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エルの殺戮はまだ続く  作者: 真田蓮斗
1/1

第1章〜トランテスタ編〜

初めての小説です。少し描写が下手だと思いますが、是非読んで下さいね!

異世界もので特別な力を持つ少年の成長物語です。恋愛要素やコメディも2章から入れて行きますので、好きな方は是非読んで下さいね!

挿絵(By みてみん)

《登場人物》

真田蓮斗

真田ソフィア(風魔法&蓮斗の母)

真田蓮二(剣士&蓮斗の父)

天城條

ジーナ・ヘルキャット(蓮斗のいとこ)

イヴァン・ヘルキャット

(ジーナの父 &ソフィアの兄)

アルミナ・ヘルキャット(ジーナの母)

オリヴァー・ロードナイト(校長)

ディラン・オリバウッド(剣術士)

シャドウ・レオンハルト

ノア・ブラウン



《目次》

1: 魔術教団

2: 奴らが来る

3: 勇気

4:剣士VS剣術士

5: 敗北

6: 精霊使い

7: Stalling〜時間稼ぎ〜

8: ポータル

9: 故郷(トランテスタ)

10:ヘルキャット一族

11: 魔法ランクB

12: 剣術

13: Feeling

14: 入学審査!



1:魔術教団

この世には殺人集団が存在する。

集団の名は『魔術教団』

教団の目的は、世界を支配する事。

だから教団は次から次へと人々を殺す。それはまるで狩りのようなものだ。獲物と狩人の関係・・・食う側と、食われる側。狩人は、当然獲物よりも強い。力がかけ離れすぎて抵抗しようにも抵抗できない。狩人は見つけた獲物は絶対に逃さない。彼らに見つかったら、絶対に生き残る事は出来ない。大人も子供も関係なく、躊躇なく殺していく。獲物に子供も大人も関係ないのである。

教団は、白火始の街や村を順番に襲い、一週間もしない内に白火始を滅ぼした。ただ1つの都市を除いて。白火始は人口の8割以上を失った。国が滅ぼされたのは、これが初めてだった。

殺戮が止むことはなかった。

『教団の殺戮はまだ続く』


2:奴らがくる


カンカンカンカーン!!

鐘の音で目が覚めた。

見張り塔にある大きな鐘だ。非常事態の時になるらしいが、何かあったのだろうか?


部屋を出て、リビングに向かった。

リビングには父さんと母さんがいた。

父さんは騎士団の防具を身につけており、手には剣を持っていた。父は剣士である。村の中では右にでる者は居ない、かなりの実力だ。

「蓮斗!今日は許すまで家をでるな」

いつもと雰囲気が違う父さんに驚き、何が起こっているんだと思った。

父さんに聞こうとしたが、すぐに出て行ってしまった。


「蓮斗、今起こっている事を話すから、落ち着いて聞いて。」

母さんが言った。

父さんもそうだったが、母さんもかなり焦っている様子だ。そうとうヤバイ事が起こっているんだと思った。

「荒石村に、魔術教団が現れたらしいの」

「荒石村...魔術...きょう.....だん...」

魔術教団は襲った所の住民を、皆殺しにすると言われている、人殺し集団だ。人々は皆、魔術教団を恐れている。それが荒石村に現れた。荒石村は、俺が住む龍鳥村(りうむら)の隣の村である。もうこの村にも来ているのではないかと、不安になった。


「この村には現れていないけれど、来た時の為に父さんは警備に行ったわ。」


母さんのその言葉を聞き安心した。

だが現れるのではないかと思うと、怖くてたまらなかった。


「魔法使いは結界を張る様に命令が出されているから、母さんも今から出かけるけど、父さんも言った通り絶対に家から出ないでね。」


俺はうんと頷いた。

母さんは、壁に立て掛けていた魔法の杖を持って出て行った。

母さんは魔法使いだ。だから俺は魔法使いとのハーフである。ハーフであっても魔法は使えるらしいが、なぜか俺は魔法を使う事が出来ない。魔法には5つの属性があり、魔法使いはどれか1つに属していて、生まれた時に専門の魔法使いが判断する事になっているが...。俺はどの属性にも属していないという結果がでて、魔法は使えないと判断された。かなり珍しいタイプであると言われたが、珍しいにもプラスの意味とマイナスの意味がある。どう考えてもこれは後者だ。


母さんが出て行ってから、少し時間が経った時、本棚の方を見ると、ふと魔法の本が目に入った。その本を手に取り、椅子に座った。

パラパラっとページをめくって行くと、

属性の記述があった。

魔法には、炎、水、土、雷、風の5つの属性があり、魔法使いはこの内1つ以上の属性の魔法を使える。2つ3つの属性の魔法を使える魔法使いもいるのだ。

もう少しページを進めると、「マナ」について書かれているページがあった。

マナをとは、簡単に言えば魔法を繰り出す時に使うエネルギーの様なものだ。魔法使いの体にはこのマナが流れている。

人によってマナの量が様々な為、くりだせる魔法の量も人によって差がある。

母さんに俺の体にもマナは流れていて、通常の人の数倍あると言われたが、魔法が使えない俺にはあまり嬉しく思えなかった。俺が魔法が使えないのは、どの属性にも属していないので、マナを体から出す時に、うまくマナの形質を変化させる事が出来ないのが原因だそうだ。

そしてまたパラパラとページをめくっていると、魔法使いの種類についての記述があった。

魔法使いにも色々なスタイルがあるのだという。一般的には杖を使って魔法を繰り出すが、他にも色々と魔法の繰り出し方があるのだと言う。例えば、マナを剣に流し込み、剣に特殊効果を与えたりできる、魔法使いと剣士の中間の役職の「剣術士」や、笛を使って魔法を繰り出す「笛使い」がいるらしい。その他にも色々と書いてあるが、少し見てまたページを進めた。

すると精霊について書いてあるページがあった。人間には精霊と意思疎通ができる人がいる。一般的には「精霊使い」と言われている。精霊を使って魔法を繰り出す事もでき、魔法以外でも色々な使い方が出来るらしい。精霊使いになるには、精霊に選ばれる必要がある。ちなみに母さんはこの精霊を使う事ができる精霊使いである。魔法同様俺は精霊も使えない。というか、精霊使いは遺伝するものではないらしい。精霊は使い主の死を感じる事ができ、それを感じると、次の使い主の元に行くか、人に仕えるのをやめる。その際に精霊に選ばれた者は、精霊使いになれるのだと言う。

かなりの時間本に集中していた。

俺は本を閉じ、本棚の元の位置に戻した。外に出るなと言われ、他にやる事がなかったので、他の魔法に関する本を探した。

「陽魔法...陰魔法...?」聞いた事がない単語の載った本があった。ちょっとした興味本位でその本を手に取った。そしてかなり昔に描かれた絵が載った表紙をじっと見ながら、さっき座っていた椅子に腰掛けた。表紙をめくるとそこには、予言のような物が書かれていた。

「後代に魔術の道に優れし1人の魔術師が現れるであろう。その者力を求め悪魔と契約を交わし、万人でも敵わぬ力を手に入れる。そして世を己の物にしようと世の国々を襲うであろう。そこに陽と陰の魔法が使えし2人現れ、魔術師の陰謀を止めるであろう。だがその後陽の魔法の者・・・」

ここで終わっていた。ページをめくると、これは300年前の予言者が残した予言だと言う事が書いてあった。また予言書は途中までしか見つかってないらしい。国々を襲うって・・・まさか魔術教団のことかな?


バタン!

玄関から誰かが入ってきた。

「蓮斗?」

母さんだ。リビングに入ってきた。

「何してるの?」

俺は咄嗟に本を隠した。だが、もう見られた後だったようで

「それ...陽魔法と陰魔法の本?」

俺はうんと頷いた。

「別に隠さなくったっていいのに」

母さんは笑いながら言った。

俺は顔を赤らめて、俺は隠していた本を出し、母さんの前で読むのは照れくさいと思い本棚にしまった。結局、陽魔法と陰魔法の事を知る事はできなかった。まあまた母さんや父さんのいない時に読もうと思った。

「もう結界は張ったから、指示があるまではここにいるわ」

「分かった」


外を見ると、ピンク色の結界が見えた。

これで魔術教団はもう村には入ってこられないのかなと疑問に思った。

母さんに尋ねた。

「人為結界じゃないから絶対に入ってこられないという事ではないわ」

「人為結界?」

「人が常に結界を張り続けるのが、人為結界。でも、人為結界を使えるのは、上級レベルの魔法使いで、人為結界は最低でも四人は必要だから....」


「母さんは上級の魔法使いなの?」


「私は上級で結界も作れるけど、この村の魔法使いは、下級や中級ばかりだから、この村では人為結界は作れないの」


少し不安になったが、その後人為結界でなくて結界石による結界も破るのは難しいと聞き少し安心した。


少しの間二人とも黙っていた。

ふと陽魔法と陰魔法の事が頭を過ぎった。本人で読むより、聞いたは方が早いと思い、母さんに尋ねようとした。

そのとき!

「カンカンカンカンカーン!」

今日2度目の見張り塔の鐘がなった。

「来た!」母さんが言った。

俺はまさかと思った。

恐れていた事態が起きたのである。

母さんは杖を持った。

「地下室に行きなさい」

そう言い、母さんは家を出て行った。

俺は今までに感じた事のない恐怖を感じた。窓から外を見た。

「結界が....」

結界に無数の魔法が打ち込まれていた。怖くなった俺は急いで地下室に向かった。


3: 勇気

私は急いで正門に向かった。ついに魔術教団が来てしまった。結界は大量の魔法で攻撃されていた。

でも、まだ結界は壊されてはいない。

結界石の結界は、かなり強い魔法で攻撃されると壊れる。小さなダメージが蓄積されて壊れるという訳ではなく、強い一撃を与えると破壊されるのである。

正門に着くと、村中の魔法使い、剣士達が集まっていた。そこに蓮二(蓮斗の父)の姿があった。

「ここを突破されたら、連中に村の侵入を許してしまう事になる!絶対にここを通すな!!」

「おお!!」

蓮二の声にみんなが答えた。

村に入れたらこの村は終わりだ。

絶対に食い止めないと!


