残機とヤンデレ
なんというか、濃密な時間だったな。
後ろで見ていたきららもさぞかし怯えた事だろう。
「なんというか濃密な時間でしたわ」
「わお。全く同じ感想とは」
「それ以外に言葉が浮かびませんわ。
……では、良也くん。またお会いしましょう」
頭を下げて帰ってしまう。
うーんお金持ちって自由人なのかな?
一人になった俺は時間を持て余してしまう。
てか、みんな学校サボってるのわかってるのかな。深鈴帰っちゃったし、きららも学校とは方向違うし。
登校中に何て濃いものを繰り広げたのか俺は。
ふと。
なにかを感じた。
微かだけど、多分これは誰かに見られているような。
そうすると一人しか居ないんだけどね?
この流れだとだいぶ病んでるというか、頭に来ているだろうから用心して。
残機を確認してみる。そう言えば余裕だと考えながら、最近はめっきり気にはしなくなったけども。
残機は62だった。
思ったより減ってるな!!一人を攻略するのにこれだけ使ってしまったのか俺は。
殺されるのもまぁ仕方ないかなぁとか思ってたけど。そうもいかない。これからは気をつけていかないと、特にこの子だ。
「りょーたんみぃつけた」
背筋に迸る悪寒を顔に出さないようにして振り返ると、何か細い物が光っているように見えた気がした。
そして現れる選択肢。またカウントの奴か!!考えている暇はない。反射と勘に任せよう!!
『おっぱいを揉む』『しゃがむ』『身体を押し倒す』『ブレイクダンスをする』の中からっ!?
間違えておっぱいを揉む選んじゃった!!
ひーたんの胸に両手を伸ばして手のひらで包み込むようにする。
「んっ」
えっっろっ!!!!
声に出さず叫んだ俺の手首がゆっくりとズレてゆく。鈍い音と共に地面に落ちた俺の手はまだ痙攣するように動いていた。
切断、されたのか!?でも、女の子の力で……とひーたんの手に何かが握られていた。
「がぁああ!?な、何がっ」
「りょーたんがいけないの。女の子に手出して。
でももう大丈夫たよ、りょーたん」
手に仕込んだピアノ線を仕舞って、いつものように笑う。
綺麗な笑顔がとても猟奇的に見えてしまう。
でもこの曇りも感じられない笑顔を、俺はどうにかしなければいけないんだ。
「これで手、出せないね」
膝から力が失われて自分の血溜まりの中へと落ちてゆく。反論も反抗も出来ずに、俺はまた殺されたのだった。




