『3』罪も罰も
目を開けると、深鈴が死んでいた。
手には真っ赤な包丁。……終わったんだな。
「モノ、あと何回死ねば終わる」
『……9回です』
「はっ……案外色々使ったもんな。仕方ない」
そう呟いて、また喉を抉るように包丁を引く。
鋭い痛みは一瞬で意識が飛び、また俺は死んでも生きていた。
「あと、8回」
一人で死ぬのも難しいな。
血塗れのまま、裸足で外に出て走ってきたトラックに身を投げる。
……痛みもなく死ねるな、これ。
また深鈴の死体を前にしていた俺はそう思っていた。
「あと、7回」
……トラックでそのあと4回轢き殺されて、深鈴の死体の前で溜め息を吐く。
死ぬのも、連続すると……はぁ。何ともなくなってくるな。
「あと……ん?何回?」
『2回です』
「そっか」
今度は心臓に刃を立てて、思い切り突き刺す。
肋骨が邪魔だったが、今の俺はそんなこと気にしない。捩じ込むように心臓を貫く。
「はは……これは、いてぇや」
静かに襲う激痛に叫ぶこともせず絶命する。
深鈴の死体もこれで、見納めになるな。
「あと、1回」
「良也さん……?」
振り返ると、うららが震えていた。
俺を見て怒りを感じているように見える。……ああ。きららと心を殺したのが、バレたのか。
「なんで、ですか」
いいよ。殺してくれ。
「なんでっ!!!!!」
その、握っている銃で頭を撃ち抜いてくれ。
お前にはその資格がある。
「何か、言ってくださいよっ!!!!」
硬いものが、眉間に押し付けられた。
あとは引き金を引くだけで、俺を殺してくれる。
「……うらら」
「……何故、二人を……皆さんを!!」
君は、心の綺麗な女性だ。
人の為を思い自分を思い、それを止めようと自分が傷付く覚悟がある。
「ありがとな」
一歩進む俺に、反射で引き金を引いた。
その瞬間客観的に自分を見ていた気がする。頭の中をぶち撒けて倒れて行く俺を見て、うららは泣き崩れていた。
……終わった。
俺は、やっと死んだんだ。
どんな罰でも受ける。
俺は、責任を持ってどんな罰でも地獄で受けるから。
それが救った代償だろうし。
『どんな罰でも、受けるんですね?』
モノ……?
返事は出来ず、俺は魂ごと、消えたのだった。