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序文

 自分の感覚を鈍らせるものを追おうとすると、決まって何かが邪魔をする。たまに踏み込んだことを考えると、そいつは肢体を柔軟に広げて視界に被さってくる。そうなると自分は従順なもので、それが視界に溶け込むのに何ら疑問を抱かないのだ。

 その正体を粗方わかっていながら、名状することを後回しにしたことで、上記の過程そのものが感覚を蝕んでいるのに気付いたのはつい最近のことである。

 景色は硬質な香りを帯び、大気の甘さはすっかり薄れてしまった。沈んでゆく環境に身体がなじむ現状を、憂うこともなければ抗うこともしない。意志次第でどうにかなるのかすらわからなくなってきた。


 これまで灰色の数年を眺めてきたつもりだったが、しかし本当にそうなのだろうか。活字や音楽。自分とは隔絶されていると思っていた領域が目蓋を撫でる感触に、自分が今まで目を瞑っていたことを知らされたような気がする。目を瞑っていたとすればその目蓋をこじ開けて、今まで盲目に放浪してきた空間を見てみたい。もちろん空間だけでなく、この盲人に関わってきた生きた存在も…。


 このエッセイ集は、目蓋を開こうともがく途上に見えた光景と、目蓋を開いた時に見える光景のスケッチが混然としたものになるはずである。開きっぱなしにすると今度は眼球が乾いてしまうことに留意して、スケッチを続けたい。

 ちなみに今は、目蓋はかたく閉じて開かない、と思っている。現時点で確信はないが、後でスケッチを見返した時にわかるだろう。この確認こそがこのエッセイの意義である。〔2017.8.6〕

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