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ピタゴラスちゃんのジレンマ  作者: 伊吹 由
第1章 犯人を追え!
13/41

第12話  部長の予言

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

前回までのあらすじ


私、ピタゴラス。この物語の主人公。


3月14日、早朝。憧れのルブラン君の靴箱の中に、誰かが書いたラブレターを発見。


それを盗み見た私は、これを書いた人物(犯人)は数学倶楽部の部員と確信した。同じ数学倶楽部のデカルトちゃんとラッセルちゃんと共に、犯人を探し出そうとする。


でも私がラブレターを盗んだせいで・・・


ルブラン君は交通事故に遭って死んでしまった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


   第12話  部長の予言


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「はわわわ・・・」


「ル、ルブラン君が・・・ 殺された!?」


部長の言葉で、一気に現実に戻った私。


「ちょっと・・・ 声、おさえてよ・・・」


「はわわわ・・・」


「どうして!? 何でそう思うの!? 誰かが車でひき殺したっての!?」


矢継ぎ早に質問する私。


「まぁまぁ。落ち着いて。順を追って説明するから」


部長は、テーブルの上に紙と鉛筆を用意した。


「情報をまとめる。そこから導き出される可能性を全て考慮し・・・

 論理的な推論の元で・・・」


言いながら、紙の上に何かを書き出していく。


3月14日 水曜日

AM7:00 ピタ子。

靴箱からラブレターを盗む。カントちゃんとニアミス。


PM3:10頃 ピタ子、僕、デカ子。

部室で【集合論講義】。


PM3:25頃 3人

ピタ子にルブラン君宛のラブレターを見せられ、差出人を捜す事に。


PM3:30頃 3人

デカ子の発案で、公園に行くことを決定。


PM3:35頃 3人

ソーカルちゃんと遭遇。


・・・ ・・・


「昨日の事・・・ まとめてるのよね?」


「そう」


PM5:11 3人

デカ子がおしっこ。証人、僕。


「はわわ・・・

 デカちゃんが~ おしっこしてた時の事も~


 書き込むんですか~?」


「もちろん。デカ子がシロだっていう根拠になるし」


PM7:00頃 ピタ子、理事長

ピタ子、理事長から手紙を渡される。


【ピタゴラスに告ぐ】

【今すぐ、市立病院へ行きなさい! ルブラン君、死んじゃうわよ!】


PM9:00頃 ピタ子

ピタ子、病院到着。ルブラン君の死を知る。



「ピタ子・・・ なんで、病院辿り着くのに2時間もかかってんの?」


「それは・・・ タクシーの運転手に、病院までって言ったら・・・

 市立病院じゃなく、都立病院の方に行ったから・・・」


「なるほど。まぁ、気が動転したってわけね」



・・・ ・・・。


「よし。完成!」


私達は、部長が書いたそれに目を通す。


「まずコレよね」


PM5:12 ピタ子

ピタ子がコート姿の子を見た。しかし逃げられる。

ブカブカ帽子、黒コート、三角形のアクセ。


PM5:14頃 ピタ子

ベンチの上にあった手紙を確認。


【ピタゴラスに告ぐ】【from U】

【これ以上、ルブラン君に関わらないで。邪魔なのよ!】



「内容から察するに、手紙の主はピタ子が手紙を盗んだことを知っていた」


「まぁ、そう考えるのが妥当よね。

 でもどこで・・・ 私がラブレター盗んだのを知ったのかしら?」


「僕とデカ子が、ルブラン君に宛てられたラブレターを見たのは・・・」


PM3:25頃 3人

ピタ子にルブラン君宛のラブレターを見せられ、差出人を捜す事に。


「3時半前。

 この時から【from U】の手紙に遭遇するまでの約2時間・・・


 僕たち3人、ずっと一緒に行動していた。

 つまり僕とデカ子は、この手紙を書くだけの時間はなかった」


「最初から部長とデカルトちゃんは、疑ってないわよ」


「デカちゃん的には~ カントちゃん、怪しいです~

 朝一で~ Pちゃんと、ニアミスしてるです~」


「すぐ隠れたし、あの角度では・・・ 絶対私、見られてないと思う」


「カントちゃんの事は頭に入れておく。大事なのはこの先・・・

 コレよ!」


PM6:25頃 ピタ子

ピタ子、ルブラン君の家の前に現れる。


PM7:00頃 ピタ子、理事長

ピタ子、理事長から手紙を渡される。


【ピタゴラスに告ぐ】

【今すぐ、市立病院へ行きなさい! ルブラン君、死んじゃうわよ!】


「今朝、理事長言ってたわよね? 

 ルブラン君、昨日の夕方6時半ぐらいに・・・


 自宅前で、事故に遭ったって」


「うん・・・」


私は、元気なく頷いた。


「ピタ子、近くにいたんでしょ? 気づかなかった?」


言いながら部長は


PM6:30頃 ルブラン君

自宅近くで、交通事故に遭う。


と、紙に書き加える。


「救急車のサイレンは聞いたけど・・・

 まさかルブラン君が事故ってるなんて・・・」


「ふ~ん・・・ そっか・・・」


部長は腕組みした。


「病院へ行けと警告した人物なんだけどさ。

 逆算すると・・・


 ルブラン君が車にひかれた直後、この手紙を書いている事になるわ」


「はわわ・・・ ルブラン君が車にひかれたのに~

 こんな手紙を書くって~


 そんな神経の持ち主、ありえないです~」


「ヘタしたら・・・

 ルブラン君が車にひかれる前に、手紙を書いた可能性もある」


「え!? そ、そんな事・・・ あり得るの!?」


「可能性はなきにしもあらず・・・

 どちらにせよ・・・」


どちらにせよ?


