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ピタゴラスちゃんのジレンマ  作者: 伊吹 由
第1章 犯人を追え!
4/41

第4話  デカルトちゃんとラッセルちゃん

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

前回までのあらすじ


私、ピタゴラス。この物語の主人公。


3月14日、早朝。憧れのルブラン君の靴箱の中に、ラブレターを入れようと思ったら・・・すでに誰かのラブレターが入っていた。


それを盗み取った私は、こっそり中を読む。手紙の主は、私と同じ数学倶楽部にいると確信し、部室を探ってみた。


でも、何も手がかりを得られず・・・


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


   第4話  デカルトちゃんとラッセルちゃん


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

部室に入って来たのは2人。


「はわ? Pちゃん~ 今日、早いですね~」


私の事を【Pちゃん】と呼ぶのは、【近代組】のデカルトちゃん。


「おろ? ピタ子。教団の集会、もう終わったの?」


そして【ピタ子】と呼ぶのは、【現代組】のラッセルちゃんだ。



・・・ ・・・。


ここで簡単に、2人を紹介しておこう。まずはデカルトちゃん。【TRUTH】と書かれたバッグを持ち歩き、ポニーテールを水色のリボンで止めている。そんな彼女は・・・


校内1の遅刻魔で有名。


「デカちゃんは~ 無理して起きたら~ 死んじゃうです~」


これが口癖の基本ワガママっ子で、自分の事を【デカちゃん】と言う。あと、少し天然も入っているかな。でも、校内に【デカルトちゃんファンクラブ】もあるほど、学園では人気があるのよね~。


とにかく非常に疑り深い子で、何か気になる事があれば


「ないです~ 絶対とは言えないです~

 意地悪な悪霊さんに~ ダマされてるです~


 はわわ~」


とにかく疑えるものは疑ってかかる。【これは疑えないだろう】って事に関しては【悪霊】が登場する事になるんだけど・・・


ちょっとイタイ子? その【悪霊】の前では、全てが疑う対象となるらしい。


「疑う事は萌え~」


未だに理解出来ないが、彼女にとって【疑う】事は【萌え】に繋がるらしい。


とりあえず彼女の紹介はこの辺で。ラッセルちゃんの紹介は・・・ 後でね。



・・・ ・・・。


「今日もデカちゃん、遅刻しちゃいました~」


「また? デカ子、出席日数ヤバくね?」


ラッセルちゃんは、デカルトちゃんの事を【デカ子】と言う。


「そうなんです~

 デカちゃん、出席日数が~ 微妙なんです~


 はわわ~ どうしましょ~」


朝、起きればいいじゃん。


「全く。デカルトちゃん、ホントに朝が苦手よね~」


1つ確かな事がある。


デカルトちゃんは犯人じゃない。手紙の主は私より早く登校し、ルブラン君の靴箱にラブレターを入れている。


あれ? でも待ってよ?


「デカルトちゃんさ~。今日の朝、学校来てなかった?」


「はわ? 無理して起きたら~ 死んじゃうです~」


出た。


「今日もデカちゃん。超遅刻です~!!」


いや、そこで胸を張られても。


「でも私・・・ 

 朝、靴箱のところでカントちゃんが言ってたの、聞いたわ。


 【こんな朝早く、珍しいわね~ デカちゃん】って」


確か、そう言ってたわよね?


「デカちゃんは~ 今日起きたの、12時ちょうどです~

 学校来たのは~ お昼の2時ですから~


 カントちゃんが言ってたのは~ デカちゃんじゃないです~」


今、3時過ぎだけど・・・ 何しに学校来たんだ、この子?


「はいはい~ 僕の推理が正しければだね~」


ラッセルちゃんは、自分自身の事を【僕】と言う。


「多分それは、僕と同じクラスのハイデガーちゃんの事だと思うね。

 彼女、【デガちゃん】って呼ばれてるし」


なるほど。


「そうか~ 私の聞き間違えね。

 【デカちゃん】じゃなくて、【デガちゃん】だったのね」


おかげで・・・


朝が苦手なデカルトちゃんは、真っ先に犯人候補から除外された。


一方、ラッセルちゃんは・・・


「さぁ、今日は昨日の続き! 僕が集合論の基礎、教えるからね~」


あの手紙の主、つまり犯人の可能性はあるだろうか?



