『2』end 病んでるデレは好きですか?
……今は、家に一人だった。
ひーたんと深鈴はあのあとよく知らないが意気投合し、他の婚約者と食事に行くと俺を置いていった。
『虚しいですか』
「いや。嬉しいよ?」
『そうですか。これから、大変ですよ?』
「だろうな。でも、大丈夫だよ」
目を瞑って『俺』が俺になってからを思い返してみる。
辛かったが同じくらい楽しかった。
そんな日々を、俺は誇りに思う。
しっかり者で、頼りになる大好きな妹。
強くて実は甘えん坊で大好きな幼なじみ。
愛し過ぎるくらい思ってくれる大好きなヤンデレ娘。
麗らかでしたたかで大好きなお嬢様。
煌めいて優雅で本当は良い子のお嬢様。
心が綺麗で人を本気で想える、大好きな付き人。
その誰もを本気で好きになって。
その誰もを、手放すのが嫌になってしまった。
我儘で貪欲で。
でもそれくらいじゃあないと、彼女達の気持ちには応えられないだろう。
全てを捨てても、残機が無くても。
あの子達さえいればいいや。なんて、へらへら笑いを浮かべてしまう。
「ありがと、な。モノ」
『わたしはただのシステムです。
……わたしは一つ嘘をつきました』
「ん?」
『以前出させていただいた選択肢で最後と。
もう一つ、ありましたね』
目の前に現れる選択肢に思わず笑ってしまう。
こんなの、聞くまでもないぜ。
迷うこともなく『はい』を選んで部屋を出る。
俺の去った部屋には、まだ選択肢が霞んで残っていた。
勿論。最後の選択肢は。
『病んでるデレは好きですか?』
ーーーー『2』病んでるデレは好きですか?
Ture end