第1話 壊滅①
はじめて書く作品なのでわかりづらいこともあると思います。すいません。また、投稿スピードがかなり遅いです。また、少々残酷な描写がありますのでご注意ください。
視界が悪い。
巻き上げられた粉塵が視界を遮っていた。
視界が悪い。
数百メートル先は塵で何も見えない。
視界が悪い。
目を凝らすと砂が目に入ってくる。
場所は東京都西部の山岳地帯。そこには一つの小さな影があった。
影が一歩、また一歩と進むたびに地図が書き換えられていく。得たいの知れない何かが山を引き裂き、土砂を巻き上げてていく。
影はまた一歩進む。そして何かが山を切り裂く。
また一歩。
また一歩。そこで少年に異変があった。
立ち止まった。破壊の嵐が止み、あたりは一時の静寂に包まれた。
スゥーと顔を上げる。
空を見ていた。
正確には空に舞う爆撃機の群れ。数は十数だろうか。 しばらく旋回していた爆撃機だったが、遂に動き始めた。
次の瞬間、爆弾の雨が降ってきた。
直後、耳を破る爆音が鳴り響いた。
「目標に命中!」
ただでさえ視界の悪い状態なのに、先の爆撃で視界はゼロに近かった。生死の確認はできないがあれだけの火力だ。いくらバケモノでも木っ端微塵になっていたはずだ。とりあえず、視界の良い上空へ移動しようとパイロットは操縦桿を引っ張った。
機体が上昇しかけたとき、異変は起きた。レーダーに映る影が一つだけ多かった。
「・・・・・・えっ!?」
パイロットはおもわず言葉をもらしていた。粉塵の中を抜けると、目と鼻の先には目標がいたのだ。
パイロットが驚くのも無理は無い。だが、それは目標が目の前にいる事だけではなかった。
なぜなら目標の影は15歳前後のしょうねんだったのだから。
しかしそれは、同時に大きな疑問と恐怖でもあった。
ありえない。
ここは高度3000メートルの世界。ただの人間なら不可能だ。そもそもさっきの爆撃をまともに食らって五体満足でいることがおかしかった。何はともかく、今ここにただの人間がいるなんて事はありえない。
パイロットはもう驚いてなどいられなかった。強大な恐怖に飲み込まれ身動きが取れなかった。
「こちら自衛隊本部! 何があった応答しろ!」
本部からの無線が妙に遠くに聞こえる。ここは戦場だと言うのにパイロットはそんなことを気にしていた。目の前の現実から目を背けたくなっていた。今すぐにでも逃げたかった。
しかしそれは叶わない。
少年と目が合ってしまったのだ。注意をひきつけてはいけない。注意をひきつけたら殺される。しかし、目が会ってしまった。
操縦桿からパイロットの両腕が滑りおちた。死ぬ。死にたくない。恐怖で気を失っていった。操縦桿から手を離したことにより、機体はコントロールを失う。速度は上がるのに高度は下がっていく。機体は螺旋階段を下りるように円を描きながら落下していった。地上まで500メートルをきっていた。
もうすぐ地面と言うとき、幸いか不幸か、パイロットは目を覚ました。時間にして2分弱。短いようだが、遅かった。そして、機体はレーダーから消えた。
『・・・・・全員いますぐ退却だ!』
しかし、その命令に従えるものはいなかった。
グオォォォォォオオオ!
突如少年を中心に起こった爆発に巻き込まれ、すべてが消し飛んだ。吹き荒れる爆風に、爆撃機が次々と飲み込まれていく。
強烈な光と熱によってレーダーには何も写らなかった。だが、結果は目に見えている。・・・・・・全滅した。
光と熱が支配する大地に、一つの影があった。それはもう少年ではなかった。身長は3メートルを超えている。
背中から突き出す二対の漆黒の羽。
頭の上に浮かぶリング。
女性的なその身体。
大天使ガブリエル。水を司り、楽園を守護する天使がその姿を現出した。