・・・ ・・・。


では、ここでラッセルちゃんの紹介。


何を隠そう、数学倶楽部の部長。ミニスカ+ヘソ出しルック・・・ ちょっと時代遅れな感はあるが、ツインテールの元気な女の子。かの天才・アインシュタインちゃんとも仲が良く、校内でも随一と言われるほど豊富な知識を持っている。


集合論を研究している部長。ここ最近の数学倶楽部では、部員相手に【集合論】のプチ講義をしてくれている。もっともその講義を聴いてるのは、私とデカルトちゃんの2人だけ。あとは幽霊部員なのよね~。


私達にとって、頼りになるっちゃ~ 頼りになる部長なんだけど・・・


まぁ、その本性は次のエピソードで解る事になるでしょう。



・・・ ・・・。


「集合論は、論理ロジックとも密接につながってるんだから。

 デカ子、論理的に【神の存在】を証明したいんでしょ?

 

 じゃ~、ちゃんと学ばなきゃダメよ~」


集合論を学ぶ事は、論理の基礎を学ぶことになり・・・ それは哲学を学ぶ上でとても大事だと部長は言う。私達に、ゲーデルちゃんの【不完全性定理】まで教えると張り切っている。この【不完全性定理】も、哲学的にも大きな意義があるらしいけど・・・ 正直難しいのよね~ 【集合論】。


でも私は、哲学者として成長したい! だから、難しくても頑張って勉強する!


ちなみにこの【集合論】は、数学の世界でも割と新しい研究分野らしく、聖フィロソフィー学園の中でも【現代組】の子達しか学んでいない。


果たして【古代組】の私と、【近代組】のデカルトちゃんに理解出来るのかしら?


昨日の講義で、【部分集合】と【空集合】について学んだ私達なんだけど・・・


「はわわ~ 昨日の~ 【くう集合】は~ 難しかったです~」


「私も! 【空集合は、全ての集合の部分集合になる】。

 そこがよくわからなかった」


空集合というのは、中身が空っぽの集合の事なんだけど・・・


そんな集合考えて、意味あるの?


「OK! じゃぁ、ちょいと復習からいきますか。まずは・・・」


【xが集合Aに属する → xは集合Bに属する】が成り立つとき、AはBの部分集合という。


例えば、


A={1,2,3,6}

B={1,2,3,4,6,12}


という2つの集合の場合、xがAに属しているならば(この場合、xは1,2,3,6のどれかになる)、そのxは(1,2,3,6のどれであっても)Bに属している。だから、AはBの部分集合なのだ。


「それはわかるんだけど・・・」


【空集合は、全ての集合の部分集合になる】と部長は言う。


「だったら・・・

 【xが空集合に属するならば、xは全ての集合にも属する】。


 それが成り立つって事よね?」


「そだよ」


即答する部長。


「でも空集合って、中身空っぽなんだからさ。

 xが空集合に属するって・・・ おかしくない?」


「デカちゃんも~ そこがよく、わからなかったです~」


「なるほど。2人とも、そこでひっかかってるわけね。

 じゃぁ、今日は集合とからめて、論理の基礎を教えよう~」


私達はテーブルの周りに座った。


「まずは・・・

 【デカ子がテストで100点とったならば、僕がケーキおごる】


 って、命題あったとするわよ?」


命題というのは【正しい】か【正しくない】か、どちらかになる文章や数式の事。


あらゆる哲学的命題の真偽を議論する事は、私達【聖フィロソフィー学園】の生徒にとって、大事な勉強。例えば命題【神はいる】とかね。


あ! 勘違いしないで。命題【神はいる】ってのは【神がいる】事を、必ずしも言ってるわけじゃないの。


命題は【正しくない】とわかってる事に対しても言うの。だから【2+3=100】のように、完璧間違っている数式も立派な命題なのだ。


一応私達の認識では、神は【いる】か【いない】かのどちらかでしょ? なので神が【いた】としても【いなかった】としても、【神はいる】は命題の1つになるのよ。


もう1つだけ。命題が正しい場合、その命題は【しん】、正しくない場合は【】と言うので、これも覚えておいてね。


【デカ子がテストで100点とったならば、僕がケーキおごる】


部長は紙にその命題を書き、テーブルの真ん中に置く。


「デカちゃん、ケーキ、大好きです~」


「いや、例えだから。で? 部長、続きを」


「ケース1。

 デカ子が100点とった。そして僕がケーキおごった。


 この時、この命題は真? 偽?」


「それは真です~ 100点とったんだから~

 デカちゃんが~ ケーキごちそうになるのは、当然です~」


「ま・・・ 疑う余地はない。真ね」


「正解。じゃぁ、ケース2。

 デカ子が100点とったのに、僕がケーキをおごらなかった。


 この場合、この命題の真偽は?」


「それは間違ってます~ 偽です~」


「うん。100点とったら、ケーキおごる約束だから・・・

 100点とったのに、おごらないってのはおかしい!!


