『3』手を、汚して
「何て言ったらいいのか」
下で、車に轢かれて血溜まりを作って肉塊になってしまったきららを見下ろして。
「こんなもんか」
あまりにも微動だにしない心に、驚いていた。
多分自分の手じゃないからなのかな。殺した感じがない。事故というか。まぁ見せかけた、という感じなのだけれど。
「貴様……」
「ん?」
「今、何をしたぁあ!!!!」
「心、か」
予想はしてたが思ったより早かったな。
心を殺す算段も付いている、が。それは向こうが冷静さを失っているかを、確認しないといけないんだよなぁ。
まぁ、無難に挑発してみるか。
「殺したよ?」
「な、んでだよ!!ボクも、きららさんも、良くんの……お前の為にどれだけ!!!!」
「信じないと思うけどさ。俺はみんなを救う為に殺すんだよ」
「狂ってるよ……お前……今すぐ送ってやるよ。
きららさんは天国だけど、お前は地獄にっ!!」
大股で、隙だらけ。
うん。いい感じで冷静さを欠いてるね。
近付く拳にポケットに仕込んでおいたスタンガンを当てる。
「がっ!?」
「一瞬で、良かった。怯んでくれればさ」
怯んだ腕を取って、頭を掴んで手摺に叩きつける。手摺と頭蓋骨が当たる鈍い音が響き、心の身体が痙攣する。
「何回も、やられたんだ。心にさ」
「りょ、うくん」
「あーまだ意識あるんだ。ちょっと、待ってね」
思い切り叩きつけると白眼を向いていた。
これで、意識は失った。なら、心置きなく。
何度も。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も叩き付けていると、手が痺れて心を落としてしまう。
歪んだ手摺と頭蓋骨が砕けた心を見比べて身体を伸ばす。
「こんな大変だったんだ。お疲れ様、心。
心置きなく、天国できららと仲良くやれよ」
血に塗れた服をどうしようかは考えてなかった。
……これで、直接殺した訳だ。
「うん、傷付く。……でも、これが、救いなんだ。俺は、間違ってない……!!」
微笑んで、歩道橋を降りる。
手の痺れを払うように手を振って。
「あと、二人」
そう呟いた。