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妹でヤンデレ

視界がいきなり晴れて、態勢を崩してしまう。

今のは、深鈴が病んでしまった原因か。



俺が、石動良也が救ったから。

苦しみを耐えて、痛みを堪えて、憎しみを無理矢理に我慢して来た反動で誰かを想った。

自分を救ってくれた兄に固執した。



そしてこうなったんだ。

傷付けられる前に傷付けて、自分を傷付かせないように。大好きな家族に裏切られ、変わってしまうくらいなら。



わたしの手で綺麗なままで終わらせる。



俺の、せいか。深鈴がこうなってしまったのは。

誰かを躊躇いもなく殺せるようにまでしてしまったのは、俺のせいなんだ。



「だったら、余計に責任取らないとな」


「何ですか、お兄さん。わたしは止まりませんよ。わたしはお兄さんを守ります。綺麗なままの、わたしのヒーローだったお兄さんを。

変わらなくて良かった。変わって欲しくなかった。わたしだけの、愛する人」



深鈴の瞳に涙が溜まって行く。

初めて、だろう。あのいつもクールで俺を見守ってくれていた深鈴が自分を曝け出してくれるのは。



「変わってないよ、深鈴」


「変わりました。お兄さんの周りにはいつも女の子だらけです。ずっと、わたししか居なかったのに」


「でも、俺は「お兄さんはわたしを守ってくれた!!だから、わたしがお兄さんを守るんですよ。強くて優しくてカッコいいわたしだけのお兄さん!!」



ここで、言うことではないだろうが。改めて実感してしまう。

病的に愛されるという事の純粋で異常な感情を。



「ん。選択肢か」



ここは大事な選択肢だろう。

深鈴を宥めて、きららの好感度も下げずに刺されても死なないようにして生き残る。それを実践出来る選択肢を、選ぶんだ。

『俺を、殺せ』『頼む命だけは助けてくれぇえ』『童貞は卒業したかった』の三つ。ふむふむ、なるほどね。



「バカなの!?」



この空気で良くこんな選択肢ぶち込んだよね!!

命乞いは駄目だろう、今ここで深鈴が求めているのは強くて優しくてカッコ良かった時の俺だ。

童貞……は卒業したいけどね?男としては。でも、今か?言ったら深鈴がきららがしてくれるのか?したら殺されるだろ、多分。



なら、うん。賭けてみようか。

この先と、命。



「俺を、殺せ」


「な、なっ!?良也くん、何を!?彼女本気ですわよ!?」


「うん、わかってるさ。だからだよ。

償うって約束したのにな。カッコ悪くなった俺じゃあ償えそうにない。

だから、せめて深鈴にけじめをつけてもらいたい」



深鈴が包丁を振りかぶってピタリと止まる。

俺の目をじぃっと見て、大粒の涙を流し座り込んでしまった。

こんな、深鈴記憶の限りは初めてで驚きを隠せない。



「うぅ……うええええぇぇん!!!!」


「み、深鈴?」


「殺せるわけ、ないじゃないですかぁぁ!!

わたしはお兄さんが、好き。大好き、愛してますぅ……カッコ悪くても、お兄さんはわたしの全部なんですぅぅ」



包丁を落とし、自分を抱くようにして泣き続ける。

まるで子供のように、耐えてきた涙を全部流すようにして泣いていた。



「深鈴を守れて嬉しかった。だから、俺は誰かの支えになりたいんだ。それが、深鈴が許さないことかもしれないけど」


「ぅっうぅ……全く、お兄さんたら」



いつものように、笑って俺に手を伸ばす。俺は深鈴を抱き締めて頭を優しく撫でる。

この感覚。昔もやっていたような、気がして何だかくすぐったかった。



「わたしはあなたが、好きです。他の誰を好きになろうともそれは変わりません。最悪愛人でも構いませんよ」


「本当に最悪だよね、それ」


「お兄さんが誰かを支えて、わたしも幸せになれるのなら」



その時、深鈴が見せた笑顔はこれまで見た中で一番可愛く可憐でとても輝いていた。



「わたしは、お兄さんにずっとついていきます」



思わず、本気で惚れそうなくらいに。


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