 だからこの時、命題は偽!」


「OK! ではケース3。

 デカ子が100点とらなかったので・・・ 僕はケーキをおごらなかった。


 この時、命題は?」


「真です~」


「うん、私も正しいと思う。

 100点取れてないから、ケーキもらえないのは当然。


 命題としては間違ってない。真!」


「よし! 今のトコ、全て正解。ではラスト! ケース4!

 デカ子が100点とれなかった。なのに僕はケーキをおごった。


 この時、命題は真? 偽?」


「この時は~ 偽です~」


「私も正しくないと思う。偽よ」


ガラリ!!


その時、部室に入ってくる人物がいた。見覚えのない顔だ・・・ 誰?


「ラ、ラマヌジャンちゃん!?」


部長が裏返った声をあげる。ラマヌジャンちゃん?


「あら、ラッセルちゃん。こんにちは」


名前は聞いたことがある。確か部長と同じ【現代組】の子だ。肩まで伸びた真っ黒な黒髪と、大きなクリッとした黒い目。見た目から、インド出身? 独特の神秘的な魅力がある子だ。


「な・・・ 何故、ここへ?」


そして数学倶楽部の、幽霊部員の1人でもある。


「ただ、私の本を取りに来ただけ・・・」


 【デカ子がテストで100点とったならば、僕がケーキおごる】


「・・・ ・・・」


ラマヌジャンちゃんが、部長の書いた命題をじっと見つめた。


「あ、デカルトちゃんが100点取らなかった時にね・・・

 部長がケーキをおごったら、この命題は正しいかって話をしてたの。


 私とデカルトちゃんは、正しくないって思うんだけど・・・」


初対面の彼女に、声をかける私。


「絶対、偽です~」


命題は偽だという私とデカルトちゃんに対し・・・ ラマヌジャンちゃんは首を横に振って、こう告げた。


「正しいわよ。つまり、真」


「え? 嘘!」


「はわ?」


思わず声をあげる私達。


「何で? 100点取ったら、ケーキおごってもらえるんだから・・・

 100点取らなかったら、おごってもらえないでしょ?


 なんでこの命題が・・・ その時、真だって言えるの?」


「わかるの。ナマギーリ女神のおかげで・・・」


「え?」


「はわ?」


そう言うとラマヌジャンちゃんは、ニッコリと優しい笑顔を見せる。


いや・・・ 笑顔はステキだけど・・・


な、何? ナマギーリが何とかって?


部屋の奥の方へ行ったラマヌジャンちゃんは、数冊の本を手に取ると・・・


「それじゃ。私はこれで・・・」


言いながら、私をじっと見つめる。


「 ? 」


とてもステキな笑顔を見せると、そのまま部室を出て行った。


「・・・・ ・・・」


「はわわ~ ・・・」


彼女が出て行く姿を呆然と見つめていた私達。


「なんだか・・・ 不思議な子ね・・・」


閉じた扉を見ながら、私は呟いた。


「まぁ、僕にはわからないけど・・・

 天才には天才の世界があるのかも」


「天才?」


「そ。あの子は・・・ つかみ所が無いんだよね~」


部長が天才というぐらいだから・・・ よっぽど凄い子なんだろうな。


「はわわ~ でも、ホントに~ 彼女の言う通りですか~?

 デカちゃん、100点とらなかったのに~


 ケーキをおごってもらうってのは~

 この命題が正しい事になるんですか~?」


「私も信じられない。絶対、偽だと思う」


そんな私達に、部長はきっぱりと言う。


「ところがコレ、正しいんだね~ 真!」


え!? ホントに!?


「論理の世界では正しいんだ。こう考えるといい。

 例えばデカ子が99点取った。そこで僕は言う。


 【100点じゃないが、よく頑張った! だからケーキをおごろう!】

 どう? そういう成り行き、割と自然じゃない?」


「自然です~ ケーキ、欲しいです~」


「う~ん。確かに自然に聞こえるけど・・・」


釈然としない。


「いい? 

