引けよ、ヤンデレ
「えーと、弓月。こちらさんは「いいよ、紹介は」
弓月はバックからカードのようなものを取り出して、うららと伊澄に向け扇のように開く。
タロットカードか。二人に向けての「引け」という圧力を抑えて欲しいけど。
うららは笑顔で、伊澄は何故か俺を睨みながらそれぞれ一枚カードを引いて弓月に見せた。
「太陽の正位置。と……吊るされた男の逆位置ね。ふぅん……」
……どゆこと?試しに調べてみた。
うららの引いた太陽の正位置の意味は純粋やらうららのイメージには合っていたけど。伊澄の方だ。報われない、終わりが見えない。とマイナスの結果に。
「何ですか。視線が痴漢行為に当たるくらい卑猥なんですけど」
「心。本当でも言ってはいけません」
「本当なのかよ。それで余計に傷付くぜ」
「良也、友達……でいいのよね」
「うん。そうだよ、あれは別」
めっちゃ睨んでくる伊澄を指差して言うと、人差し指が逆に曲げられた。ぎゃー体力減ってるぜぇ!!まぁこれくらいのダメージなら日常茶飯事だ。深鈴の包丁にひーたんのカッター……うう、涙が出てくる。
「お二人はどうゆうご関係で?」
「幼なじ……ってここで選択肢かよ」
『何もかもを共有してきた関係』『幼なじみだよー』『肉体だけの繋がりですねぇ』か。
一つはゲス入れないと死ぬの?
……幼なじみだよーだと弓月が来るのかな。あ、殺しに。だったらまだフラグが完璧でない伊澄よりかは弓月を優先させるべきだな。
「何もかも共有してきた関係だ」
「へ!?あの、彼女さん、は?」
「ん?えーと」
周りを見て……よし、居ないな。ひーたんに聞かれたら何が起こるかわからんし。
「あれは自称だから。気にせんで」
「じゃあ、そちらが彼女さん……?」
「いや、弓月は幼なじ「ふぅえええ……」
「お、お嬢様!?覚えていろ貴様っ!!」
泣きながら去ってゆくうららに、俺を殺さんばかりの勢いで睨んでそれを追う伊澄。
忙しいなあなんて考える俺の頭を弓月が叩いた。
おぉ。初めて女の子からの一撃でこんなに微々たるダメージだ。
「罪深すぎ」
「え、どゆこと?」
「まぁ、いいよ。今はこっちを選んでくれた訳だしね。ほら時間なくなっちゃうよ」
「お、おう」
そうしてゲーセンで時間を潰して、映画を見る。
まさかのあの殺人鬼の悩み、苦悩、本当の願い。色々な想いが交錯する感動巨編に俺は涙していたのだった。