「ソフィア!魔法使いのみんなに門の上から、戦闘をサポートするよう言ってくれ」

蓮二にそう言われ私は分かったと頷き、魔法使いのみんなに門の上に移動するように言った。剣士達は蓮二の指示で、結界の近くで待機していた。こちらはの剣士の数は30人前後、魔法使いは13人である。対して教団は約30人である。

教団は全員魔法使いである事を考慮に入れると、やはりこちらの方が不利だという事が分かる。

だが、この村には蓮二がいる。

蓮二は魔法を使う事が出来ないが、剣士としてとても優れているし、魔法使いとも互角、いやそれ以上に戦う事が出来る。私の知る剣術士にも勝ったことがある。

教団は結界への攻撃を絶え間なく続けている。だが、教団はまだ結界を壊せる様な攻撃をしてきていない。

結界を壊せる魔法攻撃は魔法ランクA以上の魔法である。魔法ランクとは、魔法の威力や、習得難易度を表している。

ランクは上からS〜Eである。


ランクAを習得出来るのは、上級の魔法使いなので、単純に考えれば結界を攻撃している教団の中には、上級以上の魔法使いはいないという事になるが、上級でも使えない魔法使いもいる為、全員が下級、中級だとと言い切る事は出来ない。

現に私は上級だが、Aランク魔法は使えない。あの中にも上級が混じってる可能性はある。

教団の攻撃は10分以上続いた。それでも結界は壊れない。その場に居る者全員が安心仕掛けたその時だった...

ずっと続いていた教団の攻撃が止まった。すると後ろから一人の男が現れた。

男は昔の白火始に存在していた『侍』の格好をしていた。侍はもう昔にみな剣士となっている。それなのに侍が・・・

男は剣を取り出した。いや剣ではない、刀だ!刀も侍と一緒に衰退して行ったものだ。まだ使ってる人がいたのか。男は刀を空に向かって伸ばした。

「あれは...?」

すると男の背中から赤いオーラの様な者が出てきた!

「あれは...マナだ!!」と1人の魔法使いが言った。そう言えば聞いた事がある。魔法使いで、マナを体全体からだし、通常以上の魔法力を出せる者がいる事を。

刀を持って、魔法を使えるという事は...

あいつは剣術士だ!

剣術士は剣にマナを送り込み、剣に特殊効果を与えたり、杖の代わりに剣を用いて魔法を放つ。よって接近戦、長距離戦が共に優れている。

オーラは男の背中から腕、刀にかけて広がっていく。そして刀がオーラに包まれた。男は刀を結界に向けた。

「バババババーーーーン!」

大きな音と共に急に視界が真っ白になった。あまりの眩しさに目を閉じた。目を開けると、目がぼやけていて何も見えない。段々見える様になっていく。完全に見えるようになった。そこには驚くべき光景が広がっていた。

「けっ...結界が....」

得体のしれない魔法によって、結界が破られたのだ。結界はまるでガラスの様にパリーンッ!と割れ、粉々になって落ちていった。

何の魔法かは分からないが、大きな音がするのと同時に急に視界が真っ白になり、気づけば結界が破られていた。

教団は歩いて、刻一刻と村に近づいて来ていた。魔法使いの中には、あんな奴に叶う訳がないと思っているのか、絶望を顔に出している人もいる。それもしかたない。剣術士で、あのレベルの遠距離魔法も使えるのだ。ここに居る魔法使いとは、実力が違いすぎる...

魔法使いだけでなく、剣士達も不安の顔を浮かべている。

「お前ら!!何をビビっているんだ!」

蓮二が叫んだ。皆が蓮二に注目した。

「蓮二...」

「ここを突破されたら村は終わりだ!我々が食い止めるんだ!ここで負けたらみんな死ぬ!家族や友人、この村をあいつらに殺らせてもいいのかっ!嫌だろ!

我々には皆を守る義務がある!ならば死ぬまで村のために戦え!!」

そうだ、結界が破られても、まだ負けた訳じゃない。ここで奴らを食い止める!そして、蓮斗を絶対に!

「みんな!目に光を灯せ!!」

蓮二の言葉でみんなの様子が変わった。

『殺らなかったら殺られる』

これが命をかけた戦いだ。


「お前らーっ!俺に続けーっ!!」

蓮二の声で結界付近にいた、剣士が魔術教団に走っていった。魔術教団が杖を構えた。走ってくる剣士達に向かって魔法を放つ。

「うわぁ!!」

魔法が次々に剣士達に直撃していく。

魔法のスピードは早すぎて、避けようと思っても簡単に避けられない。

こちらの魔法使いも遠距離攻撃を放つ。

私は杖を構えた。そして呪文唱えた。

「ヴォルテックス!!」

魔術教団の中心に風の渦が発生し、教団の5人を囲みこんだ。そして渦が強くなっていき、5人を吹き飛ばした。

教団の1回目の攻撃で、剣士の半分以上が倒れた。そして2回目の攻撃で蓮二が集中攻撃を受けた。だが蓮二の反応速度は速く、魔法を全て交わした。。まるで魔法を使うよりも先に魔法の来る位置を予測して動いているようだ。

蓮二が一番先に魔術教団の中に突っ込んでいった。次々に敵を倒していく。敵の攻撃を華麗に交わす。魔法使いは基本的に、中距離や遠距離の攻撃が中心である。よって接近戦であれば、一気にこちらが有利になる。ただ、あの剣術士を除けば。だが、剣術士の男は集団の後ろにおり、全く戦おうという様子は見せない。

蓮二に続き、次々に他の剣士も魔術教団に突っ込んだ。だが、もう剣士の数は10人も居ない。剣士達の猛攻が続き、魔術教団が次々に倒れる。だが魔術教団も負けずと魔法を繰り出す。接近戦では剣士の方が有利だが、魔法にも接近戦用の魔法がある。

1人の男が空に向かって杖を向け、魔法を放った。

「あれは...雷魔法!」

バーーン!!大きな音とともに空から雷が降り注いだ。

「あああああああぁぁぁぁぁ!!」

今のは雷のBランク魔法『ライジング』

次々に剣士に直撃した。また雷は味方敵を関係なく無差別に降り注いだ。魔術教団の中にも味方の攻撃で倒れる者がいた。そして蓮二の上からも雷が降り注いだ。だが、間一髪の所で避けた。

この攻撃により、蓮二以外の剣士が全員倒れてしまった。30人以上いた剣士達が、蓮二を残し全員倒されてしまった。

「嘘だろ....もう無理だ!!逃げろー!」

門の上にいた魔法使いの1人が逃げ出した。他のみんなも絶望の顔を隠せずにいる。

こちらが蓮二だけになると、教団の中の4人が四角形になり、蓮二と剣術士の男を囲むようにして立った。

まさか!!

「あれは...........人為結界!!」

まさか、上級レベルの魔法使いが4人以上もいるの?

4人は杖を構え、結界を作りだした。

蓮二は結界に閉じ込められてしまった。

結界石の結界は、一度に強力な魔法を打ち込めば破れるが、人為結界は結界に直接攻撃を加えても破れことが出来ず、術者の内、ひとりでも殺れば、結界が破れる。だが、術者は全員結界の中から結界を作っているため、外から止める事が出来ない。よって蓮二は完全に閉じ込められてしまった....

「蓮二....」


4:剣士VS剣術士

結界に囲まれてしまった。他のみんなも倒れてしまっている。だがまだ死んではいないはずだ。こいつらを倒してみんな助ける!

「そなた、かなかなかやるようでござるな」

男が声を発した。口調も格好も昔の白火始のものだ。こいつは一体。さっき刀を使って、魔法を繰り出していたから、恐らく剣術士だろう。あんな魔法を使える奴は見た事はない。魔法力で言うと、ソフィアの数倍以上だろう。剣術のレベルは分からないが、気を抜いたらやられる。俺が負けた瞬間、この村は終わりだ。『こいつを倒して絶対に村を守る』


「ここは絶対に通さない!!」

自分を振るい上がらせるために大きな声を出した。

「通らせていただくでござるよ」

そう言うと男の体から赤いオーラが出てきた。さっきと同じだ。オーラは徐々に拡大していき、拡大が止まった。

すると男が突然に襲い掛かってきた。

はやい!

振り下ろされる刀を剣で防いだ。

「そなた、剣士にしてはいい反応でござる」

そう言うと男がまた攻撃を仕掛けてきた。攻撃スピードが速すぎて、全く隙がない。

クソ!スピードもパワーも桁違いだ。このままだと遅かれ早かれ、殺られる!


男の攻撃が続く。それを交わしたり、剣防いだりするが、やはり全然隙がない。

だが今は避けるだけしか出来ない!

でも段々攻撃のスピードに慣れてきた。

攻撃が良く見える。

攻撃に意識の全てを集中させる。

すると、まるでここを攻撃にしろと言わんばかりに、剣の先から男の腕に掛けて、白い光が見えた。昔からたまにこの光が見える事がある。俺は無我夢中で光に沿って剣を振り下ろした。

バシィ!!

「ああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」

男の腕が地面に落ちた。男は痛そうに腕を抑える。

「ふっふっふ・・・」

男が笑い出した。

「認めるでござる。そなたは剣士のレベルではないでござる。ではそろそろ本気で行くでござる」

「つまり今までは本気じゃなかったってことか・・・」

俺は苦笑いして言った。

「ふっふっふ。ではそなたの名前を教えるでござる。セッシャは強いと認めた人から、名前を聞くようにしているでござる」

「俺は真田蓮二だ!」

大きな声で名前を叫んだ。

「真田蓮二殿・・・良き名です。ではセッシャの名前も教えるでござる。セッシャは天城條(アマギジョウ)でござる。」

アマギ・・・ジョウ・・・まさか!

「お前どこの国のやつだ?」

「現在は魔術教団でござるが、かつてはここ白火始に身を置いていたでござる」

やはりこの名は白火始の名だ。

「どうして白火始を襲う!お前らの目的は一体何だ!」

アマギジョウは笑った。そして俺の問いには答えようとしなかった。

「ではそろそろ戦いを再開するでござる。次の村にも行く時間も迫ってるでござるからな」

そう言うと男から出ているオーラが更に拡大していった。まるでオーラが意思を持ち動いているかのようである。そしてオーラが剣全体を包み、剣から炎が出てきた。

「じゃあ、もう終わりにするでござる」

再び男が襲いかかってきた。先ほどのスピードを遥かに超える早さだ!

男の刀が迫ってきていた。俺はそれを剣で防ごうとした。しかし!

パリーンッ!

俺の剣が破壊されていた。剣の破片が辺りに飛び散る。

「剣が・・・うぐっ!」

アマギジョウの刀が俺の心臓を貫いた。

そして勢いよく引き抜かれた。俺は倒れた。

「真田殿・・・終わりでござる」

「れんじーーーっ!!!」

ソフィアの声が聞こえた。

もう動けなかった。意識も朦朧としてきた。

みんなを・・・村を・・・守れなかった。本当にすまない・・・

ソフィア・・・蓮斗を・・頼んだ。


5: 敗北

「蓮二が...死ん..だ...」

門の上にいた魔法使いは驚きと、ショックを隠せない様子だった。村で一番強い男が、殺された。これは、村の敗北を意味していた。魔法使い達は逃げ出した。


急がないと!蓮斗がっ!

蓮二!!あの子だけは、あの子だけは

「絶対に守る!」

きっと蓮二もそれを望んでいる!

こうして龍鳥村は魔術教団の進出を許してしまった。


私は急いで家の地下室に急いで向かった。あの子だけは絶対に殺させない!


地下室に居ても見つかる可能性がある。絶対に助かる方法を考えないと!


一番確実なのは、この村から出る事だ。

村の山の頂上には、ポータルがある。ポータルを使えば、他国に逃げることが出来る。でもマナを持たない人はポータルをくぐれない。だから村の人達をそこから避難させる事はできない。でも蓮斗は魔法は使えないけどマナはある。ポータルを使って逃げる事が可能だ。


家に着くとすぐに地下室に向かった。

だが地下に蓮斗の姿はなかった。

蓮斗.....どこに行ったの?

人の気配を感知する魔法を使った。

目を閉じて、気配を感じることだけに集中する。だが気配はない。

「蓮斗っ!」

心配になり名前を呼んだ。

「母さんっ!」

蓮斗が飛びついて来た!!

驚いて気を失いそうになった。

蓮斗は、階段の陰に隠れていたのだ。

全く気配を感じなかった。そう言えば、昔から、隠れるのが上手かったような気がする。そういう能力でもあるのだろうか?

もしかしたら、ここにずっといた方が、安全なのかもしれないと一瞬思ったが、

魔術教団の能力を持ってすれば、見つかるかも知れないと思ったので、脱出する事にした。


私は、金庫の中のお金を出来るだけ持ち、蓮斗を連れて家を出た。


家は正門から、相当離れた場所にある為、まだここまでは来てないらしい。


これなら逃げられる!そう思いつつも、警戒を怠ってはダメだと思い、急いで山の方に向かった。


6:精霊使い

母さんが戻って来てくれて、とても安心した。ただ魔術教団や父さんの事が凄く気になっている。母さんが出ていった後、外を見たら、結界に大量の魔法が打ち込まれていたのが見えた。とても不安になった。でも母さんの急いだ様子を見て、聞き出そうにも聞き出せない。

ただ、母さんは山の頂上に行くと言っていた。昔あの山に行ったら迷子になって母さんに迷惑を掛けてしまった事があるが、今はどうでも良い。とにかく母さんの言うように、山に向かおう。


母さんが俺の手を握った。すると周りに風が吹き、段々強くなって行く。

すると、母さんが走り出した。俺もそれに付いて行く。母さんは風の魔法使いだ。その為すごく足が速い。そこだけは俺も似て、走るのは得意な方だ。

だが、得意と言っても、魔法を使って加速して行く母さんには敵わない。

「かっ!かあさん!早すぎる!!」

流石に足が付いてかなくなったため、少しだけスピードを落としてくれた。

あのスピードで走り続けたら、何本あっても足が足りないと思わせる程のスピードだった。


山の入り口に入った。

山道を走ると危険だから、走るのをやめて、早歩きで進んだ。

母さんは周りを常に気にして、凄く警戒している様子だ。


随分山奥まで来た。

「はぁ、はぁ、母さんっ、後どのくらい?」

息が苦しすぎて死にそうだ。

それに比べ母さんは、荒い呼吸はなく、平然とした顔をしている。

「後半分くらいかな?」と苦しそうな俺を見て苦笑いを浮かべて言った。

流石に可哀想だと思ったのか、腰を下ろして背中をこちらに向けて

「乗りなさい」と言った。

俺はもう次期12歳になるのにおんぶかよ!と思いつつも、もう歩く力は残ってないと分かっていたから、照れ臭かったが母さんの背中に乗った。

「よいしょっ!」何だか懐かしい感じがする。前にこの山で迷子になった時も、おんぶして帰ってもらっていた事を思い出した。


母さんは俺をおぶって、笑顔を浮かべた。そして歩き出した。

さっきよりも速いペースで進んで行く。

そしてしばらくして大きな広間に出た時だった。

「見つけたでござる」

男のものと思われるが聞こえた。

後ろを振り向くと、刀をを持った、変わった格好をした男が立っていた。そしてなぜだか左腕が切り落とされている。


「逃げようとしても無駄でござる。セッシャたちからは逃げられないでござる」

母さんは男を見て驚いた様子で言った。

「あなたは!どうして分かったの!?」


「かあさん!!この人は、誰なの!?」

まさかこいつが魔術教団!

かあさんは俺を下ろした。

「こいつに父さんが殺された・・・」

こいつが・・・父さんを・・・

「何言ってんだよかあさん!そんな訳ないじゃないか!?」

そう言ってもかあさんはそれ以上は何も言わなかった。

まさか本当に父さんが・・・

「ではもう死んでもらうでござる」

そう言うと男は襲いかかってきた。

このままじゃやばい!でも体が動かない。しっ、死ぬっ!

「ペトラ!!」

かあさんの声が見知らぬ名前を叫んだ。

すると目の前にシールドの様なものが現れた。

「間一髪だったデサね、ソフィア」

目の前に現れたのは小さな狐だった。

それに言葉を話している。状況が理解出来なかった。

「お主はまさか蓮斗デサか?」

俺の事を知っているのか?でも俺は全く見たこともない。

ごくんっ!と唾を一回呑み込んだ。

「あんまり状況読み込めてないみたいデサが、とにかく今は逃げるのが先決デサ。あんなに殺気立ったおじさんは久しぶりに見るデサから」


「精霊様でござるか、悪いのですが、邪魔をしないでもらえぬか」

せいれい?そうかこのペトラと呼ばれる狐は精霊なのか。ようやく状況が飲み込めてきた。そしてこのシールドを出したのもこのペトラなのか。

シールドは半球の形で、とても強力なため、外の男は入ってこられなくなっている。

「蓮斗!今からシールドを破るから、敗れた瞬間、走って逃げるのよ!絶対に振り向いちゃいけない!とにかく逃げるの!あとこれを持って行って!」

そう言いかあさんはお金などが入った袋を渡してきた。

「母さんは?どうするの?」

「ここで時間を稼ぐ!そのあい」

「いやだよ!母さんも一緒に!!」

そう言うと母さんは何も言わずに、俺を抱きしめた。そして最後におでこにキスをして、俺の顔を見て笑った。

「ペトラ!蓮斗だけだとポータルは開けないと思うから一緒に行ってあげて。」

「了解デサ!」

「どれだけ時間が稼げるか分からないけど、やれるだけやるから」

「おう!ソフィアなら出来るデサ!」


「待って!!母さんを残して俺だけで逃げる事なんて出来ないよ。こいつは父さんを殺したんでしょ!だったら母さんも殺されるかも知れないんだよ?

ねえ!!かあさんっ!!」

「蓮斗...」

目から熱い物が流れて来るのが分かった。母さんを見ると、母さんも涙が出るのを堪えている様子だった。

「蓮斗!!母さんは、蓮斗の事がこの世で一番大切。一番大好き!蓮斗だけには絶対に死なれたくない!だから私は...私はあなたを守る為なら、蓮斗の事が守れるんだったら、何だってする!死ぬのが分かってても、私は蓮斗を守る!だから、蓮斗...絶対に生き残って、絶対に!絶対に!!」


俺は母さんに抱きついた。そして涙を拭いて、母さんに出来る限りの飛びっきりの笑顔を見せ、母さんに背を向けた。

「母さん、俺も大好き」


「じゃあ、シールドを破って!」


パラーンッ!シールドが破れ、パラパラと舞い、地面に落ちるより前に消えた。


俺は山頂目指して駆け出した。母さんが時間を繋いでくれる。俺は絶対に生き残る。大好きな母さんの為にも。


7: Stalling~時間稼ぎ~

シールドが壊れたのと同時に、蓮斗が走り出した。それをペトラも追いかける。壊れても逃げずにここから動かないのでは無いかと、少しでも考えた自分が恥ずかしかった。あの子は本当に強い子だ。

蓮二、私とあなたの子は強い子に育ったよ。本当に、本当に!

