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第二章 一話 叩かれる妹

すいません…第一章を無理矢理締めたので、冒頭は説明ばっかりですw

誠に申し訳ないw

「はっくしょん、ちくしょうおうおうおう…」


 ふいに、一人の少女が、女の子にあるまじきくしゃみをした。


 チナであった。


 酒場のカウンター。


 本来なら、いかに冒険者と言えども未成年は追い出される場所。


 だが、まだ日が高いせいか、文句をつける客もいなかった。


「うー…もう五月だってのに。 まったく寒くないのにね。


 古えの言い伝え通り、誰かがあたしのうわさでもしてんのかしら」


 そういいながらチナは、木製のコップを傾ける。


 飲んでいるのはブドウ汁。


 醸造用ではなく、食用のブドウを絞ったものだ。


 しかしそれは、地球のものより糖度は低い。


 コンビニや自販機のないこの異世界では、食堂かここでしか飲料水以外の飲み物がない。


 砂糖もないこの世界…甘い飲み物が、これしかないのだ。


 だから…ここはチカの指定席であった。


 実際、かなり頻繁に入り浸っていたチナであった。


「うう…コーラ飲みたい…糖分摂りたい…。


 体に悪そうなもの、いっぱい食べたい…。


 もうね、炭酸飲料がないってのがね、致命的だわ……」


 ごん。


 チナはテーブルの上に頭を落とした。 


 そのさまは、酔っ払いのようであった。


 食文化で圧倒的に劣るこの世界は、チナに日本への郷愁を感じさせていた。


 その服装は…転生時の学生服ではなかった。


 基調は、白い修道服。


 その裾が、ひざ上くらいまで上げられている。


 修道服なのは…別に出家したわけではない。


 たまたま入手したのがこれだっただけだ。

 

 その上に…頑丈そうなドラゴンブレストアーマー。


 高価そうな装飾と、行き届いた手入れ。


 その質量もそれなりにあろう。おそらく彼女と同世代の少年には手に余る。


 だが…それは彼女のパッシブスキルにより、行動を制限するに至っていない。


 『肉体強化』と言うスキル。


 このスキルのために、彼女は人間以上の…というより人間以外の力を発揮する事ができる。


 実際、全身を覆うフルプレートアーマーでも彼女は装備可能だ。


 が…あたしを姫騎士にする気か!くっ殺すよ!と言って却下されていた。


 ちなみに…ブレストアーマーの胸部には、入れ物が入っている。


 クッションがなくて痛いという、切実な理由だった。

 

「ティナ様、ティナさまああああああ!!」


 と、ふいにチナは名を呼ばれ、振り返る。


 そこには、商人風の服を着た数人の中年男性がいた。


「ああ、商業ギルドの…って…ええええ?」


「この度の追加融資の件! 誠にありがとうございましたあああ!!」


 五体投地の勢いで頭を下げる男たち。


 それに苦笑を見せながら、チナは応じる。


「ああ、その件ね。


 融資条件にしてたニュー神父の会計監査、通ったんだね。


 よく通ったねー。 あの、マネーの悪魔の会計監査」


「はい! あ、いえその…何とか合格となりました!!


