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ピタゴラスちゃんのジレンマ  作者: 伊吹 由
第1章 犯人を追え!
3/41

第3話  数学倶楽部

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

前回までのあらすじ


私、ピタゴラス。この物語の主人公。


3月14日、早朝。憧れのルブラン君の靴箱の中に、ラブレターを入れようと思ったら・・・すでに誰かのラブレターが入っていた。


それを盗み取った私は、こっそり中を読む。手紙の主は、私と同じ数学倶楽部に違いない。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


   第3話  数学倶楽部


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

午後3時。


この日の授業は終了。ショートホームルームを終えた私は、すぐに部室へと向かう。


【数】

【学】

【倶】

【楽】

【部】


部室の前にある、古びた立て看板。それを横目に勢いよくドアを開け、中に入っていった。15畳はある、まぁまぁ広い部室だ。


「・・・ ・・・」


部員は結構いるはずだが、ほとんどが幽霊部員。入り口に入ってすぐの壁には・・・ 数学倶楽部の部員が書いた、書き初めが貼られている。


【人間は、考える葦だっぴょん♪】


1番手前にあるのは、顧問であるパスカルちゃん先生の言葉。その横に、部員の言葉が続く。


【前に進んでるって? 嘘、嘘!】


ゼノンちゃんに


【我思う、ゆえに我萌え~】


デカルトちゃん。


【万物の根源は、水でアルケー】


タレスちゃんに・・・ 以下、名前は省略。


【神。お前はもう、死んでいる】


【ナマギーリ女神の、おかげです】


【幾何学知らないヤツ、来るなよ】


【ひとなみに、おごってよー】


正直言う。私はこの【ひとなみに・・・】の作品、大嫌い。


【余白、少ねー】


【内部告発】


これ、名前書かれてない。誰のだ?


【みんなの幸福の総和が、大きくなりま】


これは用紙に入りきれてない。


【いまいましいフレンチマドモアゼル!】


【3,2,1! ラッセル♪ ラッセル♪】


【天ではない、地が回っているのだ!】



・・・ ・・・。


このような部員自身の言葉を書き初めしたものが、卒業生のも含め50枚ぐらいある。


【3^2 + 4^2 = 5^2】


自分の作品を見ながら推理した。


「ラブレターの主は・・・

 毎日、学園の窓から見つめていると言っていた。


 ならば、卒業生じゃない・・・」


私は自分以外の在校生の作品に、1つ1つ視線を突き刺す。


「ちょうど20枚。その中に犯人が・・・」


いつの間にか私は、あのラブレターの主を【犯人】と呼んでいた。


部室の中をさぐり、何か犯人に繋がるものがないかを見て回る。


真ん中にテーブルが2つと、奥には小さな黒板がある。そして椅子が数脚あるだけ。それ以外は・・・


「紙と鉛筆・・・ あと、本しかないのよね・・・」


本は結構あるけど、全て数学書。数冊の本を手に取り、パラパラとめくるが・・・


「・・・ ・・・」


犯人に繋がるようなものは、見つけられない。簡素な部屋ゆえ、部屋の中の捜索はすぐに終わった。


「・・・ ・・・」


犯人の手がかりは得られず、髪につけた三角定木アクセサリーで頭をポリポリとかく。2つあるうちの、1:1:√2の方。45度の角で。


キーン コーン カーン・・・


校内放送だ。


【屋上での修復作業が終了しました。

 これより、屋上への生徒の立ち入りを許可します】


キーン コーン カーン・・・


朝のショートホームルームで担任が言ってた。昨夜、何とか流星群の隕石が落ちて、金網が破れたって。だから今日、屋上はずっと立ち入り禁止だったのよね。


「・・・ ・・・」


私は星に興味ないし、屋上にも行ったことない。そんな事より・・・


「犯人が誰なのか・・・ 知りたい・・・」


そんな事を思っていたら・・・


ガラリ。


部室の扉が開き、誰かが入ってきた。



             (第4話へ続く)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

次回予告


部室に現れたのは、同じ数学倶楽部のデカルトちゃんとラッセルちゃん。


この日の数学倶楽部では、【集合論】を専攻しているラッセルちゃんの講義。講義の途中、4人目の人物が部室に入ってきた。



次回 「 第4話  デカルトちゃんとラッセルちゃん 」

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