 【デカ子がテストで100点とったならば・・・】という命題。


 これは【100点をとった時】の事を言ってるだけなの」


「うん・・・」


「100点を取れなかった時の事は、一切言ってない。

 だから、デカ子が100点取れなかった時・・・


 僕がケーキおごっても、この命題を否定しいてる事にはならないのよ」


「なるほどです~ デカちゃん、わかったです~」


「・・・ ・・・」


デカルトちゃんは納得してるようだけど・・・


「結論。【pならばq】という命題を考える場合・・・

 前提pが【偽】ならば、qが【真】であっても【偽】であっても・・・


 命題【pならばq】は正しい、つまり【真】になる!」


言いながら部長は、


p|q|p→q

_______

T|T| T

T|F| F

F|T| T

F|F| T


こんな表を書いた。


「これ、真理値しんりち表って言うんだ。

 Tは【TRUTH】で、【真】って意味ね」


「デカちゃんのバッグにも~

 【TRUTH】って、書かれてるです~」


「そうそう。まさにそれ! 【真実】とか【正しい】って意味。

 Fは【FALSE】。もちろん【偽】【正しくない】って意味ね」


部長の英語の発音は、とても流ちょうだ。


「う~ん・・・」


しかめっ面の私。


「はわわ~

 確かに【p】が【偽】の時~ 【p→q】は2つとも【真】です~」


「だから

 【xが空集合に属するならば、xはどの集合にも属する】って命題。


 前提の【xが空集合に属する】がすでに間違ってるから・・・

 この命題自体は正しい事になるの!」


「むむむ・・・」


まだ微妙な理解の私。


「ゆえに【空集合は全ての集合の部分集合である】ってわけ!

 ん~。 Q.E.D.ね」


「デカちゃん、わかったです~」


「う、う~ん・・・」


論理も集合も難しい。


こうして・・・


この日の部長による【集合論講義】は終わった。何となく解ったような、解らなかったような・・・


「ふ~。じゃぁ、明日は【補集合】の話をするね~」


一息ついた部長。ふと、私を睨み付けた。いや・・・


「ピタ子さぁ、今日もブラジャーつけてるよね?」


私の胸を睨み付けた。


「え?」


さっきも言ったけど、私の事を【ピタ子】と呼ぶんだけど・・・


「デカ子のブラジャーは認めるけどさ~」


デカルトちゃんは【デカ子】と呼ぶわけで。


「・・・ ・・・」


つい、自分の胸を覗き込んだ私。明らかに・・・


胸の大きさで【デカ子】【ピタ子】と呼んでいる。失礼な!


ここだけの話、ラッセルちゃんの胸は・・・


ペッタンコだ。


「僕、思うんだけどさ。ピタ子にはね~ ブラ、必要ないよ?」


胸がつるぺたで、自分を【僕】と称する部長は・・・ 時々、男の子に間違えられる。本人は男の子と間違えられる事をすごく嫌うので、そこをイジったりはしないんだけど・・・


「あのね、部長。前も言ったけど・・・

 私はこう見えても、Bはあるんだから!」


思わずそう言ってしまった。だって目の前の部長より、絶対私の方が胸あるのよ! 


これは真実!!  TRUTH!


「こう見えても? 見えてないけど?」


出た。この言い方は、部長の作戦。


「ぐ・・・ だ、だからそれは・・・ 例えであって・・・」


わかってはいるんだけど・・・


「ピタ子。【見えても】と仮定しているのに・・・

 見せないって事よね?」


いつも、部長の術中にハマってしまう私。


「そ、それは・・・ そうよ・・・」


「でも、見せないんならさ・・・

 【こう見えても、私はHカップ】とでも言えるじゃん!」


なんていうか・・・ 人の揚げ足をとるのが絶妙なのよ。


「そ・・・ そりゃ、そうだけど・・・」


「つまり本当はAでも、Hだと言う事が出来る。

 見せないことが前提なら、何でもありじゃん?」


「う・・・」


言い返せない私。後で知る事になるんだけど・・・


これは哲学者の常套手段、【詭弁きべん】というんだって。


「結論として・・・ ブラを脱ごうとしないってわけよね?」


「う・・・」


始まった。


部長は1年前、通称【ブラパラ事件】を起こした。いわゆる【ブラジャー・パラドックス事件】。この事件は、彼女の集合論的パラドックスの追求による結果起きたらしいんだけど・・・


説明すると話が長くなるので、この事件の詳細は【番外編①】に預ける。


「きょ、今日はスポーツブラだから・・・」


「え~・・・ ハズし甲斐がいない~。なっせる~」


なっせる? 


