芽生えた何かとヤンデレ
久しぶりに生きているという実感が湧かざるを得ないくらいに、達成感があった。
俺は生き残った!!まぁ残機は減ったけど……それでもやりきったぞ!!
「いつまで手を繋いでますの!?」
「あ、あぁ。ごめん、きらら」
「りょーたんってばカッコいいなぁ。
あれが、こいつを狙う刺客なのかな?」
「こ、こいつ?」
「ひーたん、口悪い」
「ごめんねりょーたん嫌いにならないで何でもするから嫌いなられたらわたしはもう生きていけない死ぬ死ぬ死んじゃう何を糧に生きていけばいいのかわからなくなっちゃうよりょーたんりょーたんりょーたんりょーたんりょーたん「わ、かったからひーたん落ち着いてっ」
……視界には高いビルもないし、路地の奥に入ったから狙われるとしたら前か後ろか単純な話だ。
最悪、俺が一番最初に死ねば状況を覚えて次に繋がることが出来る。
とりあえず、気を引き締めて。
「ちょ、あなた!!」
「ん?」
きららが指をさしたまま、顔を赤くしていた。
ん、またなんかミスして怒らせましたかな?俺なんかやっちゃった?なーんて、笑えねぇや。
「あの、その、えっと……むー!!」
「へ?どうしたよ」
「構わないでいいよ、りょーたん。わたしだけを見てていいんだよ、どうぞどうぞ」
何かを言おうとして、叫び出すきららとお姫様抱っこのまま力の無い瞳で俺を見つめてくるひーたん。この組み合わせ……なんか、レアだよね。
それからというもの、ひーたんときららは事あるごとに衝突していた。まぁだいたいひーたんが俺を小馬鹿にしたきららに取ってかかるのがほとんどだったけど。
「りょーたんバカにするのは許さないよ?」
「バカになど、もうしてませんわ。事実を申し上げているだげです」
「刻むよ?」
「どうぞ、やって見せてください」
「二人共ケンカやめ」
「わかったよぅりょーたんっ」
「仕方、ないですわね」
こうして無理やりにでも一緒にいるからか、きららとも少しずつ普通に話せるようになったような気がした。
「全く、この野郎は……」
気がしただけかな!?
集中して気を張っている一日ってのは本当に早いもんで、俺とひーたんときららは最初以来の襲撃をまともに受けることはなく生き残った。
ひーたんの気配を感じ取る謎パワーとか、きららが転んでパンツ見えたりやらひーたんが刺客の一人を締め上げて筋肉の筋を切って動けなくさせたり、きららはうららに比べて胸が少し小さいのかな?とかいう俺だったり。
邪な考えを持てる余裕を感じつつ乗り切ったのだった。
「良也さん。お疲れ様ですー」
「そちらはどうでした?こちらは鉄砲玉三十人ほどでしたが、特に問題はなく済みましたけれど」
鉄砲玉ねぇ。まぁ、こっちは鉄砲だったよ。なんてスカしたジョークを挟めるほど、俺のメンタルは強くなかった。
「お姉様、わたくしは「何とも無かったぜ。楽なもんだったわ。きららとも仲良くなれたしな」
きららの視線に肩をすくめて返す。
するときららは微笑んで、うららの横に並ぶ。うーんこうやって見ると双子でも案外違うものだ。それぞれの魅力があって、両方やっぱり美少女なんだ、と勝手に納得しておく。
「りょーたん。やらしい目であいつのパンツやおっぱい見てたのは報告しないの?」
「……は?」
きららの視線が、よりも伊澄が怖い!!
逃げようとする俺の襟首を掴んで、きららの前に正座させられる。
「見たの?」
「み」
嘘付くか本当の事か……って出ねぇのか選択肢さん!!俺を助けてくれよ!!
いくら祈っても願っても出ては来ない。溜め息をついて、俺の中で選んだ言葉を使う。
「見た」
「この、助平!!」
「すけべえ!?ぐえぇあ!?」
振りかぶったきららのサッカーボールキックが顎を捉える。ナイスシュート!!と皮肉ぶりたいが顎が痺れて話せない。
「全く……次やりましたら、許さないですわよ。わかりましたか良也くん?」
「あれきらら。良也くん、って呼んでたっけ?」
「う、うるさいっ!!」
「何で俺!?ぐはぁぅ!!」
何故か蹴られて震える俺を抱き締めながら、ひーたんは小さく「わたし以外を見るから」と呟いて、俺は静かに恐怖やら痛みやらで目を閉じた。




