目覚めたらヤンデレ
目覚めると、自分の部屋じゃなかった。
見知らぬ天井、なんて言ってる場合じゃない。
でも……見覚えあるな。
「いつまで、寝てるのですかお兄さん」
「へ?」
可愛い声のする方へ視線を移すと、顎が外れそうな程の衝撃が俺の頭を駆け巡る。
「お兄さん?」
長い青い髪を軽く結んだツインテールにして、おっとりとした顔付き、小さく控えめで可愛い身体、そしてその手に握られた無骨な包丁。
間違いない。これは……この子は!!
「ゲームの……キャラ?」
「何を言ってるのですか?お兄さん、早く起きてください」
そう言って部屋を出て行く。
彼女の名前は石動深鈴。
俺の、いや。ゲームの主人公である石動良也の義理の妹だ。
そしてこのゲーム、おそらく今俺のいるこの世界。
タイトル『病んでるデレは好きですか?』だ。
つまり、このゲームに出るヒロイン全員がヤンデレというカオスな内容で。一番の目玉はシステム性にある。
オートセーブのみ。つまり選択肢を選ぶ度に自動でセーブをしてくれる、が。
体力と残機があるのが一番特徴的だろう。
女の子から攻撃を受けて、体力がなくなると死ぬ。
そして残機を減らし選択肢からやり直す。
死に覚えギャルゲーという謎ジャンルを築き上げたのだ。
昨日買って、抱いて寝て……それでこうかよ!?
「……はぁ、最悪だ」
呟いてベッドから起き上がる。
とりあえず、動くしかないか。色々考えていた所で話は進む訳じゃないし。
てか、深鈴もヤンデレだ。気を付けて話そう。
息を大きく吸って大きく吐く。
「よしっ!!」
そう言って部屋を出た。