明らかにテンション下がった部長。ちょっと落ち込んだ後、再び私を見た。いや・・・


私の胸を見た。


「じゃぁ、スポブラの先に豆つけたら?

 おっぱい、大きく見えてセクシーになるよ! 」


私は豆が大っっ嫌い!! 


それを知ってて言ってる。でも、ここでカッとなったら・・・ またさっきの繰り返しだ。


「胸の先に豆つけたら~ ラッセル、ラッセル~♪」


とにかく部長は下ネタが大好き。あと、オヤジギャグも。てか、中身はただの【エロセクハラオヤジ】だと断言できる。


哲学や数学やってる時は、超真面目なんだけどな~。


「・・・ ・・・」


私は思う。このエロオヤジが、あんなセンスのいいラブレターを書いたなんて・・・ まず、ありえない。そうとなれば・・・


「ねぇ。あなた達・・・」


私はテーブルの上に・・・


「ちょっとコレ、見てくれる?」


あのラブレターを置いた。ひと癖もふた癖もある連中だけど・・・


「はわ?」


「何?」


この数学倶楽部では、毎日部活に顔出す数少ない部員。


「コレ、誰が書いたか・・・ わかるかな?」


そして、頭はキレる子達だ。


「はわ? ラブレターみたいです~ いやいや~

 これがラブレターとは~ 簡単には信じないです~


 何かの罰ゲーム~ その可能性もあります~」


私は中から便せんを取り出し、それも広げて見せた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

愛しのルブラン君へ


毎日学園の窓から、あなたを見つめています。

もっと、あなたの近傍きんぼうに入りたい。


私の心はあなたに収束中・・・

限りなく近付いていけます。


メールアドレスを教えてくれたら・・・

毎日メーラー展開します♪


今日の放課後、校庭裏のポール公園にいます。

トイレ近くのベンチまで来て下さい。


時間は5時13分でどうでしょう?

私、12分までにいておきますから。


それじゃ、放課後・・・

お会いできる事を信じて、お待ちしております。


P.S.

あなたにとって、十分である必要はないけれど・・・

あなたにとって必要になれれば、私は十分です。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「有界名閉集合にして、この文章センス・・・」


「部長、何言ってんの?」


「コンパクトなのにセンスがいいって言ってんの!

 まぁ、僕ほどじゃないけどね」


「・・・ ・・・」


部長のギャグには、センスのかけらもない。


「玄関の前で、コレ落ちてるの見つけてさ」


私は嘘をつく。愛のためなら、嘘だって平気。


「落とし主に、返してあげたいんだけど・・・」


これも嘘。私以外に誰がルブラン君を狙ってるか、それを知りたいだけ。


「だからコレ、誰が書いたと思う?」


こうして、数学倶楽部に所属する私・ピタゴラスと・・・


「デカちゃん的には~ まずは部員、全員を疑ってみるです~

 手紙の主は~ 


 あなたよ! Pちゃん!」


朝が弱く、疑り深いデカルトちゃん。そして・・・


「僕が犯人? ち! バレちゃ~しょうがない。

 どうせ有罪は確定だ。それならば・・・


 お前のブラを頂く!」


私のド下手な物真似をする部長。すなわちエロオヤジのラッセルちゃんの3人で・・・


「おら! デカ子! 僕にお豆を見せなさい~」


「はわわ~」


このラブレターの主を探し出し・・・


「あまいです~ ラッセルちゃん~!

 デカちゃんが~ 女の子と思ってるみたいですけど~


 果たして真実かしら~?」


【犯人】の素性を調べるため・・・


「そんなの・・・ ブラを頂けば、解ること!」


「それはどうかしら~? 仮におっぱいがあったとしても~

 意地悪な亡霊さんに~ ダマされてるです~」


動き始めた・・・  


のか?


             (第5話へ続く)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

次回予告


1年前に起こった、【ブラジャー・パラドックス事件】。


これはラッセルちゃんの、集合論的パラドックスを追求する事がきっかけで起こった。最初の犠牲者はカントールちゃん。


そして・・・



次回 「 番外編①  ブラジャー・パラドックス事件 」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

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