表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/7

地球=何時もの朝、突然の出来事


 瞼に強い光を感じて、眠りから目を覚ます。

 重く感じる身体を起こし、鳥の鳴き声を聴きながら服を着替える間に、やっと意識が覚醒してきた。

 制服に着替えたら、朝食を食べる為………………では無く、そのまま学校に行く為に家を出る。


 「いってきまーす」

 「………………………」


 返事は返ってこないが、それも当然だ。

 俺はこの家の子供では無く、この家の家主の兄の子供だからだ。

 なんとなく、己の過去を振り返る。


 俺は、平凡な一家に次男として産まれた。

 両親や兄はとても良い人で、家庭には笑顔が絶えなかった。

 俺は昔から周りの人達とは、かなり変わっていた。

 見た目が変な訳では無い、変わっていたのは中身だ。

 小さい頃から明るく活発だったが、恐怖の感情が薄く(子供にしてはだが)、感性も特徴的だった。

 その最たる例は、小学二年生の頃に巻き込まれた、銀行強盗の件だろう。

 母親の買い物に連れていかれた俺は、買い物からの帰りに寄った銀行で、銀行強盗に巻き込まれた。

 俺以外の皆は恐怖で震えていたが、俺は少しの恐怖は感じても、震える程の恐怖は感じず、ただ淡々と言う事に従い救助を待っていた。

 その後は、事件は無く、家族で遊園地に行ったり、映画館に行ったり、長期休暇では外国に旅行に行くなど、幸せな日々が続いた。

 だが、幸せはそこまでだった。

 小学五年生の時、俺が夕方に友達の家から帰ると、家は異様な静けさに包まれていた。

 不思議に思いながら家に上がりリビングの扉を開けると、そこには朝まで元気だった家族の死体が横たわっていて、リビングは血の海と化していた。

 俺は愕然としてしまい固まっていたが、直ぐに我に帰り駆け寄って呼び掛けたが、既に身体は冷たくなっており、いつもの様に笑顔が返ってくる事は無かった。

 俺は泣いた、子供らしく、大声で。

 その時、キッチンに隠れていた人影が飛び出して俺に襲いかかってきた。

 俺は本能か、勝手に身体が動いたから肩に傷を負うだけに済んだが、人影は死体に足をとられ、転んだ。

 俺はその時、なんとなく理解していた。

 こいつこそがこの惨状を作り出した犯人だと。

 こいつが俺から家族を奪った張本人だと。

 だからだろうか、次の瞬間には、俺は人影が落とした包丁を拾って、倒れている人影に突き刺していた。

 必死に何度も刺していたからか、いつの間にか人影は動かなくなっていて、俺はそこで意識を手離した。

 次に目が覚めた時、家では無く病院だった。

 そこで警察の人に事件の概要を聞かされた。

 犯人は隣に住んでいたおじさんだった。

 ギャンブルで生活費を使いきってしまい、俺の家に忍び込んで金を盗もうとした所を母に見つかり、咄嗟にキッチンにあった包丁で刺殺。

 その後、帰ってきた父と兄を母と同様に刺し殺したのが、死体の硬直具合から分かったそうだ。

 俺の扱いは、無罪になり名前は伏せるが、周りの対応は変わった。

 どこから洩れたのか噂は広まり、俺は人殺しとして施設でも学校でも避けられた。

 それから少しして、俺を預かる家が決まり、俺は叔父の家に引き取られた。

 そこから始まったのは、虐待の毎日だった。

 叔父からは殴られ、蹴られ、叔母からは食事もろくに与えられず、ほぼ毎日家から追い出され、外で夜を過ごしていた。

 そんな日々を過ごしていく内、家族を失った事で傷ついていた俺の心は完全に壊れ、気づいたら叔父と叔母をボコボコにしていた。

 俺が余程酷い事をしたのか二人は精神を病み、通報を受けて来た警察の事情聴取の後は、そのまま施設に連れていかれた。

 俺は叔父達の家に戻り、独り暮らしを始めた。


 それから月日が流れ、今やもう高校生だ。

 と言っても、俺の今までの事情から、一人で授業を受けているのだが。

 靴を履き替えて教室に向かっていくと、途中で声をかけられた。


 「おはようございますっ、兄貴!」

 「ああ、おはよう、雷後」


 こいつは馬梨 雷後、俺の一つ年下の不良だ。

 制服は着崩していて、髪は明るい茶髪。

 ピアスはしていないが、軽そうな雰囲気を出している。

 こいつと出会ったのは、俺が高校一年生の時の帰り道。

 多数の不良にボコボコにされていた所を俺が通り掛かり、俺も絡まれたから反撃したら相手は全滅。

 それから、何故か俺の事を兄貴と呼んで勝手に俺の僕になっている。

 俺の事情を知っていても避けない、珍しい人間の一人だ。


 俺は少し雷後と話してから別れ、教室に向かう。

 教室に着き、扉を開けたその時、俺の視界が光で真っ白に塗りつぶされた。


 「え?」


 俺は戸惑いの声を発する事すら出来ず、意識を徐々に落としていった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