「逃げてしまったでござるか、しかしすぐ殺しに行くでござるよ」

そう言う男に対して

「絶対にここは通さない!!」

男は笑った。不吉な笑いだった。

「それでは始めるでござる」

そう言うと男の背中から、あの時と同じ赤いオーラが出てきた。

そして徐々に拡大、拡大が止まった。

くる!

男が襲いかかってきた。やっぱり速い。

魔法を使って避ける。魔法を使ってこんなにギリギリなのに、蓮二はよく避けていたなと思い、やっぱり蓮二は凄いと思った。

次の攻撃がくる、これも魔法を使って避ける。今の攻撃も相当なものだが、刀にマナを送っていない。マナを送ってからが勝負だ!

その後も攻撃が続いた。

避けているだけではダメだ。攻撃しないと!杖を構え呪文を唱えた。

「タービランス!」

空気が収縮され、高密度の風が光線上になって男に向かって行く。

だが簡単に交わされた。その後タービランスを連続で出したが、全て交わされた。タービランスは通用しない。なら!

「ヴォルテックス!!」

男の周りに風の渦が発生した。

「ふっふっふ」

男が笑い、刀を一振りした。

すると風の渦が消えた。

「風でお遊びでござるか?」

男が笑って言った。

この男にBランク魔法は通用しない。レベルが・・・違いすぎる・・・

「ではこちらからも行くでござる」

男が刀を天に向かって伸ばした。

そして何か呪文の様なものを唱える。

すると刀にマナが流れ出した。そして刀からは、熱くそびえ立つ炎が出てきた。

「行くでござるよ!」

再び襲いかかってきた。やはりさっきよりも速い。魔法で避ける。刀が空を切りながら、炎を放つ。

男が再び襲いかかってくる。それをまた魔法を使い避ける。そして杖を構え呪文を唱えた。

「ヴォルテックス!」

ヴォルテックスだけではまた止められる。私は足にマナを流し込み、男を囲む様に走った。どんどん加速していく。杖をからも風を放出していく。そしてより大きい風を起こす。するとさっきよりも大きな巨大な渦が起こった。

男が剣を振るう。だが竜巻は消えない。

成功だ!

渦から離れ、杖を使い、渦の強度をあげる、男は何もできずに渦の中にいる。男がどんどん上に上がっていく。一番高いところまで行ったところで、渦を消す。男は30メートル以上の高さから落ち、地面に叩きつけられた。かなりの威力だ!

「ふっふっふ」

男が笑いながら立ち上がった。

「嘘・・・でしょ・・・」

ここまで威力をあげても効かないなんて!

「Bランク魔法をAランクレベルにまで威力を上げるとは、凄いでござるな。

こんな小さい村で2人も凄い方と出会えるとは思っていなかったでござる。

誇りに思うでござる、そなたには特別に名誉ある殺され方をさせてやるでござる」

名誉ある殺され方・・・

「その前に、名を教えてくれでござる。強い方の名前はいつも聞くことにしているでござるよ」

恐る恐る口を開いた。

「真田...ソフィア」

「ほう、蓮二殿とは夫婦と言う関係でござるか?そしてあの子はお子さんでござるか」

「そうよ」

「そうでござるか」

そう言うと男が刀をこちらに向けた。

「終わりにするでござるよ。ソフィア殿」

なんだかわからないけど、まずい...

ピカッ!周りが激しい光に包まれた。

私はその瞬間、上半身に違和感を覚えた。お腹の辺りが熱い!どうなってるの!?また強烈な吐き気がする。気持ちが悪いし、何よりお腹が..熱い!

徐々に視力が回復し、段々お腹が見える様になってきた。私は自分の目を疑った。上半身に直径20㎝ほどの穴が空いていたのだ。私は倒れ込んだ。

男は倒れている私をまたいで、蓮斗の方へ向かっていった。

「絶対に蓮斗だけは....絶対に.....」

蓮斗だけは絶対に!絶対に守る!

体からマナが溢れ出しているのに気づいた。オーラとなって体外に放出されていた。こっこれは!あの男と同じだ。

力が溢れて来るのを感じた。腕を男を目掛けて伸ばす。

ぜったいに蓮斗には近づけさせない!

腕にマナが集まるのが分かる。今までにない高密度のマナだ。魔法使いの階級で3つの階級を超える、超級が存在する。超級ランクになると杖などを使わず魔法が放てる。杖は呪文を聞き取ると、送り込まれたマナを形質変化させ、魔法を繰り出す。でもその操作を自分だけで出来る人がいるのだ。マナは杖を通る間に、僅かに杖に吸収されてしまい、魔法の力が落ちる。だが腕から出すことによって魔法を劣化させず、最強の魔法力が出せる。

残りの全ての力を使って、男に向かって魔法を放った。

凄まじい威力の風魔法だ。風が螺旋状になって、まるで刃物が激しく擦り合わされる様な音を立て、魔法が男に向かって進んで行く。このまま行けば、上半身直撃で一撃で殺せるような威力である。

だが男はそれに気づいた。男はそれを避けようとしたが、男よりも魔法のスピードが優っていて、男は避けきれず、右腕に直撃した。螺旋状の風は、男の腕を抉る(えぐ)ようにして切断した。

バタンッと音を立て、男の残る右腕は地面に落ちた。

「あああああああぁぁぁぁぁ!!!」

男は両腕を失った。そしてこちらに向かってきた。

「とっとどめを刺しておくべきだったでござる。こんな体ゆえ、あなた達のお子さんはもう諦めざるを得ないでござる。だが、次は殺すでござるよ」

そう言い男は村の方に帰って言った。

やった。蓮斗を守れた。蓮斗・・・

蓮斗、蓮斗、蓮斗、蓮斗・・・蓮斗!!

涙が出てきた。もう会うこともできないんだね。私と、蓮二の蓮斗...

蓮斗・・生き延びて!強くなりなさい!

魔術教団に負けないくらい強くなって!

強く生きて!

「蓮斗っ!」

目を閉じる。目の前に蓮斗と蓮二と私が幸せそうに暮らす様子が浮かび上がってきた。そして段々暗くなっていく。視界が真っ暗になった。蓮斗・・・


ソフィアはゆっくりと息を引き取った。


8:ポータル

俺は走った!走り続けた!母さんの為にも、絶対に生き延びる!

山の山頂に着いた。そこには大きな門があった。

「これが母さんが言っていたポータルか」

ポータルを見て言った。

「蓮斗!ポータルを開くから周りを見るデサ!」

そう言われ俺は周りをみた。山頂からだと村が良く見える。村は炎の海の様になっていた。

「これが...魔術教団...」

もう村は滅んだ。一瞬で・・・


「蓮斗、ソフィアがやられたデサ・・」

「母さんが・・・」

覚悟はしていたけど、母さんが殺された。言葉がでない。悲しいなんて言葉では表しきれない。寂しさ、悲しさ、悔しさ、憎さ色んな感情が複雑に混ざっている。

「おいら、蓮斗と一緒に行くデサ!」

ペトラが言った。精霊は主人が死ぬと、次の人に就く。この時選ばれた人は、精霊使いになれる。ペトラに選ばれ、俺は精霊使いになった。

「蓮斗!ポータルが開いたデサ!」

「うん」

ポータルを潜る前にもう一度村を見た。俺は心の底から魔術教団が憎いと思った。大切な村を、父さんや母さんを...

俺は絶対に魔術教団を許さない!

俺が魔術教団をぶっ潰す!!

強くそう誓い俺はポータルを潜った。



9: 故郷(トランテスタ)

挿絵(By みてみん)

「着いたデサ!」

「ここは...」

ポータルを抜けた先には見たことのない世界が広がっていた。

「ここがソフィアが生まれ育った、

『トランテスタ』デサ!」

「トランテスタ・・・母さんが生まれた国・・・」


母さんは白火始じゃなくて、他国であるこのトランテスタ出身の魔法使いである。母さんから聞いた事はあるが、実際に来たのはこれが初めてだ。こちらのポータルも山の山頂にあるようだ。山の上から大きな都市が見えるが、建物も雰囲気も白火始とは全然違った。凄く綺麗な都市だ。

「あれがこの国の中心部、シェンドラシティデサ。この国は世界で一番大きくて、魔法使いの能力も一番の国デサ!」

「そうなんだ」

「見るデサ」

そう言いペトラが指さした方には、とても大きな城の様なものがが見えた。

「あれが『魔法技術・魔術訓練学校』デサ」

「魔法...魔術...訓練 学校?」


「その名の通り、魔法使いの育成学校デサ。ソフィアもあそこに通ってたデサ」


「母さんが通っていた学校か」


「蓮斗も多分あそこに行く事になるデサ」

あそこは魔法を学ぶ場だ。魔法を使えない俺では言っても仕方ない。俺はそれをペトラに伝えた。

「何で魔法が使えないのかは分からないデサが、まだ使えないと決まった訳じゃないデサ。現にマナはあるデサから」

そうだ。まだ魔法を使う事を諦めちゃダメだ。

「ペトラ、俺頑張るよ」

「おう!おいらもサポートするデサ!」

「ありがとう」

魔術教団と戦うなら、魔法は必ず必要になる。魔法を使えないと...どうにもならない。あの村最強の剣士だった父さんも、あいつには敵わなかったんだ。

魔法がないと.....


