不具合とヤンデレ
起き上がると、電話を受ける前だった。
うむ。深鈴に殺されても残機が減らないというのに嘘はないみたいで。
「よし」
ドアを閉めて、電話を待つ。
これはきららと伊澄を攻略する為の大きいステップになる筈だ。外せないイベントだろう。
そして電話を終え、深鈴は来ないと。
問題はここからだ。弓月とひーたんに気付かれないようにうらら経由で二人を落とす。
……俺ってもしかして酷い男?
今更か、目指しているのがヤンデレハーレムなどと命がいくらあっても足りないような状況を作ろうとしているんだ。
すでに狂って病んでいる、紛れもなく酷い男だ。
「お兄さん、弓月さん来てます」
「え、うん。行くわ」
玄関に向かう俺の視界にでかいバールを持った弓月が映る。って、え?今俺、なんかフラグ立ててたっけ?
「良也」
「どーした弓月ぃ」
「占いで出たの。変な虫が寄ってこようとしてるって」
「なっ……んでもないよぉー」
占い凄えな!!
実際弓月の言う変な虫は寄って来ていたけど。
「なん、のことだろうー」
「求婚されてない?それも双子から。占いで出たの」
「ピンポイントな結果が出たんだな……」
占い凄えなっ!!!!
そこまでピンポイントで出ます!?そしてその話が聞こえた深鈴までもが背後にっ!!
鈍器を構える幼なじみと凶器を振り被る妹に挟まれた瞬間。世界の時間が止まり、選択肢が出る。
「っしゃああっ!!助かったぞ、こらぁ!!」
……息を整えて胸を撫で下ろす、俺の目の前で。
カウントがゼロを迎えていた。
「うそーん」
「良也の、浮気者っ!!」
振り下ろす所は、はっきり見た。
目に涙を溜めて俺を殺す幼なじみ。
そして俺は脳髄をぶちまけるようにして絶命する。
「っは」
「どうしたの、良也」
まさかの流れだったなぁ。
今度は選択肢を見逃さないようにしないと。
現れた選択肢に目を凝らす、俺は思わず一瞬思考を停止させてしまった。
『バールを受けて説明する』『玄関の鉢植えで殴る』『二人を返り討ちにする』
今まで、選択肢にはドスケベな部分が多かった。
でも今は二人を傷付けようともしていて。
自分が壊れて来て、いると味合わされたのだ。




