止めどなく、ヤンデレ
考えが、甘かった。
俺が相手にしているのはただの嫉妬深い女の子じゃない。それを忘れていた、いや軽く見ていた。
「やめ、い、すみ……」
「まだ、女性をたぶらかすつもりか?
その口で誘い、どうやって高月財閥を誘い込んだ」
「ぐ、ぁ……」
答えようにも声が、出せない。
後ろからいきなり首を絞められて、俺はもう意識が朦朧としてきていて。伊澄の質問には何も返すことは出来なかった。
「心」
「はい」
うららの一言で解放される。空気を必死に肺に送り込んで倒れ込む。窒息、ってヤバいな。死神の鎌が喉元にゆっくり食い込んでゆくような感覚。なるべくならもう二度と、ごめんだ。
「わたくし達と対立している高月財閥に手を出すなんて、良也さん……」
「手、出して……ないから」
「見損ないました。ちゃんと、わたくし達を見てくれる稀有な男性かと思ってましたのに。結局は目当てはお金でしたのね」
「お嬢様方を悲しませたな。
ボクを思い、支え、拾ってくれたお嬢様方。ボクの全てを持って悲しみや苦しみから守る」
ちょ、っと待ってくれ。その言葉すら発せられない。すると俺を救ってくれるかのように選択肢が現れてくれる。
『高月さんよりお前らが好きだこの野郎!!』『高月さん可愛いもんなぁ』『ぐへへみんなとぴょんぴょんするんじゃぁー』の三つ。そろそろ頭のネジを取り戻さないと選択肢がヤバいな。
てか、この三択だとほぼ一択だよね。
「高月さんよりお前らが好きだこの野郎!!」
「な、何を言いますの!?良也くんのフューチャーチンパンジー!!」
「誰が、未来型チンパンジーだよ!!」
「良也さん。今の言葉に嘘はないですか?」
「ない、って。高月さんとはあまり関わりないし。ならいつも話してるそっちの方が好きでしょおぉ!?って伊澄、腕折れるから折れるからぁ!!」
「あ、つい」
つい。で腕に極め技掛けて力を入れないで欲しいわ!!離してもらう腕はなんとか無事なようで。
微笑むうららと視線を逸らすきらら。
そして何故か指を鳴らして拳を固める伊澄。
「じゃあ、とりあえずは解放しましょう」
スキップで去って行くうららを見て伊澄が慌て出す。まぁ、狙われてるのに離れたらなぁ。
「良也、殿」
「は、はい?」
「お二人を傷付けたら全身の骨を三つ折りにして博物館に飾ってやるからな」
脅しじゃないってのがわかってるから怖い。
お嬢様ー!!と叫んでうららを追う伊澄。って、あれ?きららはこちらを睨んだまま残っていた。
「きらら?」
「……良也くん、さ」
「うん」
「お姉様、よりわたくしに、したら?」
「へ?それってどうゆうこ「深い意味しかありませんわ!!お姉様とあなたみたいなゴキブリが進化した人は釣り合いませんから!!」
そこまで言って、顔を赤くするきらら。
え、何これ。めちゃくちゃ可愛いんですけど?
「だから、お金が欲しかったら、わたくしでいいんですのよ?」
可愛い。
そう口に出す事は出来なかった。
俺の背中に焼けたような痛みで言葉を途切れされる。振り返るとそこに深鈴がいて、歪に笑っていた。