「あの街に、ソフィアが昔住んでいた家があるデサ、まずそこに向かうデサ」

俺は頷き、ペトラに着いていった。


山を下り、平地にでた。段々街が近くに見えてくる。山の上で見た時よりも凄く大きく感じられた。

「大きい・・・」

「ここは世界最大の都市デサからね、あと全てにおいて世界の最先端デサ」

凄い所に来たんだなと改めて思った。

「ソフィア・ヘルキャット」

突然ペトラが言った。俺の頭の中にクエスチョンマークが飛び交った。そんな俺をみたペトラは言った。

「ソフィアの昔の名前デサ、まだ白火始に行く前の名前デサ。ヘルキャットって言う、この国でも名門中の名門の一族が、ソフィアの実家デサよ。君の母さんは本当に凄い魔法使いの一族なんデサ」

初めて聞いた。名門の魔法使いの一族か。

街の門が段々近づいてきた。門の前には見張りの魔法使いが2人いた。

門を潜ろうとした。

「おい!お前!止まれ!この国の者ではないな!何者だ!」

門を潜ろうとしたが、見張りに足止めを食らった。

見張りの顔はとても掘りが深く、鼻が高くて、白火始の人とは違った顔付きをしていた。母さんもそうだったが、やはり他国の人は顔が全然違う。俺は完全に白火始顔な為、見張りによそ者だと思われたらしい。というかよそ者だ。


見張りへの対応に困っていると、ペトラが割って入ってきた。

「白火始から来たデサ」

「これは精霊様!そうですか白火始から」

「白火始に魔術教団が現れたデサ」

「魔術教団が!」

「おいらたちの村にも現れ、私が知る限り、2つの村が襲われたデサ。そしておいらたちはポータルを使い、ここに避難してきたデサ」

「そうでしたか、ご無事で何よりです。それと、魔術教団についての情報を提供して頂きたいと思ってあるのですが、少しお時間良いですか?」

その問いにペトラが答えた。

「この子を送り届けてからでもいいデサなら」

「分かりました。では話を通して置きますので、時間が出来ましたら、

『魔術教団対策本部』までお越し下さい。」

ペトラは分かったと返事をした。

「お時間取らせてしまって申し訳ございませんでした。どうぞお通り下さい」


こうして無事シェンドラシティに入る事が出来た。

街に入り、街を見渡したが、やはり雰囲気が全然違った。道には人通りが多く、エルフや亜人といった人達の姿もあった。昔龍村に黒い肌で白い髪の、ダークエルフとのハーフの子が住んでいた。エルフを見るのはそれ以来だ。そのハーフエルフの子は、魔術教団に住んでいた村を襲われ、他国から龍鳥村に避難してきた子だった。でも村のみんなからその子とその子の家族が、疎外されていたのを覚えている。そしてその子の家族は龍鳥村に来て1年もしないうちに村を出て行った。

周りの人々がペトラを凄く珍しそうに見ているのに気づいた。さっきもそうだったが、精霊様と呼ばれ、ペトラが出て来ただけで、街にも入る事が出来た。

「ペトラ」

「なんデサか蓮斗」

「どうしてペトラはこんなに注目されてるの?」

「あーそれはでさね、おいらが精霊だからデサ」

分かりきっている事を答えられた。

「どういうこと?」再び質問を投げかけた。

「蓮斗はソフィアがおいら以外の精霊を使っているのを見た事があるデサか?」

そう言えば、赤い光や青い光の様な物と何か話をしているのを見た事があった。

「うん見た事あるよ」

「その精霊はどんな姿だったデサか?」

「光の玉見たいな感じだった」

「そうデサね。でもそれは微精霊って言うんデサ」

「微精霊?」

「そう、その微精霊がたくさん集まると色々な生き物の形になって現れる。それが精霊デサ。精霊は微精霊とは違って、簡単に意思疎通が出来るデサ。あと精霊は凄く珍しいんデサ」

自分の事を珍しいと言うのはどうかと思ったが、それは口には出さなかった。

かなり歩いた。周りは建物が少なくなり、向こうに大きなお屋敷が見えた。凄く立派なお屋敷だ。

「あそこがヘルキャットの家デサ」

ペトラはお屋敷を指差して言った。

あの大きなお屋敷に、昔母さんは住んでいたのか・・・


家の前には大きな門があった。そこを潜り抜け中に入った。

広い庭が広がっていた。大きな噴水や大お花畑もあった。

「すっげー!」

あまりの凄い光景に大声が出てしまった。玄関の扉の前に着いた。

「蓮斗、ノックするデサ」

ペトラに言われるがままに、俺は扉をノックした。誰も出てくる気配がないので、もう一度ノックした。今度はさっきよりも強く大きな音を立ててたたいた。

すると大きな扉がゆっくり開いた。

そこには自分と同じくらいの歳であろう女の子が立っていた。


10:ヘルキャット一族

扉の向こうに立っていた子の髪は、綺麗な金髪で肌は綺麗な白色だった。まるで母さんのようだ。

「あの、どちら様ですか?」

女の子が言った。

「あ、えと、真田蓮斗と言います」

「さなだ.....れんと?すみません、聞いた事がありません」

女の子がそう言うと、またペトラが割って入ってきた。

「この子は、ソフィア・サナダ・ヘルキャットの息子デサ」

「ソフィアさん?確かに父の妹さん」

女の子は突然現れたペトラに驚いた様子を見せながらそう言った。

「そう!この子はイヴァン・ヘルキャットの妹のソフィアの息子の真田蓮斗デサ!」

そうペトラが言うと女の子は、俺たちに少しここで待つように言って、家の中に戻って行った。

ペトラの話によると、あの子の父さんは、母さんのお兄さんだから、あの子と俺はいとこ同士という事になる。

しばらくして女の子は1人の男の人を連れてきた。

「君が真田蓮斗君だね」

その男の人が言った。

「はい、そうです」

「会いたかったよ。まあ上がりなさい」

そう言われ俺は中に入らせて貰った。

そして男の人と、女の子に着いて行き、一回の奥にある部屋に入った。

中には大きなソファがあった。おそらく客間だろう。

「まあ座りなさい」

そう言われ、俺はソファに腰かけた。とても柔らかく、いかにも高級という感じだった。机を挟んだ向こう側のソファに、男の人と女の子が腰かけた。

そして3人が座ったところで、男の人が話し始めた。

「私は、イヴァン・ヘルキャット。この子はジーナヘルキャットだ」

「はい。よろしくお願いします」

そう言い、俺は一礼した。

ジーナと言う女の子も笑顔を見せ、礼をしてくれた。その顔は、先ほどまでの無愛想な感じは全くなく、とても優しそうである。

「君は真田蓮斗、ソフィアの息子さんだね?」

尋ねられ、そうですと答えた。

「そうか。もう聞いていると思うがソフィアと私は兄妹で私が兄貴だ。だから君とジーナは言うなればいとこだ」

「よろしくね、蓮斗」

ジーナがそう言った。俺もよろしくと返した。ジーナがこちらに向ける笑顔はとても素敵で、少し自分の顔が赤くなるのが分かった。イヴァンは少し笑みを浮かべ更に質問をしてきた。

「ところで、どうして1人でここに来たんだい?後、ペトラの姿がないみたいだが・・・」

そういえばいつの間に居なくなったんだ?

「ペトラを知ってるんですか?」

「あー、ジーナから真田蓮斗という男の子と精霊が来てると聞いて、ピンと来たんだよ。まあそれはいいからどうしてここに来たのかを教えてくれ」

そう言われ、俺は白火始に魔術教団が現れた事や、ポータルを使って逃げて来た事を話した。あと、母さんと父さんが殺されたことも。

それを聞いたイヴァンさんは、少しの間黙っていた。すると立ち上がり、こちらに背を向け、窓から外を眺めた。イヴァンさんの目からは涙が流れているのが見えた。しばらくした後、イヴァンさんはこちらを見て口を開いた。

「よくここに来てくれた。無事で良かった」

そう言うとイヴァンさんは出口の方に向かった。そして出る前に、他に行く当てがないならここに居てもいいと言ってくれた。それを聞き俺は感謝の言葉を言った。それを聞くとイヴァンさんがジーナに、俺を部屋まで案内するよう言い、部屋を出て行った。

ジーナの方を見る。ジーナはこっちを見てニコニコしている。

「じゃあ部屋いこ!」

そう言いジーナは俺の手を取り、部屋まで案内してくれた。


11:魔法ランクB

部屋に着くとジーナは、ベッドメイキングの手伝いをしてくれた。そして果物が入ったカゴを置いて、おやすみと一言言い、部屋を出て行った。外はいつのまにか真っ暗になっていた。俺はお腹が減っていたので、カゴからりんごを取り、それをかじった。りんごを食べ終えると灯りを消し、ベットに入った。

そして今日の出来事を思い出した。

今日は人生の中で一番色んな事が起きた日だった。村に魔術教団が現れ、それに父さん、母さんが殺され、村のみんなも殺されて、村が壊滅した。

涙が出てくるのがわかった。昨日までは一緒に居たのに、昨日まで、今日の朝までは一緒だったのに、今日1日で全てが変わってしまった。もう母さんと父さんは居ない。涙が止まらなかった。呼吸も荒くなってきた。あたり前だと思ってた。母さんがいて、父さんがいて、村のみんながいて、それがあたり前だと思っていた。それがたった1日で。やっぱりまだ気持ちが整理できていなかった。会いたい、もう一度で良いから、会いたいよ・・・母さん・・・父さん。

泣いていると急に抱きしめられた。

泣いていて気づかなかったが、誰かが入って来ていたようだった。暗くて誰か分からなかったが、その人は俺を優しく抱きしめてくれた。


いつの間にか寝てしまっていた。強い日差しが部屋に差し込み、それで目が覚めた。ベットから出ようとしたが、ベットに他に誰かが入っているのに気づいた。布団をめくるとそこにはジーナがいた。昨日の夜、俺を抱きしめてくれたのは、ジーナだったようだ。