 大変厳しいニュー神父様には…大変厳しいご指導を戴いて…」


「あー、だろうね。 あの神父、お金の扱いにはすごく厳しいから」


 そういいながらチナは『なんですかこの杜撰な貸借対照表はー!』と激怒するニュー神父の姿を容易に想像することができた。


 ででん、ででん、ででん、ででん、ぎゅいーん。


 ヘビメタ系のBGMが良く似合う神父だった。


「で、何しに来たの?」


「ま、まずはティナ様にお礼をと…それに」


「いいよ、そんなの。 あ。


 契約書にサインすんの、あたしだったかー」


「はっ!!」


 最敬礼、と言う感じで男が契約書を差し出す。


「はい。


 んーと、契約条件ーーーー、うん。で、利息がーーーーー、うん。


 よし。


 『ティナ孤児院は上記の条件で金貨二〇〇〇枚を融資する事に同意する。


  代表者、ティナ・イトー』っと。


 で、これをもう一枚…こっちがうちの控えだー。


 支払いは大金貨二〇枚でもいいかな?」


 サインを書き終わってからティナは、腰に付けたアイテムボックスから…地球でいう金の延棒を取り出した。


 これが大金貨らしい。


 金本位制のこの世界…大金貨一枚は金貨百枚をそのまま鋳潰したものだった。


 肉体強化のスキルで、金の延棒を軽々と机の上に置いていく。


 日本でほぼ二億円に当たる金額が、少女の懐から出てきた。


 ごくり。


 商人たちは固唾を飲んで見守る。


 次第に積み上げられてゆく金の重さに、カウンターがミシミシと軋んでいた。


「ほい、二〇枚。


 あはは、財布の中もだいぶ寂しくなったわ。


 まあ家に帰ればまだあるし、洞窟で拾った装備もまだ残ってるからいいけど。


 とりあえず、来月から利息、よろしくー。


 あと、年金もねー」


「は、はい!!


 その件ですが…あの、こんなにお安い利息で構わないのですか?」


「年五パーセントの、年十二分割よね?


 複利計算はメンドクサイし。


 いいのよ。


 こっちだって、死蔵しているだけのお金だし。


 共存共栄といこうよ。


 そのかわり…契約条件にもある、ニュー神父の定期的な会計監査。


 これは受け入れてもらうから」


「うっ…それは、承知、しております…」


 心底いやそうに、男は返事した。


 『この損益計算書を書いたのは誰ですかー!』


 ででん、ででん、ででん、ででん、ぎゅいーん。


 いま彼の脳裏には、ヘビメタ系のBGMがよぎっているに違いない。


「あと…融資条件の、孤児院への寄付。


 まあこれは心付けでいいから。


 お願いねー」


「はっはい! 必ずや!!」


 最敬礼で返答する商人たち。


 そして、いそいそと大金貨をしまう。


 さすがに商業ギルドの幹部は、アイテムボックスを所持しているらしい。


 アイテムボックスは、買うとなると、家二件分の金がかかるそうだ。


「んじゃ、あたし、帰るから」


 契約書を自分のアイテムボックスにしまい、そういって立ち上がるチナ。


 と…不意に酒場にフラグが立った。


「ヒャッハー!! こんなところにガキがいるぜ!!」


「ククク…うるせえな。 なんだ、この店はガキに酒を飲ますのか」


 赤い服を着た二人組のチンピラの姿に、商人たちは息をのんだ。


 その表情に…二人組は嗜虐の笑みを浮かべ、チナに近づいてゆく。


「おうガキ、ミルクでも奢ってやろうか? なあ? ヒャッハー!!」


「ママのオッパイでも恋しくなってんじゃないか? なあ? ククク…」


「…あいにくオッパイは間に合ってるよ。 あたしは、女だっての」


 立ち上がり、それだけ言うと男たちの横を通り過ぎようとした。


 その肩を、捕まれた。


「ククク…生きのいいガキだな。」


「ヒャッハー!! こいつ、ガキの癖にいい防具してやがるぜ!!


 いっちょまえの冒険者のつもりらしいぜ。


 きっと良い剣も持ってるに違いねえ!!


 おいガキ!! お前なんかじゃ宝の持ち腐れだ!


