『2』サプライズ
さっき、ひーたんを完全攻略したと出たけど。
復活システムは使えない。残機無いしね!!
あとはひーたんに殺されても死なないだけか。……十分だ。
「ねぇねぇねぇねぇりょーたん」
「ん?」
「さっきの話が本当ならさ。これから先に一夫多妻になるんだよね?」
「ああ。そうだよ?」
一応、これからのざっくりはもう話をしてある。一夫多妻になるよ……とかざっくりだけど。
ひーたんはすぐに信じてくれた。俺に嘘はない、と断言してくれた。有り難い彼女である。あ……婚約者か。
「わたしも、婚約者?」
「うん」
「わたしと結婚してくれるの?」
「ん?うん」
「わたしをママにしてくれるの?」
「……う、うん」
「今すぐにっ!!!!」
「おぉい!?落ち着け!!」
息を荒くするひーたんを突っぱねて、家の前に立つ。あぁー憂鬱だ。死なないかなぁ……そこだけが心配だ。
あとは、きららとうららと弓月。
殺傷能力が高い弓月は先にどうにかしたいけれど。
「お兄さんっ!?」
心の準備を終えてから開けて欲しかった。
口には出さずにひらひら手を振る俺に笑顔を深鈴は向けてくれるが。
横で発情しているひーたんには、睨みを利かせていた。
「……なぁーんだ。来たんですね?ストーカー」
「ストーカーじゃないもん。ちょっと情事観察して尾行してるだけだもん」
「それを世間じゃストーカーと呼ぶのですけど?お兄さん大丈夫ですか?まだ童貞ですか?」
「心配そこ?だ、大丈夫だっての」
「良かった……さぁ早くお兄さん。そいつに奪われる前にわたしがお兄さんの初めてをいただきます」
何言ってるのか。深鈴も大抵人の事言えないからね。いわば同じ穴のムジナだからね。
「なっ!!わたしのものですっ!!
りょーたんに奪われるためにわたしも守ってきてますからぁ!!」
「こっちだって!!世間的にはイケメンだと騒がれている奴からの告白だって断ってますぅー」
「「むむむっー!!」」
やり取りが可愛すぎて、キツイ。
まぁどちらにも奪わせる訳にはいかないんだけどね?
「それで、お兄さん」
「ん?」
「えーとお名前は「日比野陽菜!!」「はい、陽菜さんも婚約者の一人なんですよね?」
「そうだ、けど?……ん。なんで、覚えてる?」
「……やっぱお兄さんも覚えてますか?
この国は一夫多妻になったはずなんですけど?」
……俺がひーたんを死なせた時間には、まだその法律は無かったはずなのに。
携帯で調べてみると……やっぱりその事実は、ない。
つまり、深鈴は何故覚えている?
あの時間の深鈴は、死んだはずだろ?
……死んだ?
ひーたんを救うために、俺が時間を戻したから。
「あ……」
攻略対象の為に、みんなの記憶を『殺した』。
つまり、復活システムの対象に入るのでは?
「み、深鈴?」
「はい。婚約者の、他は覚えてるか?」
「はい。弓月さんに、心さん。あとはうらきら姉妹さんにそこのストーカー陽菜さんですか?」
間違い、ない。
覚えているのか?そして、復活システムは……健在?
『ご明察。言ったでしょう?
攻略対象に殺された場合は、復活すると』
ほとんど、屁理屈だ。
『でも筋は通っています。何か、問題でも?』
「いや、問題はないよ。むしろ、最高だ」
『……システムですから』
モノの粋な計らいでまさかのこれで、ヤンデレハーレム結成となってしまった。
はは……やった。やっちゃった……。
静かにガッツポーズする俺を、二人は不思議そうに見つめていた。