俺は寝ているジーナにありがとうと言い、ベットから出た。そしてジーナに布団をかけてあげた。ジーナの寝顔を眺めた。やはりジーナもトランテスタの顔付きをしている。凄く綺麗な顔だ。血が繋がっているからか、少しだけ母さんに似ているとも思った。

ジーナから離れ、窓から外を見た。窓の外に見える庭は、ここから見てもやはり立派な庭だ。


「おはよう」

振り返るとジーナも起き上がって居た。

俺はあいさつを返した。

「じゃあもう朝ごはんだと思うから、行こ!」

ジーナは俺の腕を引っ張り、俺たちは部屋を出た。

一回に降りると、ご飯のいい匂いがしてきた。今思えば、昨日は朝ごはんと、寝る前のりんごしか食べていなかった。だからとてもお腹が減って居た。

「おはよう蓮斗!」

後ろから消えが聞こえた。そこにはペトラがいた。

「ペトラ!戻って来てたのか!」

「うん昨日は、蓮斗を送り届けてからすぐに、本部に報告しに行ったからね。

何も言わずに居なくなってごめんね」

ふとジーナを見ると、ジーナはペトラに興味津々ようだった。2人はお互い自己紹介した。そしてそのあと3人で食卓に向かった。食卓に入ると、そこには20人以上の人達が居た。

「大家族だな」

「ここにいるのはみんなヘルキャット家の人達だよ」

ジーナがそう教えてくれた。

凄い。これが名門か。

俺たちは席に着いた。とても豪華な食事が並んで居た。まるで何かのお祝いをしてるみたいであった。

一族のみんなは俺を見て、珍しそうな顔をしている。

「あれ?あなたが真田蓮斗くんね?」

席に後ろから女の人の声が聞こえた。

振り向くととても綺麗な女の子人が立っていた。

「あ!お母さん!」

ジーナはその女の人を見てそう言った。

「2人ともおはよう」

俺は挨拶を返した。

「私、ジーナの母のアルミナ・ヘルキャットです。よろしくね」

そう言うとアルミナさんはイヴァンさんの隣の席に座った。イヴァンさんと目が合い、俺は一礼した。イヴァンさんは笑みを浮かべた。

それにしても凄く優しそうなお母さんだ。ジーナともとても仲睦まじい感じがした。


「では皆さん、いただきましょう」

イヴァンさんの合図で食事が始まった。

見た目だけでなく、味も凄く美味しかった。凄くお腹が減って居たため、もの凄い量を食べる俺を見て横の席にいるジーナがクスクスと笑った。

食事の時間が終わり、俺は部屋に戻った。そしてジーナも一緒に部屋に入って来た。

「蓮斗って何属性の魔法が使えるの?」

「俺さ、魔法使えないんだよ」

俺は苦笑いを浮かべ答えた。

「え?使えないの?」

ジーナは驚いた様子で言った。

「うん、どの属性にも属してないんだ。母さんは魔法使いだけど、父さんは違うからハーフなんだよ。普通はハーフでも魔法は使えるし、マナもあるんだけど、なぜか使えないんだ」

それを聞きジーナは

「ハーフなんだ。マナがあるのに...どうしてかしら」と言い、俺の体をジーッと見つめた。そして再び口を開いた。

「何でか調べて見たいけど、まずは家を案内するわね」

そう言いジーナは俺の腕を取った。


ジーナは家を丁寧に案内してくれた。

図書室やトイレ、お風呂など、色々なところを案内してくれた。やはりどの部屋も相当大きい。


最後にジーナは中庭に連れて来てくれた。

「ここは....」

「ここはヘルキャット家の魔法訓練場だよ」

凄い広い場所だ。ヘルキャット家はここで魔法の訓練をするのか。

魔法を当てる大きな的がいくつか並んだところや、人型の人形が並んだ場所など色々とあった。


「おお!すっげーーーーー!!!」

ジーナは興奮している俺を見て、またクスクスと笑った。

するとジーナは俺の手を取って、倉庫に連れて行ってくれた。

「すっ、すっげぇ・・・」

倉庫には、たくさんの杖や剣など、その他にも色々な武器が揃っていた。

「ここには、歴代のヘルキャット一族が使っていた武器がたくさんあるのよ」

ヘルキャット一族の歴史が詰まった場所という事か。本当にすごい。

剣が並んでいる所を見ていると、1つの剣が目に止まった。何故か分からないが、その剣に只ならぬ何かを感じた。ずっとこの剣を見てる俺を見てジーナが言った。

「その剣は三代目ヘルキャットが使っていた剣よ。三代目は歴代の中でも一番優れた魔法使いだったのよ。剣に選ばれた者、『剣聖』って言われてたの」

「剣に選ばれた者・・・剣聖」

「でも第一次世界対戦で、白火始の剣術士に殺されちゃったの」


第一次魔法界対戦、父さんに話を聞いたことがある。約300年前に起こった。歴史上一番大きな戦争だ。300年前、世界は2つに割れていた。トランテスタと白火始。この2つの国の間で大きな争いが起きた。世界の人々の半分以上がこの戦争によって命を落とした。戦争に勝ったのはトランテスタで、敗れた白火始は徐々に衰退していき、現在トランテスタが一番大きな国となっている。


「その白火始の剣術士は、国でもかなり実力のある剣術士で、三代目同様、剣聖の名を持っていたの。おそらく歴史上最強の剣術士」

白火始にそんな剣術士がいたなんて。

「その剣術士の名前は?」

俺はジーナに尋ねた。

「分からないけれど、白火始でもかなりの名門じゃないかしら。じゃあ、ちょっと外に出て」

そう言うとジーナは杖を持ち、外に出て行った。それに続き俺も倉庫を出た。


外に出ると、ジーナが杖を的に向かって構えていた。

「私ね。水の魔法使いなの。見てて」

そう言いジーナは目を閉じた。

そして呪文を唱えた。

「スパーリング!」

すると杖の先が水が現れ、光線状になり、的に向かって行った。それが的の丁度真ん中に直撃していた。

「今の魔法はスパーリング」

ジーナがそう言った。

「スパーリング・・・」

「そう、スパーリング。魔法ランクEの水魔法なの。ランクEだから殺傷性はほぼゼロなの。でもねここでは出来ないけど私、Bランクの魔法が使えるの」

「魔法ランクB!?」

ジーナがBランク魔法が使えると聞いて、驚きのあまり大きな声が出てしまった。なぜなら母さんも魔法ランクBまでの魔法しか使えないと言っていたからだ。それなのにジーナは...

「ジーナはあの魔法訓練学校に通ってるの?」

俺はジーナに尋ねた。するとジーナは

「まだ行ってないの。魔法訓練学校は12歳からだから」と言った。

「ジーナは何歳なの?」

また質問を投げかけた。

「11歳だよ。だから来年からあの学校に通うの」

まさか同い年だったとは。それなのにもうBランクの魔法が使える・・・ジーナは一体・・・


「へ〜その年でBランクの魔法が使えるデサか」

急にペトラが出て来てそう言った。

「ペトラ!」

「ちょっとまた対策本部に行ってたデサ」

どうやら、白火始に魔術教団が現れた事ため、対策会議が行われていたらしい。

それにしても、なんでペトラは急に居なくなって、急に現れるんだ....


「それより、お主!Bランクの魔法が使えるなんて凄いデサね」

ジーナは少し照れ臭そうにしていた。

「11歳なら蓮斗も同じデサね」

それを聞いてジーナが言った。

「蓮斗も11歳だったんだね。じゃあ来年からは学校に行くんだね」

「うん、行きたいけど・・・」

「精霊使いなら、魔法使いとして認められるんじゃないかしら?精霊使いも精霊を使って魔法が使えるんだから」


俺もペトラに頼れば、ペトラが魔法を出してくれるけど、本当にそれで良いのかと思った。


「蓮斗のお父さんは、剣士か何か?」

ジーナが尋ねて来た。

「うん、父さんは剣士だった」

「じゃあさ、魔法使いと剣士の中間の剣術士になれば?」

ジーナがそう言った。

「そうデサ蓮斗、剣術士になってもいいかもデサ!」


12: 剣術士〜Magical Sword Man〜

剣術士は、剣の道も、魔法の道も極めなければならないため、非常に難しい役職である。だが、短距離、中距離、遠距離と色んなスタイルの戦い方が出来るのが剣術士の強みである。あの男には魔法使いの母さんも、剣士の父さんも敵わなかった。だったら、剣術士になるしかない。俺は、剣術士になる事に決めた。

3日後・・・

「蓮斗!剣術の練習をしてみない?」

ジーナが部屋に入って来てそう言った。

俺は少しでも早く剣術を学びたかった為

ジーナと中庭に向かった。

中庭に着くとそこにはイヴァンさんがいた。

「イヴァンさん!」

「おお蓮斗か、ジーナから聞いたよ。剣術士を目指すそうじゃないか」

ジーナがイヴァンさんに言ってくれていたようだ。俺は自分の口から剣術士になりたい事を言った。

するとイヴァンさんは付いてくるように言った。俺とジーナはイヴァンさんについて行った。正面の庭に着くとそこには馬車が用意されていた。そしてイヴァンさんが俺を見て口を開いた。

「今から街に向かうぞ。剣を買いに行こう」

凄く嬉しかった。イヴァンさんに心から感謝した。とても嬉しそうにしている俺を見て、ジーナがいつもの様にクスクスと笑った。

街に着くと、イヴァンさんは街でも一番大きい剣の店に連れて行ってくれた。

店に入った。そこにはたくさんの剣が並んでいた。こんなに凄い店は初めてだ。昔父さんに白火始の武具屋に連れて行ってもらった事があるが、量も品揃えもそことは比にならないくらいすごかった。

