激昂ととりあえずとヤンデレ
うおおおお!!刺される覚悟で抱き締めてやるぜ!!
俺の勢いに負けたのか、深鈴が包丁の切っ先を逸らして頬を切りつけるだけで済んだ。
よっしゃラッキー!!とか言ってる場合じゃない。すぐに次の行動に移さんと……。
深鈴を思い切り抱き締める。ここで通学路だからと恥ずかしがらないようにして。
「お、お兄さん?そんなことでわたしが許すとでも……へへ……」
めっちゃ喜んでるじゃないか、可愛いな。
よりも、えーと言葉を続けて畳み掛けるようにしないと。
「大丈夫だよ、高月さんとは付き合わないから」
「本当、ですか?好かれているのをいいことに身体だけ味わったら、ぽいっなんてことありませんか?」
「酷えな俺」
「でもしないんですね」
「しないよ?え、疑うの?元々するような奴じゃないよ?」
「ふふ。どうでしょうか」
機嫌は、直ったけどさ。何故か俺が腑に落ちないんですけど。俺がいつ身体にしか興味が無いハイエンドスケベになったのか。
妙に機嫌のいい深鈴を横に歩いていると。
「良也」
「りょーたん」
金槌を持った弓月と血涙を流したひーたんとエンカウントした。
これは、まずいよね。てか広まってるのか?高月さんに告白された事。それしか考えられないよな……で、なんでそんなことをする?
「「告白されたんだよね」」
ふぅー!!ヤンデレボイスのハモり怖えぇええ!!!!
深鈴が俺の前に立ち塞がりバックの中に手を入れ、いつもの通りに包丁を構える。
「お二人共、冷静に。お兄さんは付き合う気はないと言っています」
「わからないじゃん。可愛い女の子をぺろぺろしたいのが良也でしょ」
さも当然のように変態と断定しやがった!!
「そうだよ。りょーたんはいつもわたしの事を性的な目で見てるんだもん。そりゃあ欲求不満にもなるよ。そこらの女の子襲ってもおかしくないもん」
おかしいよー!?てかいつ性的な目で見た!?
ひーたんと目が合った。瞳孔が開いていて、でもいつもと変わらぬ笑顔で俺を見る。
「良也、ほんと?付き合う気ないの?」
「りょーたん嘘はすぐわかるよぉ?」
そして現れる選択肢。
『これ以上問題増やせるか!!』『うん、俺の好みじゃない』『うん、一回したらもういいかな』『それよりみんな大好きだよ』ねぇ。ゲス選択肢にはもう驚かんぞ。
……はっきり答えてみるか。
「うん、俺の好みじゃない」
「「「知ってる」」」
うへぇ。フルハモり。
全員が自分だもんね、と言わんばかりに胸を張る。……変になんか言うと殺されるかもしれない。声をかけられるまで黙っておこう、
「良也くん」
「良也さん」
「良也殿」
次から次へとぉおお!!
振り返るとうらきら姉妹と伊澄が少しショックを受けているようにも見えないでもなくて。
「良也くん、どうゆうことなのか説明していただけますかしら?」
「俺が聞きたいんだが」
「良也さんがあの高月さんに告白されたと」
「あの?」
「知らないんですね、やはり。
彼女は高月財閥の一人娘、多大な権力を持つ高校生として人気を博しているのですよ?」
知らんかった。
だからみんなこんな心配してるの?金に動くんじゃないかと?
「大丈夫だよ。金には目もくれないし、みんなといる方が楽しいしね」
深鈴が微笑んでくれる。
やっぱり一番の理解者だよなぁ!?って抱き付くひーたんのカッター食い込んで……て、刃が出てない?
「りょーたんたら仕方ないんだからぁ」
何が?って刃が出でなくても結構痛いね!!
「良也さんたら本当に八方人参なんですから」
「お姉様。多分それ八方びんびんですわ」
「お二人、違いますよ……?」
八方びんびん……?意味合いがなんか卑猥なんですが?
みんなが何を納得しているかは知らないけれど。
とりあえずは、難を脱出した俺らしかった。
……まぁ束の間の休息だったのだけど。




