第二話
ログイン画面が表示された時、それは起こった。
「……?」
画面が歪んだのだ。
しかし、一瞬のことだったので、今は正常にログイン画面が映し出されている。
「……気のせいか」
俺は携帯電話を操作し、ログインした。
名前やその他諸々の設定を入力していく。
プレイヤー名は本名をいれるように指示されていた。
それが終わると、チュートリアルが始まった。
チュートリアルが始まってすぐ、玄関のチャイムがなった。
「……誰だろ?」
玄関に行くとドアの外から声がかかってきた。
『すいません。宅配便なんですけど』
「あ、はい」
宅配便のお兄さんから届いたものを受取り、さっそく開けてみる。
誤解のないように言っておこう。
俺は今、一人暮らしをしている。
といっても、両親が出張に行っているだけなので、一時的なものなわけだが。
あ、もちろん荷物は俺宛てだった。
どこから送られたものかは記載されていない。
包装紙を破ると、ダンボールの小さな箱があらわれる。
その中には、トレーディングカードゲームほどの大きさのカードが一枚、入っているだけだった。
表面には“剣士”の文字と、剣を持った男のイラストが、裏面には幾何学模様が印刷してあった。
ゲーム名が入っていたら、完全にトレーディングカードゲームのそれだ。
「何で、こんな物が?」
送り間違いかと思ったが、俺宛てになっていたのを思い出す。
「……ま、いいか」
自分の部屋に戻り携帯を開く。
すると、画面に届いたカードと同じイラストが描かれてるではないか。
「ど、どういうことだ?」
何かの偶然だろうか。
でも、こんなことが有り得るだろうか。
とりあえず、携帯を操作する。
そこには、このようなことが表示されていた。
“これは魔王を決めるための戦いです。資格がないものはこの記憶とともに、全てを失うことになります。カ-ドの紛失などは資格がないものとみなしますので、ご注意を。それでは、その時までごきげんよう”
読み終えた途端、携帯の電源が切れた。
「……こ、故障か?」
今日は不思議なことばかりである。
というか、どうでもいいや。
早く寝よう。
急に何もかもが馬鹿馬鹿しくなって、布団に入る。
携帯やカードは机の上にほおっておくことにした。
明日になったら、何かしら知っているだろう西木に、知っていることを聞こう。
そうだ、それがいい。
やや、現実逃避しながら俺は眠りについた。
だから知らない。
カードが急に光り始めたことを。
そして、敵がすぐそこまで迫ってきていることを。