病んでヤンデレ
……なんだか疲れたわ。
結局情報代としてのお金は初回サービスだと無料にしてもらった。年下にお金関連で気を使われたのは情けないけれど、仕方ない。
帰り道、頭の中でいくつもの考えが飛び交っていた。
深鈴のような訳が全員にある訳だ。
みんなの純粋で歪んだ感情を引き出してぶつからないといけないんだけども。
難しいよね……深鈴は一番近くにいるから、好感度の変動、フラグが立ちやすいからこその一番に攻略出来たんだろうし。
ふと、深鈴の微笑みが浮かんで頭の中の考えを一掃して行く。可愛いかったなあ。ドキドキしたなぁ。……って相手は妹だぞ俺。一線越えるなよ……って初っ端の選択肢で越えてたわ。
「ぐっ……深鈴が可愛すぎて頭が働かない」
「そんなに言われると、照れてしまいます。お兄さんたら……」
「ついに幻聴がっ!!くそ、可愛すぎるぜっ!!」
「お兄さん?」
ぐぇー!!喉に水平チョップ!?女の子の気の引き方じゃねぇ!!
咳をする俺の背中を笑顔で撫でてくれる深鈴。いや、犯人あなたですからね……?
「見つけました、お兄さん。帰りますよ。愛の巣へレディゴー」
「……うーむ」
「どうしました?そんな目で見られると火照ってしまいすよ。いいんですか、え?」
「……火照るのか」
「それはもう」
「なら、なんかやめとく」
「意気地なし」
実際、深鈴の頬は赤くなり息も荒くなっていた。ってもう火照ってんじゃねぇか!!とは言わずに呑み込んで、一応少し距離を取っておく。
「ヘタレが」
「深鈴?」
「これだけ言ってなんで襲ってこないの?お兄さんはまさかの男が好きなの?うぅ、わたしみたいな幼児体型に興味ないんだ」
幼児体型いいじゃないか!!って変態か俺は。
おっぱいは無いという話はいつかしたが、深鈴はアレだ。腰回りがエロいのだ。ぺったんこなのに腰回りはすらっとして肉付きが良くて。
お風呂上がりに明らかに裸を見せつけた深鈴が。
「おにいさんのえっちー」
という酷い棒読みで俺を誘い込もうとしていた時も俺は腰回りに目を奪われながらも。
「うわ、ご、ごめんー」
とつい棒読みで、返してしまう。二人揃って役者にはなれないなぁとか考えていることを全て口に出しているのは良くあることだよね。
考えてる事が口に出てるってあるよね!!
「お兄さん、妹のわたしをそんないやらしい下衆な目で……」
「下衆っ!?」
「お兄さんならいいですけど」
「いいの……?」
「ほら下衆目」
下衆目……新たに生まれた単語の誕生を祝いつつ、俺はある感情に気付いてしまう。
胸を打つ、鼓動がいつもより強く激しい。深鈴を見て、ドキドキしたのだ。
そう。つまり。
俺はもう、深鈴が思ってくれているのと同じくらいに。
深鈴の事を病的なまでに想っているんだ。