 俺たちが売り払ってやるよ!」


「あんたら…今、女って言ったのスルーしたね?」


 と…チナがそう言った瞬間だった。


「げぐっ!」


「ぐげっ!」


 二人の男が踏みつぶされるカエルのような鳴き声を上げた。


 その喉元には、金色に輝くガントレット。


 それが、男たちの気道を狭窄していた。


 いつの間にか両手に装備していたチナのものだ。


「あいにく剣の持ち合わせはなくて。


 あたしのメインはこのガントレットだから。


 いやぁ、肉体強化って、楽でいいわ」


「ケ…コケ…コ…」


「カ…コ…」


 何か言おうとしている男たち…だが、空気が気道を通らない。


 そしてチナは…背中に、カウンターの奥から酒場の店主の視線を感じた。


「はいはい、続きは外でやりましょ。言い分があったら聞いてあげるし」


 そういうとチナは…男たちの体を持ち上げた。


 そのまま外に向かって歩き出し…一度振り返る。


 店主と商人たちに対する挨拶のつもりか、男たちの体ごと、腕を大きく左右に振った。


「大丈夫か、あれ…」


「ああ、いつもの事ですよ。


 最近よそ者が増えましたから…ティナ様の事を知らなかったんでしょうな。


 相手はドラゴンを倒したパーティの一人だってのに…お気の毒に…」


 不安そうに言う商人たちに…こともなげに言う店主。


 と…外からチナの声が聞こえる。


「全く…いい歳をした男が、情けない。


 そもそも英語圏で赤い服なんて…死亡フラグそのものじゃないの。


 宇宙ものの特撮マニアに謝りなさい。


 ほんとにもう……『完全回復』。せーの、ぽん。


 え?


 『状態回復』! せーの、ぽん!


 まじ?


 『仮死蘇生』!! せーの、ぽん!!


 …もう、驚かさないでよ!!!


 心理的瑕疵物件の補償って、いくらかかると思ってんのよ!!」


 ばこっ!!


「……あ。


 『仮死蘇生』…せーの、ぽん」


 頭をたたく音とともに、神の奇跡が店の出口で行われていた。


 いくら蘇生させても、心理的瑕疵には違いなんですが…店主はそう言おうとして、やめた。


 命が惜しかったからだった。

 あれから、六か月経っていた。


 あれとはもちろん、チナが転生の女神メグルによってこの世界に放り込まれ、いろいろあって、古龍の高齢出産を助けたことだ。


 チナたちのパーティは、莫大な財宝(ただし冒険者たちの死骸から簒奪)を手に入れ、一夜にして大金持ちになっていだ。


 チナたちが手に入れた財宝は…最終的に、金貨で六万枚に及んでいた。


 日本円で六〇億円相当である。


 だが…チナたちは、その金の多くを財テク(笑)に回していた。


 一つは、先の商人ギルドのように、利息目当ての融資。


 もう一つは、ギルドによる共済だ。


 共済とは…月々いくらかの共済委託金を積み立てていき、満期になれば月々年金を払うというシステム(契約内容にもよる)。


 しかも生命保険つきというお徳さ!!


