『2』夢にさよなら、現実におはよう
……朝になっちゃったけど。
ひーたんはまだ俺に抱き付いていて、頬擦りを止めないが。まぁ今は全然苦痛じゃあない。
会えて、救えただけで俺はもう全てを捨てた意味があったということだ。
「……あーでも、うーん」
「りょーたん?」
「いや、これから。えっと、三人の女の子を口説くんだけど」
「へぇ……そうなんだぁー?」
額に青筋怖いから。
でも、カッターも出さないしピアノ線とか出さないから。ひーたんもわかっては、くれているんだろうけれど。
「死なないかなぁーって」
「大丈夫、だよ!!りょーたんはわたしが守るからねっ!?」
「……殺さないこと、な」
「えっ!?」
「えっ!?じゃねぇよ。当たり前でしょ。
俺は、みんなを幸せにするの。ひーたんも、みんなもね」
苦虫を噛み潰した顔を初めて見た。
すぐに笑顔を作って、俺の胸に飛び込んで来る。
「わかったよ!!わたしのりょーたんっ!!」
「……うん、良かった。君に、会えて」
「ぐでゅへへぇ……」
「ちょ、ひーたん。デレ方がちょっと凄いぞ」
「だってぇ。わたしね、夢を見たの」
夢、ねぇ。
ひーたんは真剣な顔で、そのまま続ける。
「わたしが自殺して、りょーたんが泣いて。
怒って、悲しんでいる夢。……夢でも、悲しかった」
……無くなった時間の、記憶が?
まぁもう無くなって壊れて死んだ時間だ。振り返る事も、振り向く事もしない。
「夢、なら。良かった、俺は君にも、みんなにも死んで欲しくないから」
「うん。そうだよね、優しい人」
ひーたんを腕にくっつけながら、公園から去る。
救えたけど、次があるし。次だって命の危険は無くなっていない。
気を張って、引き締めて。
「頑張ろう」
「うんっ!!りょーたん!!」
大好きな彼女の笑顔を見て、前に一歩踏み出した。