攻略と復活のヤンデレ
『excellent!!貴方はヤンデレ妹『石動深鈴』を完全攻略いたしました。これからは『石動深鈴』に殺害されても残機は減ることはありません。
残機を五体減らし、『石動深鈴』の復活システムを実行しますか?』
いきなり現れたその表記に、思わず唸ってしまう。完全攻略?そんなの聞いたことがない。
復活システムとか、わからない新たな情報が多すぎる。……ヘルプも無いしなぁこの不親切。
『質問には答えます』
「え、聞いてんの?このモノローグ」
『はい。聞いてます。ワタシの事はモノローグ略してモノ。とでもお呼びください』
昔ながらの電子音で目の前に浮かぶ文字に、少し奇妙さを感じるが何回も殺されて生き返り斬り付けられた傷が徐々に塞がる俺も奇妙だ。黙っておこう。
「えっと、モノ。完全攻略って?」
『貴方を好き。から自分の病んでいるところも全部愛してくれる愛しい人。と攻略対象から信頼されたということです』
「つまり、何故ヤンデレになったかを知って気持ちを受け止めつつ向こうの気持ちに真意に答える、と」
『その通りです』
……確かに俺は深鈴の始まりを見た。
そして気持ちを受け取って、答えた。その流れがヤンデレ達の中でピタリとパズルのピースのようにはまれば。
完全攻略、と。クリアに一歩近付いた訳だ。
『復活システムの説明を始めます』
「お、おう」
『他の攻略対象に殺害された場合、貴方が殺されて選択肢に戻らずとも復活します。その場で』
「それ、不自然にならないか?」
『殺された、という時間を削り埋めますので大丈夫かと。不思議に思うのは貴方だけです』
「そっか。じゃあ、よろしく」
『承りました』
そして、時が動き出す。
深鈴は瞳に残った涙を拭って、真っ直ぐ俺を見つめる。
「お先に、帰ります」
「気を、つけてね」
「はい。お兄さん」
「ん?」
「その後ろの方と、寝るようなことがあればご連絡を」
するかよ!!二つの意味で!!
きららは何故か顔を赤くしていたけど、視線を向けている暇はない。
俺の意識は動脈に当てられる包丁に全てを奪われていた。
「二人共、殺します」
「は、はい」
「それでは、お兄さん」
去って行く深鈴の背中からはいつもと同じ様に殺気は感じるけれど。
どこか、柔らかくなったような気もしていた。




