第12話 部長の予言
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前回までのあらすじ
私、ピタゴラス。この物語の主人公。
3月14日、早朝。憧れのルブラン君の靴箱の中に、誰かが書いたラブレターを発見。
それを盗み見た私は、これを書いた人物(犯人)は数学倶楽部の部員と確信した。同じ数学倶楽部のデカルトちゃんとラッセルちゃんと共に、犯人を探し出そうとする。
でも私がラブレターを盗んだせいで・・・
ルブラン君は交通事故に遭って死んでしまった。
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第12話 部長の予言
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「はわわわ・・・」
「ル、ルブラン君が・・・ 殺された!?」
部長の言葉で、一気に現実に戻った私。
「ちょっと・・・ 声、おさえてよ・・・」
「はわわわ・・・」
「どうして!? 何でそう思うの!? 誰かが車でひき殺したっての!?」
矢継ぎ早に質問する私。
「まぁまぁ。落ち着いて。順を追って説明するから」
部長は、テーブルの上に紙と鉛筆を用意した。
「情報をまとめる。そこから導き出される可能性を全て考慮し・・・
論理的な推論の元で・・・」
言いながら、紙の上に何かを書き出していく。
3月14日 水曜日
AM7:00 ピタ子。
靴箱からラブレターを盗む。カントちゃんとニアミス。
PM3:10頃 ピタ子、僕、デカ子。
部室で【集合論講義】。
PM3:25頃 3人
ピタ子にルブラン君宛のラブレターを見せられ、差出人を捜す事に。
PM3:30頃 3人
デカ子の発案で、公園に行くことを決定。
PM3:35頃 3人
ソーカルちゃんと遭遇。
・・・ ・・・
「昨日の事・・・ まとめてるのよね?」
「そう」
PM5:11 3人
デカ子がおしっこ。証人、僕。
「はわわ・・・
デカちゃんが~ おしっこしてた時の事も~
書き込むんですか~?」
「もちろん。デカ子がシロだっていう根拠になるし」
PM7:00頃 ピタ子、理事長
ピタ子、理事長から手紙を渡される。
【ピタゴラスに告ぐ】
【今すぐ、市立病院へ行きなさい! ルブラン君、死んじゃうわよ!】
PM9:00頃 ピタ子
ピタ子、病院到着。ルブラン君の死を知る。
「ピタ子・・・ なんで、病院辿り着くのに2時間もかかってんの?」
「それは・・・ タクシーの運転手に、病院までって言ったら・・・
市立病院じゃなく、都立病院の方に行ったから・・・」
「なるほど。まぁ、気が動転したってわけね」
・・・ ・・・。
「よし。完成!」
私達は、部長が書いたそれに目を通す。
「まずコレよね」
PM5:12 ピタ子
ピタ子がコート姿の子を見た。しかし逃げられる。
ブカブカ帽子、黒コート、三角形のアクセ。
PM5:14頃 ピタ子
ベンチの上にあった手紙を確認。
【ピタゴラスに告ぐ】【from U】
【これ以上、ルブラン君に関わらないで。邪魔なのよ!】
「内容から察するに、手紙の主はピタ子が手紙を盗んだことを知っていた」
「まぁ、そう考えるのが妥当よね。
でもどこで・・・ 私がラブレター盗んだのを知ったのかしら?」
「僕とデカ子が、ルブラン君に宛てられたラブレターを見たのは・・・」
PM3:25頃 3人
ピタ子にルブラン君宛のラブレターを見せられ、差出人を捜す事に。
「3時半前。
この時から【from U】の手紙に遭遇するまでの約2時間・・・
僕たち3人、ずっと一緒に行動していた。
つまり僕とデカ子は、この手紙を書くだけの時間はなかった」
「最初から部長とデカルトちゃんは、疑ってないわよ」
「デカちゃん的には~ カントちゃん、怪しいです~
朝一で~ Pちゃんと、ニアミスしてるです~」
「すぐ隠れたし、あの角度では・・・ 絶対私、見られてないと思う」
「カントちゃんの事は頭に入れておく。大事なのはこの先・・・
コレよ!」
PM6:25頃 ピタ子
ピタ子、ルブラン君の家の前に現れる。
PM7:00頃 ピタ子、理事長
ピタ子、理事長から手紙を渡される。
【ピタゴラスに告ぐ】
【今すぐ、市立病院へ行きなさい! ルブラン君、死んじゃうわよ!】
「今朝、理事長言ってたわよね?
ルブラン君、昨日の夕方6時半ぐらいに・・・
自宅前で、事故に遭ったって」
「うん・・・」
私は、元気なく頷いた。
「ピタ子、近くにいたんでしょ? 気づかなかった?」
言いながら部長は
PM6:30頃 ルブラン君
自宅近くで、交通事故に遭う。
と、紙に書き加える。
「救急車のサイレンは聞いたけど・・・
まさかルブラン君が事故ってるなんて・・・」
「ふ~ん・・・ そっか・・・」
部長は腕組みした。
「病院へ行けと警告した人物なんだけどさ。
逆算すると・・・
ルブラン君が車にひかれた直後、この手紙を書いている事になるわ」
「はわわ・・・ ルブラン君が車にひかれたのに~
こんな手紙を書くって~
そんな神経の持ち主、ありえないです~」
「ヘタしたら・・・
ルブラン君が車にひかれる前に、手紙を書いた可能性もある」
「え!? そ、そんな事・・・ あり得るの!?」
「可能性はなきにしもあらず・・・
どちらにせよ・・・」
どちらにせよ?