「自由に見て良いから、気に入った剣があったら、言いなさい。」

イヴァンさんの言葉に俺は頷き、剣を順番に眺めた。

小さい剣から大きな剣まで、色々な剣があった。どの剣も凄くかっこいい。

この中から1つを選ぶのはかなり難しい事だ。

「良い剣バッカリだね」

ジーナが剣を眺めながら、話しかけて来た。

「うん、決められないよ」

俺がそう言うとジーナは、別の場所を見てくると言って、奥の方に向かった。

少しの間、剣選びと言うよりかは剣を見るのに夢中になっていた。

「蓮斗くん」

イヴァンさんが来ていた。

「店のオーナーに選んで貰うのはどうだろうか、ここのオーナーは剣術士だ。きっと君に合った剣を紹介してくれるだろう」

「はい!ありがとうございます!」


これだけの剣の中から自分で選ぶのは正直難しいと思っていたので、剣術士の人に紹介して貰えると、とても助かる。


「じゃあついて来なさい」

そう言い、イヴァンさんはオーナーの所まで案内してくれた。

「ディランさん、お疲れ様です」

イヴァンさんが、オーナーと思われる人に話しかけた。そのディランと言う人は、身長も肩幅もとても大きく凄く強そうだった。如何にも剣術士という感じだ。

「ああ、イヴァン君か、久しぶりだね」

「お久しぶりです」

ディランさんは部屋の前にいた俺たちを、中に入るように言った。

「で、今日はどうしたんだい?」

ディランさんの問いにイヴァンさんが答えた。

「実は私の甥が、来年から魔法訓練学校に通うのですが、剣術士志望でして、剣を選んで頂けないかと思いまして」

イヴァンさんがそう言うと、ディランさんは俺を見て

「ほぉ、君名前は?」と尋ねた。

俺は自分の名前を言った。

「なるほど、では君が白火始から来た子か」

その問いに答えた。

「そうか、大変でしたね。僕はディラン・オリバウッドです。ここのオーナーで君が来年から通おうとしている学校の教師をしています。剣術士志望であれば、僕が君に剣術を教える事になるでしょう。じゃあ早速剣を選びに行こうか」

ディランさんは付いてくるよう言った。イヴァンさんと俺はディランさんについて行き、別の部屋に入った。

「じゃあ手始めに、この剣から行って見ようか。持ってみて」

そう言い手渡された剣を、俺は剣を手に取った。

「長さ、重さは丁度いいかい?」

「んー良く分かりません」

「そうか、正直だなぁ。まあ、実際に使ってみれば分かるよ。まずは君のマナとの相性を確かめて見ようか」

「マナとの相性ですか?」

そう尋ねるとディランさんは、魔法や属性効果はまだ早いけど、剣にマナを流すことはできるだろうと言った。俺がマナの流し方を尋ねると、手に力を込めて、剣を握れば流れると教えてくれた。

俺は剣を持ち、力を込めて握った。

「これは・・・」

するとディランさんが驚いた様子で言った。それを見てイヴァンさんが、どうしたのかを尋ねた。

「マナが、体から剣に移ると瞬時に体に戻って行ってる・・・」

そうディランさんは答え、更に口を開いた。

「良く分からないけど、おそらく現時点でこの子が剣術士になるのは、残念だが無理だと思う」

無理俺は剣術士にはなれない?

「どうしてですか!ディランさん!」

その言葉を聞いてイヴァンさんが聞いた。

それにディランさんが

「魔法訓練学校に入るには、入学審査に合格しなきゃいけない。剣術士の審査項目は、剣に一定以上のマナを流し込む事だ。だが、君は剣にマナを流し込めて居ない。体から出る瞬間、まるでマナが剣を拒む様に体に戻っていく。マナを持っていても、今の君では合格は難しいだろう」と答えた。

「待ってください!この子にはペトラがいます!ですから自分では無理でもペトラのマナを使えばっ」

「イヴァン君、残念だが君も知るように、審査の際の精霊の使用は禁止されているんだ。また、精霊を使って、剣術士になったとしても、きっと周りの剣術士と実力差が生まれて来る。精霊に頼ってばかりでは、それ以上の成長を望めない」

ディランさんは俺の肩に手を置き、

「すまないね、蓮斗君....」と言った。

言葉が出なかった。俺には剣術士になれるだけの力がない。マナが流れていかない・・・なんで・・・なんでなんだ。


「イヴァン君、そういう事だ。すまないね」

そう言い残しディランさんは部屋を出て行った。


「蓮斗君...大丈夫かい?」

気を落としている俺にイヴァンさんが話しかけて来た。

「はい、大丈夫です」

とは言ったが、大丈夫なわけがない。俺は剣術士にはなれないとはっきりと言われたんだ。剣術士だけじゃなくて、同様に魔法使いにもなれない。もう魔法は諦めるしかない。

「だが、まだ可能性はある」

そう言ったイヴァンさんを見た。

「なんでですか?無理だと言われたのに」

「ディランさんは『今の君には』と言ったんだ。絶対に出来ないとは、一言も言っていない。精一杯足掻いてみろ」

そうだ。まだ出来ないと決まっている訳ではない。現に俺にもマナが流れている。魔法使いの血が流れている!可能性なら、十分なくらいある!

イヴァンさんは部屋を出て行った。


俺も少し時間をおいて、俺は持っていた剣を戻し、部屋を出た。店の入り口にジーナがいた。手に剣を持っている。

「あっ!蓮斗!これ!」

ジーナが持っていた剣を俺に渡した。

「どうしたんだよ、これ」

俺は剣を受け取りそう言った。

「ディランさんに、蓮斗に渡す様に言われたの」

「俺に?」

「後これも」

そう言いジーナは手紙のようなの物を渡して来た。俺はその手紙を開き、中身を見た。

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真田蓮斗くんへ


ディランです。君のマナがなぜ剣に流れず、体に戻ってしまうのかは分かりません。でもあなたのマナは、とても面白いマナです。今はそれを上手く使えていないだけなのかも知れません。個人的にあなたにはとても興味があります。

もしかしたら魔法訓練学校に来れば、何かがつかめるかも知れませんね。ですが今のあなたでは、魔法訓練学校の入学審査に通る事は出来ません。ですがまだ時間はあります。この時間であなたに出来る事を精一杯して下さい。私の力が及ばず、あなたに適切なアドバイスが出来ない事をとても申し訳なく思っています。でもこれだけははっきりしています。あなたは特別な何かを持っている。自分を信じて下さい。また、私からのプレゼントです。きっとあなたに合うと思います。来年から、あなたに剣術を教えるのを、とても楽しみにしています。


ディラン・オリバウッド

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手紙を読み終え、手紙を封に戻した。

俺は絶対に剣術士になると心から誓った。


13:Feeling

俺がトランテスタに来て、7日経った。

俺はイヴァンさんと街に出ていた。

街は凄く騒めいていた。

どうしたんだろうと思った。

「イヴァン!聞いたか!」

イヴァンさんの知り合いだろうか。道を歩いていると、突然話かけて来た。

「魔術教団が」

「魔術教団?魔術教団がどうしたんだ?」

「魔術教団が白火始を滅ぼした」

「なんだって!?国が落ちたのか!」

「ああ、ある街を残して、他全てをやったらしい。」

「白火始が....」

まさか、白火始が滅んだのか?

教団はこれまで小さな村や、街を狙っても、国全体を狙った事はなかった。

教団が白火始を最初に襲ったのは、龍鳥村の隣の荒石村だ。それが今から7日前だ。まさかたった7日で、1つの国を滅ぼしたのか?

「白火始でまだ残ってるのは、虎兎(こう)だけらしい」

虎兎は白火始の中心部である。このトランテスタのシェンドラシティ程ではないが、かなり大きな都市だ。

白火始は虎兎を残し、全ての村、街が滅ぼされた。


「教団は、国を滅ぼす程の力を持っているのか!」

イヴァンさんは信じられないと言う顔をしている。


イヴァンさんは俺に先に家に帰る様に行った。

俺は1人で家に帰って来た。


俺はディランさんから貰った剣を持って中庭に向かった。

そこにはジーナとペトラがいた。

ペトラが魔法を使っていた。ペトラの前に大きな氷の塊が出て来た。それを的に向かって放った。凄まじい威力だ。

「ペトラ!凄いね!」

「へっへー!それほどでもないデサ!」

2人で楽しそうにしている。

「あっ!蓮斗!もう帰って来てたんだ」

俺に気づいたジーナが言った。

「うん 」

「その剣使って見るんだね」

俺は剣を眺めて返事した。

俺はペトラに教えてもらうことにした。

そしてまずペトラが見本を見せてくれる事になった。ペトラは柄に手を置いた。

「しっかり見るデサよ!」

ペトラが剣にマナを送り込んだ。

すると剣から氷の渦が出来、剣の周りをグルグルと回り出した。

これが特殊効果か・・・

「こんな感じデサ!」

そう言いペトラが手を離すと、氷の渦が消えた。見てるだけでは、どうやったのか全く分からなかった。

「じゃあ蓮斗もやって見るデサ!」

剣を手に持ち、意識を剣に集中させた。

だが何も起こらない。

「うーん、やっぱりマナが伝わっていかないデサね」

やはりマナが流れていかないようだ。

「ちょっと私にもやらせて」

そう言いジーナが剣を手に持った。

ジーナは目を閉じた。少しの間目を閉じ、勢いよく目を開けた。

その瞬間剣から水が出て来た。

「やった!」

「凄いデサね!」

ジーナはやはり凄い。これが才能の差なのか。とても悔しかった。

俺は強引にジーナから剣を取った。

「クッソ!」

もう一度意識を集中させる。やはり剣には何も起こらない。


「そうデサね、まずはマナの流れを感じられる様にならないとデサね」

「マナの流れ?」

俺はペトラに尋ねた。

「蓮斗は、マナの性質も問題デサけど、体の中でも上手くマナが流れていないんデサよ。だからまずはマナが流れる感じを実感して、体の中でうまく流せるようにするデサ!」

そう言いペトラはジーナの手に触れた。

「じゃあまずはジーナデサ!」

ペトラの手が緑色に光った。

「すごい!マナの流れがわかる!」

ジーナはとても驚いた様子だ。


「この魔法は『ドレイン』て言う、土魔法デサ。杖を使わなくても出来る魔法デサよ!魔法効果は、敵のマナを吸い取る事デサ。本来は魔法ランクBの魔法デサけど威力を弱めてあげると、こう言う使い道もあるんデサ」

それを聞き前に母さんが言っていたことを思い出した。

『魔法の使い方は凄く多彩なの』

魔法は工夫が大事。母さんは特別強い魔法は使えなかったが、色んな魔法を組み合わせるのが得意だった。


「じゃあ次は蓮斗の番デサ!」

そう言われ俺は腕を差し出した。

ペトラが俺の手に触れた。ペトラの手が光った。すると腕に違和感を覚えた。まるで中に虫が入り込んで、動いているみたいだ!これが....マナのながれか....

