epilogue1 目覚めた世界は
……随分と長く寝ていた気がする。
何度も何度も殺されて、その分想いを受けて。
このゲーム、凄いけど。
「なんか、疲れそうだな」
起き上がって部屋を出るともう母さんが朝ご飯を並べていて、もう妹が食卓についていた。
母親譲りの金髪に父さんの黒い瞳がやっぱ馴染んではいないと感じてしまう。
「おはよ。綾華」
「……はよ。深也」
綾華の母さんは俺の父さんとも結婚していて、まぁ複雑なわけではなく。
うちは日本で唯一の一夫多妻制家族だから仕方がないのだ。
「あれ、綾華の母さんは?」
「今日も相変わらず仕事よ……全く、国会議員なんて、名前の割に全然麗らかじゃないよね」
「はは。まぁ、すごいのには変わらんよ」
「あれ?そっちの親は?」
「母さんは執筆で、父さんはゲームのプログラミングしてるだろ」
「インドアねー」
「だろ?流石ゲーマーの俺の親だぜ」
綾華は部活だと言って朝ご飯を平らげて去って行く。入れ替わるように桜良がゆっくりと欠伸をして現れた。
「おはよぉ……」
「はよ。……おー徹夜か?」
「もちよ。限定ドロップアイテムコンプなり」
「え、あのネトゲってドロ率低くなかったっけ?」
「根気と根性、そして冷静さが必須よ」
「……母親譲りってか」
「そーよ!!煌めいてる?」
黒髪に、金のメッシュが入った桜良は(ちなみに、地毛だ)ネトゲオタクで良く夜通しゲームをやっている。まぁ、俺も手伝ったりしてるけどさ。
「今日は学校どうする?」
「ふふ。寝落ち」
「はっ……流石だわ」
「……おはよ」
「「おはよ。陽光」」
陽光も夜型で、多分桜良に付き合わされていたんだろうと予測する。
いつも、誰かを思って身を粉にする彼女だ。恐らくそうだろう。
「……深くん。昨日はログイン、無かった」
「あ、ごめん。シンプルな寝落ち」
「深くんともゲームやりたい。なるべく……ログイン、して」
「お、おう」
たまに義理の兄妹相手とは思えないぐらいの圧を感じる。まぁ、気のせい、だよね?
「はよーっす!!」
「……あぁ。もう、徹夜明けに響くから。少しはボリューム落としてよ。愛那」
「あー!!まぁた徹夜すっか!!」
「あぅー愛那ー頼むぅー」
賑やか、だ。
俺はゆっくり妹達の討論を小耳に挟みながら自分の部屋に向かう。俺も、眠いしサボろ。
「……うおーい。深也ぁー!!」
「げ。父さん」
俺の肩を掴んだのは、父さんの石動良也だった。