「この手紙の主が、ルブラン君を殺したと思えば・・・
スジが通るんじゃない?」
「えぇ!?」
「はわわ・・・」
「僕の仮説はこう。
ストーカー並にルブラン君を愛するあまり・・・
抱きついたか、何かの拍子で彼を道路に押し出した。
そして彼は車にひかれてしまった」
「・・・ ・・・」
「突発的な事故です~?」
「うん。その子は自分のラブレターが、ピタ子に盗まれた事を知っている。
いわばルブラン君をめぐって、恋敵と思ってるわけだから・・・
死ぬかも知れないルブラン君に・・・
最期、ピタ子を会わせてやろうとした」
「だから・・・ あんな手紙を書いた?」
「そんなとこね」
かなり無理のある話。
「苦しい仮説なのはわかってる。ただ1つ。
どうみても、この手紙の主は・・・
ルブラン君の【死】に関わっている。それだけは間違いないと思う」
彼が車にひかれた直後、手紙を書いてるのだから・・・
「デカちゃんも~ 部長の話聞いてたら~ そんな感じがします~」
「うん。私も・・・」
確かにそんな気がしてきた。でも・・・
「いったい誰が? ルブラン君の死に関わった人物なんて」
「はわわ~ 誰なんでしょう~?」
「そう言えば・・・」
部長が何かを思い出す。
「ほら、理事長からもらった手紙」
「ん? 何?」
「【from Π】とか【from U】とか、書いてなかった?」
「あぁ・・・」
昨日は混乱してたから,手紙の裏を確認するのを忘れてた。
「書いてる。ほら、コレ・・・」
「僕の予想じゃ、集合論の記号とみた。
補集合を表す【C】か、あるいは・・・」
【from θ】
「あれ?」
部長の予想はハズれた。
「これは~ シータです~」
図形の角度を表すのに、よく使われる記号だ。
「あれれ~? 絶対、集合論がらみだと思ったのに。
インターセクション、ユニオンときて・・・ 次がシータ?」
「部長が思ってるほど、この記号・・・
意味なんて、ないんじゃない?」
私は素直に思った。
【Π】【U】【θ】
「そうね。こりゃ、意味なんてなさそ・・・」
突然部長の眉がつり上がる。
「・・・ ・・・」
【Π】【U】【θ】
じっと3つの記号を見つめながら・・・
「まさか・・・」
首を横に振った。
「部長?」
「どうしたです~?」
「・・・ ・・・」
部長の視線は、3つの記号を見つめたままだ。
「部長? 何かわかったの?」
「い、いや。まさか・・・ ね・・・」
「はわわ~ 何か解ったら~
デカちゃん達にも~ 教えて欲しいです~」
「そうよ。部長・・・」
「・・・ ・・・」
眉をつり上げたままの部長。
「ピタ子。最初の手紙、持ってるわよね?
【from Π】のヤツ」
「うん」
「見せて」
私はポケットに入れっぱなしだったその手紙を、部長に渡す。
「・・・ ・・・」
部長は便せんを取り出し、それを凝視した。
「5・・・ 13・・・ 」
「 ? 」
「もしも・・・」
部長は手紙を見つめながら
「もしも次、こんな手紙が来てさ。それが・・・」
「それが?」
「α(アルファ)からの手紙だったら・・・」
「α(アルファ)?」
【α(アルファ)】も、角度を表すのによく用いられる記号だ。【θ】の次にね。
「アルファだったら~ どうなるんです~?」
「手紙の主が確定する。確率的にも、ほぼ間違いなく・・・」
「だ、誰よ、それ!?」
私は、その手紙の主・・・ 犯人の正体を問い詰める。
「今は言えない。だって・・・」
いつもの部長とは違う。魂が抜けかけたような感じだ。
「だって、ありない事だから・・・」
「はわわ~ 教えて欲しいです~」
部長は首を横に振った。
「これは冗談抜きで、パラドックス・・・」
この部長の反応。
「・・・ ・・・」
もしかして・・・
「私達が知ってる人?」
ピンと来た私。
「うん」
部長はそれを認める。
「誰!?」
「言えない。それを口にすることは・・・
哲学者にとって、大きな覚悟がいる・・・」
「はわわ~ そんなに~ 覚悟がいるんです~?」
「・・・ ・・・」
知りたい。でも部長にも部長の哲学がある。簡単に人の哲学を否定してはいけない。いけないけど・・・
「じゃ、じゃぁ・・・
昨日1日で、会った人物の中にその人はいる?
それだけでいいから、教えて!」
「・・・ ・・・」
逡巡の後、部長は・・・
「いる・・・」
私と目を合わせず、そう言った。
「・・・ ・・・」
部長の予言した、α(アルファ)からの手紙。
今から3分後・・・
その手紙を手にするなんて、夢にも思わなかった。
(第13話へ続く)
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次回予告
部室を出た私は、ソーカルちゃんとぶつかった。
いつもとは、何かが違うソーカルちゃん。そんな彼女から・・・
私は【from α】の手紙を受け取った。
次回 「 第13話 違和感 」
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