「わあ!」ペトラが叫んだ。

ペトラは手を離した。

「大丈夫か!」

「ああ、うん、大丈夫デサ」

「何が起こったの?」ジーナ心配そうにして聞いた。

「蓮斗のマナを吸い取ろうとしたら、逆にこっちのマナが吸い取られたんだよ。それも凄い勢いでね」

俺はペトラのマナを吸い取ろうととなんかしていないのに・・・どうしてだ・・


「やっぱり蓮斗のマナは面白いデサ」

ペトラに特に異常はなさそうで、安心した。


俺はその後も毎日の様に、練習を続けた。だが何も収穫がないまま、魔法学校入学審査の朝を迎えた。

もうここに来て100日近くが経った。

もうここの暮らしにも慣れ、白火始で暮らしていた時が、ひどく昔の様に思えて来た。

「全く、どこで寝てるのよ」

目を開けるとジーナがいた。

昨日は遅くまで中庭で練習をしていた。その途中で寝てしまっていたらしい。

ついにこの日が来た。だがまだ剣にマナが流し込めていない。

「蓮斗さ、すっごく頑張ってるよね」

「え?」

「きっと大丈夫だよ。蓮斗なら」

そう言うとジーナは家に入って行った。


きっと大丈夫だよ。蓮斗なら。

そう言ってもらえて凄く嬉しかった。

ここに来てからずっと、剣術士になるために頑張って来た。そして今日はその成果を見せる日だ。自分の全てをぶつける!


14:入学審査!

ついにこの日がやって来たな。

蓮斗くん、どこまで成長したかな。

「楽しみだよ、蓮斗くん。今日を突破してくれたら、僕は教師として君を一流に育て上げて見せるよ。」


じゃあそろそろ学校に行くとするか


学校に着くと、今年の入学審査を受けに来た子達がたくさん集まっていた。

今年は例年にはないくらいの人数が集まっている。

やはり魔術教団の影響だろうか、国のあらゆる地域から入学希望生が集まって来ている。

この学校では12歳~18歳までの6年間を過ごすことになる。僕も昔はここに通っていた。イヴァンはその時の3つ下の後輩で、蓮斗の母のソフィアは6つしたである。2人ともヘルキャット一族という事もあり、実力はズバ抜けていた。


あのソフィアの息子だ。蓮斗くんは絶対に合格するだろう。


「ディランか」

「校長!おはようございます!」

校長の名は、オリヴァー・ロードナイト。魔法使いの階級が超級のとても凄い魔法使いである。

「早速だが、もう会場の方に向かってくれないか。今年は志願者が多いからな」

「そうですね、分かりました」

僕は剣術士の審査会場に向かった。


会場の中で志願者達を待つ。

今回の審査委員長は僕で、他に2人の先生も審査を行う。

3人で長机に座り待つ。


「そろそろかな」

「そうですね」


志願生達が入って来た。50人には満たないものの結構な人数だ。

中には蓮斗くんの姿もあった。


もう全員揃った様なので、僕は立ち上がり志願生の元に向かった。

「それでは審査を始めます。説明するので聞いて下さいね。これが今回の審査で使用する剣です。」そう言い剣を見せた。

「見てください。皆さんには剣にマナを流し込んで頂き、このラインを超えたら合格です。制限時間は30秒です。質問はありますか?」


「それでは審査を始めます。名前を呼ばれた人から来て下さいね。」


審査が始まった。あまり難しい審査ではないので、次々に合格して行く。10秒を超えた者は誰一人としていなかった。その中に始まった瞬間マナを剣全体に送り込み、属性効果を見せた者もいた。剣から、炎がそびえったった。

凄いスピードだった。

確か名前は『ノア・ブラウン』。今この中で一番剣術士としての力があるのはこいつだな。そして蓮斗くんを残して他全員の審査が終了した。落ちたものは誰一人としていなかった。

「真田蓮斗!」ついに蓮斗くんの番が来た。志願生の方が騒がしい。去年滅んだ白火始の名だからだ。さらに蓮斗くんの肩には、精霊..ペトラが乗っている。

前に見たときは、ソフィアの肩に乗っていたが、今は蓮斗くんだ。


志願生達の方からは、精霊使いだ!などと言った声が聞こえてくる。

「よろしくお願いします!」

いい声だ。まさに戦いに向かう者のそれだ。

「それでは始めます。3.......2.........1.......スタート!」

ついに蓮斗くんの審査が始まった。


マナの流れをじっと見る。

相当練習したのであろう、前よりもマナの流れが早い!これなら!と思ったがマナは剣に送り込まれて行かない。

手から流れ出たマナは剣から逃げる様にして手に戻って行く。

10秒が経過した。やはり厳しいか....

だが蓮斗くんに諦める様子はない!

むしろ生き生きしている様にも見える。

なんだ!蓮斗くんの目が紫色に光って見える。15秒が経過した時、蓮斗くんの体を流れるマナの量が爆発的に増していった。

なんだこのマナの量は!凄まじい勢いでマナが体を流れる。隣の先生二人も驚いている様子だ。20秒を超えた辺りで、体全身からマナが溢れ出して来た。

黒色のマナが体から出て、メラメラと輝いている。そう言えば聞いたことがある、魔法使いの中でマナを全身から溢れ出させる事によって、一時的に筋力や魔法力を爆発的に上昇させる者がいる事を。だがそれが出来る人は世界に10人といないと言う。現に僕は初めて見た。まさか蓮斗くんはそれが出来るのか?

「これは....オーラだ...」一人の先生が声を漏らした。

その黒いオーラと思われるマナの塊が徐々に体から剣に向かって行く。25秒が過ぎた辺りで、オーラはラインを超えた。そして30秒が経った時には、オーラは剣全体を包み込んでいた。


その場にいる全ての人が固まっていた。先生は2人とも開いた口が塞がらない様子だった。


こんな魔法は見た事がなかった。オーラの事も聞いただけで、実際に見たことはなかった。何よりこんな属性は見た事がなかった。黒いマナ・・・

多分5つの属性のものではない。

となるとまさか・・

陽・・・陰・・・魔法・・・?

「ディラン先生もしかしてこれは・・・陰魔法では?」


「陰魔法!?」

志願生達が騒ぎ出した。


蓮斗くんを包んでいたオーラが蓮斗くんの体に戻って行った。


蓮斗くんは激しい呼吸を繰り返し、倒れ込んでしまった。とても苦しそうだ。

それを見た1人の先生が飛び出して行った。土属性の先生が暴走しているマナを抑えようと、ドレインを使った。

「ダメデサ!」

ペトラが叫んだ!

「あああああああぁぁぁぁぁぁ!!」

ドレインを使った先生が大きな声をあげ倒れた。

「大丈夫か!!」

そう言い駆けつけた。

マナが吸い取られている・・・

「蓮斗にドレインを使ったら、逆にマナを吸われてしまうデサ!」

ペトラが言った。僕はどういう事だと尋ねた。ペトラは前に蓮斗君にドレインを使った時にマナをすごい勢いで座れた事を教えてくれた。

魔法医師の先生がきて、倒れた先生は運ばれて行った。

蓮斗くんは大分落ち着いて来た様だ。

僕は志願生達に集まるように指示し、

蓮斗くんを立たせ、みんなと一緒に並ばせた。みんな蓮斗くんを凄く気にしている様子だ。

「では、少しハプニングもありましたが、ここにいる48人の志願生は全員合格です!おめでとうございます。来週から、待ちに待った学校が始まります。皆さんも知っているように、この学校は全寮制です。その為しばらくは自宅に帰ることは出来ませんので、忘れ物等がないようにして下さいね。では学校側も皆さんを一流の剣術士に出来るよう、頑張って行きますので、皆さんも一緒に頑張りましょう。これで入学審査を終了します。お疲れ様でした。この後、会場の片付けがありますので、直ちに退出して下さいね。それと、真田蓮斗君....君はこのあとちょっと残って下さい」

そう言うと蓮斗君を残し、他の志願生達が会場を出て行った。


蓮斗くん、何かあると思っていたが、ここまでとは。300年前の予言であった、

陽魔法と陰魔法..まさか君が陰魔法の使い手なのか?何にせよ君の成長が本当に楽しみだよ。まあとりあえず今は、

「合格、おめでとう」


エルの殺戮はまだ続く

第1章 〜トランテスタ編〜 【完】

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