった。

こうも徐々に殺されると流石に恐怖が残る。



俺は混乱した頭で、これからの流れを考えながらゆっくりと深呼吸をした。

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