「この手紙の主が、ルブラン君を殺したと思えば・・・

 スジが通るんじゃない?」


「えぇ!?」


「はわわ・・・」


「僕の仮説はこう。

 ストーカー並にルブラン君を愛するあまり・・・


 抱きついたか、何かの拍子で彼を道路に押し出した。

 そして彼は車にひかれてしまった」


「・・・ ・・・」


「突発的な事故です~?」


「うん。その子は自分のラブレターが、ピタ子に盗まれた事を知っている。

 いわばルブラン君をめぐって、恋敵と思ってるわけだから・・・


 死ぬかも知れないルブラン君に・・・

 最期、ピタ子を会わせてやろうとした」


「だから・・・ あんな手紙を書いた?」


「そんなとこね」


かなり無理のある話。


「苦しい仮説なのはわかってる。ただ1つ。

 どうみても、この手紙の主は・・・


 ルブラン君の【死】に関わっている。それだけは間違いないと思う」


彼が車にひかれた直後、手紙を書いてるのだから・・・


「デカちゃんも~ 部長の話聞いてたら~ そんな感じがします~」


「うん。私も・・・」


確かにそんな気がしてきた。でも・・・


「いったい誰が? ルブラン君の死に関わった人物なんて」


「はわわ~ 誰なんでしょう~?」


「そう言えば・・・」


部長が何かを思い出す。


「ほら、理事長からもらった手紙」


「ん? 何?」


「【from Π】とか【from U】とか、書いてなかった?」


「あぁ・・・」


昨日は混乱してたから,手紙の裏を確認するのを忘れてた。


「書いてる。ほら、コレ・・・」


「僕の予想じゃ、集合論の記号とみた。

 補集合を表す【C】か、あるいは・・・」


【from θ】


「あれ?」


部長の予想はハズれた。


「これは~ シータです~」


図形の角度を表すのに、よく使われる記号だ。


「あれれ~? 絶対、集合論がらみだと思ったのに。

 インターセクション、ユニオンときて・・・ 次がシータ?」


「部長が思ってるほど、この記号・・・

 意味なんて、ないんじゃない?」


私は素直に思った。


【Π】【U】【θ】


「そうね。こりゃ、意味なんてなさそ・・・」


突然部長の眉がつり上がる。


「・・・ ・・・」


【Π】【U】【θ】


じっと3つの記号を見つめながら・・・


「まさか・・・」


首を横に振った。


「部長?」


「どうしたです~?」


「・・・ ・・・」


部長の視線は、3つの記号を見つめたままだ。


「部長? 何かわかったの?」


「い、いや。まさか・・・ ね・・・」


「はわわ~ 何か解ったら~ 

 デカちゃん達にも~ 教えて欲しいです~」


「そうよ。部長・・・」


「・・・ ・・・」


眉をつり上げたままの部長。


「ピタ子。最初の手紙、持ってるわよね?

 【from Π】のヤツ」


「うん」


「見せて」


私はポケットに入れっぱなしだったその手紙を、部長に渡す。


「・・・ ・・・」


部長は便せんを取り出し、それを凝視した。


「5・・・ 13・・・ 」


「 ? 」


「もしも・・・」


部長は手紙を見つめながら


「もしも次、こんな手紙が来てさ。それが・・・」


「それが?」


「α(アルファ)からの手紙だったら・・・」


「α(アルファ)?」


【α(アルファ)】も、角度を表すのによく用いられる記号だ。【θ】の次にね。


「アルファだったら~ どうなるんです~?」


「手紙の主が確定する。確率的にも、ほぼ間違いなく・・・」


「だ、誰よ、それ!?」


私は、その手紙の主・・・ 犯人の正体を問い詰める。


「今は言えない。だって・・・」


いつもの部長とは違う。魂が抜けかけたような感じだ。


「だって、ありない事だから・・・」


「はわわ~ 教えて欲しいです~」


部長は首を横に振った。


「これは冗談抜きで、パラドックス・・・」


この部長の反応。


「・・・ ・・・」


もしかして・・・


「私達が知ってる人?」


ピンと来た私。


「うん」


部長はそれを認める。


「誰!?」


「言えない。それを口にすることは・・・

 哲学者にとって、大きな覚悟がいる・・・」


「はわわ~ そんなに~ 覚悟がいるんです~?」


「・・・ ・・・」


知りたい。でも部長にも部長の哲学がある。簡単に人の哲学を否定してはいけない。いけないけど・・・


「じゃ、じゃぁ・・・

 昨日1日で、会った人物の中にその人はいる?


 それだけでいいから、教えて!」


「・・・ ・・・」


逡巡の後、部長は・・・


「いる・・・」


私と目を合わせず、そう言った。


「・・・ ・・・」


部長の予言した、α(アルファ)からの手紙。


今から3分後・・・ 


その手紙を手にするなんて、夢にも思わなかった。




            (第13話へ続く)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

次回予告


部室を出た私は、ソーカルちゃんとぶつかった。


いつもとは、何かが違うソーカルちゃん。そんな彼女から・・・


私は【from α】の手紙を受け取った。


次回 「 第13話  違和感 」

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