『3』はじめの一歩
お姉様からの伝言で、良也くんが呼んでいると伝えられた。
どうしたのでしょうか。大切な、話と言っていましたけれど。その、もしかして告白ですかね……いや、わたくしの方は別にいいのですけれど。
歩道橋の上という不思議な待ち合わせ場所に向かうとすでに良也くんは待ってくれていた。
……うう、緊張しますわ。
「よ。きらら」
「こんにちは、良也くん。何でしょうかこの様な所に呼び出して」
「話があってさ」
真剣なトーン……これは、もしかしてもしかするかもしれませんわ。
「俺は、さ。きららが、好きだよ」
本当に来ましたわっ!?良也くんはわたくしを見ずに、歩道橋の下の道路をぼぅっと見たまま動かない。
何だろう?いつもと、少し違うような、気が。
「きららは人の為に誰かを殺せる人間だ。
それが、うららの為でも、俺の為でも。思考し画策して始末する。そうゆう、奴だよな?」
「良也くん、話が、見えませんのだけれど」
「いや、確認しただけさ」
疑心が生まれてきたわたくしを、良也くんは振り返って軽く押した。
バランスを崩し、ゆっくりと、歩道橋の手摺に寄りかかる。すると軽い音を立てて、誰かが意図的に壊したように外れて。
「良也、くん?」
好きな人が歪に笑っているのを、手摺と共に落ちながら見るしかなかった。
鈍い音が身体の中に反響して、頭を揺らす。
痛みよりも、何よりも。
良也くんがわたくしを殺そうとした、その事実が信じられなくて。
好きだと言ってくれた、のに。
近付いてくるクラクションの音。足が、動かない。
「どうしてですの」
わたくしの意識が途切れる瞬間。
妙にはっきりと、聞こえていた。好きな人の、声で。
「まずは、一人」