 異世界なのに共済とは…と思われるかもしれないが、これは、江戸時代の日本にもあったシステムで、『無尽』などと呼ばれている。


 また、古代の中国やローマにも同じようなシステムはある。


 今のようなしっかりした生命保険システムは十四世紀ぐらいまで待たねばならないが…世界や時代が変わろうと、人間は同じことを考えるという良い見本だ。


 なお、この町では先ほどの商人ギルドや酪農業ギルドのほかに、冒険者ギルドでも取り扱っている。


 チナたちはその共済委託金を、全額先払いで支払っていた。


 しかも、何口も何口も。


 そして…年金をすでに受け取り始めている。


 銀行のないこの世界だが、年金付き共済を使うことで夢の利息生活を始めていたのだ。


 融資にしても共済委託金にしても、きわめて低金利であるため回収率は低いが…それでも年間金貨約六〇〇枚から一〇〇〇枚の収益が見込まれていた。


 チナいわく、『金持ち喧嘩せず』方式。


 何でも、巨大な資本で小さなことをコツコツやるのが人生の必勝法との事。


 しかし…その受取窓口はチナたち個々人ではなかった。


 『ティナ孤児院』という法人が、受取口になっていた。


 それは、もともと仲間の一人ジェーンの資産だった孤児院。


 もともとあった潰れそうな孤児院を窓口に、『孤児のため』と称して財テク、金融業を行い、そして税金をごまかす。 まさに悪逆非道。


 なお、『ティナ孤児院』は彼女のパーティの名前でもある。


 また。


 チナたちがこの小さな町に投下した資本は金貨三万枚に及び、その経済効果は絶大であった。


 共済委託金や融資で資本金が増えたそれぞれのギルドが景気よく設備投資し、会員に景気のいい仕事を回し、町に金が回り始めた。


 職人や町の食堂などにも金が行き渡り…その金がさらに消費に使われる。


 多くの人間が金を使うことで起こる、好景気。


 中学生にもわかる理屈だ。


 多くの人間がその原因を…古龍を倒し、莫大な財宝を手に入れ、それを町にばらまいたチナであると認識している。


 ゆえに。


 チナたち『ティナ孤児院』は、一目置かれる存在となっていた。


 かくして、チナと仲間たちは孤児院の安定経営と、左うちわの人生を手に入れたのだった。


 チナはふと思い出す。


 働きたくないでござる。


 いつもそう言っている人生の先生の顔。


「…大原のおっちゃんは今頃どうしてんだか。


 好きなことだけやって…好きなだけ、太っていってるんだろーね。


 …若いときは、結構かっこよかったのに。


 さて。 ただいまー…って、あれ?」


 と…孤児院に帰宅したチナ。


 その入り口の前に、知らない子供の姿を見つけていた。

 二人。小さな女の子たちだった。


 二人ともに、強い癖のまま長く伸ばしたこげ茶色の髪。


 目鼻立ちのはっきりした顔。


 完全に、欧風の人種だった。


 造作が似ているのは、姉妹なのだろうか。 


「え、ええと…うちの孤児院に何か御用かな?」


 しゃがんで目線を二人に合わせながら問いかけるチナ。


 その言葉に、姉妹は顔を見合わせる。


 そして、そのうちの一人の子が一本の指を差し出した。


 と…その指先の軌道が淡く輝いた。


 そして…そこに文字を書きはじめる。


 筆記体だったが…今はチナも何とか読み書きできるようになっていた。


 チナは気付かなかったが…少女は、チナが読みやすいようにその文字を鏡文字で書いていた。


「へー、魔法でそんなこともできるんだね。


 えぇと…『あなたはだぁれ?』」


 そう書いてから、不安げにチナを見上げる少女。


 か、かわいい!!


 反射的に抱きしめようとする腕を抑えながら、チナはその問いかけに応える。


「チナ・イトウよ。 みんな、ティナって呼んでる。


 こう見えて、ここの孤児院のオーナーなんだから!」


 チナの言葉。それに、二人はもう一度顔を見合わせる。


 そして…先ほど見せた空中に文字を書く魔法で、二人は文章のやり取りを開始した。


 二人は空中に短い文章を書いては消し書いては消し、それを高速で繰り返す。


 どうも、二人で筆談し、相談しあってるらしい。


「んー、何々…うわっ早っ!」


 横から文章を覗こうとしたチナだが、書いて消すサイクルが早いため、全く読む暇がなかった。


 そのさまを無言で眺めるチナ。


 一切口を利かずにコミュニケーションをとる二人。


 魔法で文字を書くのは、地球でいう手話代わりのコミュニケーション方法なのかもしれなかった。


 チナはふと思った。 目の前の二人は…喋れないのかも知れない。


「んー…どうしよ…」


 困り果てたチナ。


 そこに…敷地の奥から、声がかけられた。


「まあ!


 まあまあ!


 デルタにネアンではありませんか!」


 ジェーンだった。


 ジェーンはそういうと、幼い二人に駆け寄っていった。


 二人もジェーンに向かって走ってゆく。


 そして…ジェーンの豊かな豊かな豊かな胸に飛び込んでゆく。


 ぽよん、と言う音が聞こえそうだった。 しかも二回。


「あらあら。 ずいぶんおひさしぶりです。


 どうしたのですか? ふたりそろって」


 その言葉に、二人は顔を見合わせる。


 そして二人同時に、満開の笑顔で手かご一杯のチーズを差し出すのであった。


「まあ!


 アル牧場からのご寄付ですね。


 ありがとうございます」


 そう言って二人をもう一度抱きしめるジェーン。


 ぽよん、ぽよん。


「あ、おつかいだったんだね…」


 チナはその様子を見てそう呟いていた。


「ティナさん、紹介します。


 この二人、デルタとネアンっていいます。


 『山の民』の二人で…いちおう、この孤児院の卒業生なんですよ」


「山の民? 卒業生?」


 チナは、新しい単語を素直に聞き返していた。


 まぁ…卒業、と言うのは分らなくもない。


 新しい里親が見つかり、孤児院を出ていった子供なんだろう。


 決して、人気のなくなった芸人の降板を小奇麗に表現した、ウンコみたいな言葉ではなかろう。


 で、山の民と言う言葉。


 エルフ的ドワーフ的ファンタジー的存在?


