第3話 数学倶楽部
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前回までのあらすじ
私、ピタゴラス。この物語の主人公。
3月14日、早朝。憧れのルブラン君の靴箱の中に、ラブレターを入れようと思ったら・・・すでに誰かのラブレターが入っていた。
それを盗み取った私は、こっそり中を読む。手紙の主は、私と同じ数学倶楽部に違いない。
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第3話 数学倶楽部
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午後3時。
この日の授業は終了。ショートホームルームを終えた私は、すぐに部室へと向かう。
【数】
【学】
【倶】
【楽】
【部】
部室の前にある、古びた立て看板。それを横目に勢いよくドアを開け、中に入っていった。15畳はある、まぁまぁ広い部室だ。
「・・・ ・・・」
部員は結構いるはずだが、ほとんどが幽霊部員。入り口に入ってすぐの壁には・・・ 数学倶楽部の部員が書いた、書き初めが貼られている。
【人間は、考える葦だっぴょん♪】
1番手前にあるのは、顧問であるパスカルちゃん先生の言葉。その横に、部員の言葉が続く。
【前に進んでるって? 嘘、嘘!】
ゼノンちゃんに
【我思う、ゆえに我萌え~】
デカルトちゃん。
【万物の根源は、水でアルケー】
タレスちゃんに・・・ 以下、名前は省略。
【神。お前はもう、死んでいる】
【ナマギーリ女神の、おかげです】
【幾何学知らないヤツ、来るなよ】
【ひとなみに、おごってよー】
正直言う。私はこの【ひとなみに・・・】の作品、大嫌い。
【余白、少ねー】
【内部告発】
これ、名前書かれてない。誰のだ?
【みんなの幸福の総和が、大きくなりま】
これは用紙に入りきれてない。
【いまいましいフレンチマドモアゼル!】
【3,2,1! ラッセル♪ ラッセル♪】
【天ではない、地が回っているのだ!】
・・・ ・・・。
このような部員自身の言葉を書き初めしたものが、卒業生のも含め50枚ぐらいある。
【3^2 + 4^2 = 5^2】
自分の作品を見ながら推理した。
「ラブレターの主は・・・
毎日、学園の窓から見つめていると言っていた。
ならば、卒業生じゃない・・・」
私は自分以外の在校生の作品に、1つ1つ視線を突き刺す。
「ちょうど20枚。その中に犯人が・・・」
いつの間にか私は、あのラブレターの主を【犯人】と呼んでいた。
部室の中をさぐり、何か犯人に繋がるものがないかを見て回る。
真ん中にテーブルが2つと、奥には小さな黒板がある。そして椅子が数脚あるだけ。それ以外は・・・
「紙と鉛筆・・・ あと、本しかないのよね・・・」
本は結構あるけど、全て数学書。数冊の本を手に取り、パラパラとめくるが・・・
「・・・ ・・・」
犯人に繋がるようなものは、見つけられない。簡素な部屋ゆえ、部屋の中の捜索はすぐに終わった。
「・・・ ・・・」
犯人の手がかりは得られず、髪につけた三角定木アクセサリーで頭をポリポリとかく。2つあるうちの、1:1:√2の方。45度の角で。
キーン コーン カーン・・・
校内放送だ。
【屋上での修復作業が終了しました。
これより、屋上への生徒の立ち入りを許可します】
キーン コーン カーン・・・
朝のショートホームルームで担任が言ってた。昨夜、何とか流星群の隕石が落ちて、金網が破れたって。だから今日、屋上はずっと立ち入り禁止だったのよね。
「・・・ ・・・」
私は星に興味ないし、屋上にも行ったことない。そんな事より・・・
「犯人が誰なのか・・・ 知りたい・・・」
そんな事を思っていたら・・・
ガラリ。
部室の扉が開き、誰かが入ってきた。
(第4話へ続く)
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次回予告
部室に現れたのは、同じ数学倶楽部のデカルトちゃんとラッセルちゃん。
この日の数学倶楽部では、【集合論】を専攻しているラッセルちゃんの講義。講義の途中、4人目の人物が部室に入ってきた。
次回 「 第4話 デカルトちゃんとラッセルちゃん 」
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