 チナは一瞬そう思ったが、それにしては二人の姿はどう見ても人間。


 いわゆる、山岳民族と言う意味だろうか。


「あら…ティナさん、山の民に会うのは初めてですか?」


「あ…う、うん。 あのね……」


 そういうと、チナはそっとジェーンの耳に顔を近づける。


 と…急にジェーンの顔が赤くなった。


「ちちち近いです、ティナしゃん! ななな、何ですか急に!!


 あの…その、人前では、その…心の準備が……」


「…なに照れてんのよ。 いいからちょっと耳貸して」


「あ…そういうことですか…。え? 彼女たちの…治療を?」


「ばっか! 復唱しないでよ!」


 焦ったように言うチナ。


 それは…彼女たちが喋れないのを、魔法で治療できないかと言う相談のつもりだった。


 それを彼女たちの目の前でいうのは、二人に対して、異常だ、と言っているようにも解釈できる。


 それを気遣ったための耳打ちだったのだろう。


 それに、ジェーンは苦笑、と言うには穏やかな笑みを見せる。


「…お優しいのですね、ティナさん。


 大丈夫です、ティナさん。 心配ありません。


 山の民は、極度にしゃべらない人たちなのだそうです。


 私も、この二人がおしゃべりしているところは、見たことがありませんので」


「はぁ…なんだ。 無口属性ってやつか」


「ぞくせい?」


「じゃあ、改めて。


 よろしくね、デルタちゃん。 ネアンちゃん」


 そう言って二人の頭を撫でようとするチナ。


『待って…』


 と…ふいにデルタと呼ばれた方の少女が、先ほどと同じ要領で、宙に文字を書いた。


 小さな子供が小さな顔でいちいち見上げるものだから…もう飛びついてぐりんぐりんと撫でて、撫でて、撫で殺してやりたいくらいだった。


「うん?


 どうしたのかなぁ……へ?」


 以下長文。


『私には見ず知らずの人間に頭を撫でられる謂われはありません。


 だいいち、私はあなたの事をよく知りません。


 それなのに頭を撫でるなんて失礼な行為だとは思わないのですか?


 文化の違いという物を認識せず、自国の文化こそ正義と言う認識で他の文化を踏みにじり、それに気付きもしないタイプの方ですか?


 あなたはバカなのですか?


 あなたには教養というものはないのですか?


 あなたはご両親に、どのような教育を受けられたのですか?


 あなたのご両親も、このような教育を受けられたのですか?


 ではあなたも将来、そのような教育をなさるのですね?


 だとすれば、あなたは死んでください。


 あなたの一族郎党全員を根絶やしにしてから、死んでください。


 無教養な教育のスパイラルによって世間の皆々様に迷惑がかからないように。


 ていうかしねやks』


 高速な上に、書いては消し、書いては消し、だったのでその内容は読み取れなかったが…頭を撫でることを拒否されたことは分かった。


 と…今度は隣にいたネアンが宙に文字を書こうとしていたので、チナは慌てて止めに入る。


『それにそもそも…』


「あ、も、もういいから。


 わわわかったごめんなさいなんかよくわからないけどわたしがわるかったからごめんなさい」


 にぱー。


 チナの反応に、二人は、純真無垢な笑顔を見せる。


「あー…山の民は、みなさん頭の良い方が多いですからね…。


 特に…一度、文章になさるせいか、わりと多弁な方が多くて…」


 その様を横から見ていたジェーンが、ひきつったような笑顔を見せる。


 どうやら彼女も同じ目にあった事があるらしい。


 小一時間ぐらい問い詰められたのかも知れなかった。


「あー…わかる。 ネットに多いよね、そういう人…」


「ねっと?」


「あー…なんでもない…」


 それはまるで、とあるサイトで何気なく書き込んだ投稿をクソコテに糞味噌に批判され反論しても反論しても見当違いの理論で一刀両断されそれを指摘しても乙としか言われず夜中に地団駄を踏んで悔しがって打ちのめされてそれでも逃げるのは癪だったから朝まで反論を続けて半泣きになった事でもあるかのように………チナは、暗い表情で、答えた。

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