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ピタゴラスちゃんのジレンマ  作者: 伊吹 由
第1章 犯人を追え!
12/41

第11話  ルブラン君の死

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

前回までのあらすじ


私、ピタゴラス。この物語の主人公。


3月14日、早朝。憧れのルブラン君の靴箱の中に、誰かが書いたラブレターを発見。


それを盗み見た私は、これを書いた人物(犯人)は数学倶楽部の部員と確信した。同じ数学倶楽部のデカルトちゃんとラッセルちゃんと共に、犯人を探し出そうとする。


犯人の現れる可能性が強いポール公園に向かった私達。怪しい人物を見かけたけど、逃げられてしまう。そしてその人物は、これ以上ルブラン君に関わらないでというメッセージを残していた。


メッセージを無視した私は、ルブラン君の家に向かう。そこで理事長と出会い、手紙を渡された。その手紙には・・・


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


   第11話  ルブラン君の死


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

私が謎の手紙を受け取った翌日。


3月15日。木曜日。


朝、聖フィロソフィー学園の全校生徒が、体育館に集められた。


そしてサンジェルマン理事長の口から・・・


【近代組】に所属するルブラン君・・・ 彼の【死】が告げられた。


自宅近くでの交通事故。タクシーにひかれ、ほぼ即死状態だったという。


体育館の至る所から、すすり鳴く声が聞こえてくる。


「・・・ ・・・」


私は涙を流すことはない。昨夜、病院で彼の死に顔を見た時、涙枯れるまで泣きはらしたからだ。


「・・・ ・・・」


ルブラン君の死に直面してから、今に至るまで


「・・・ ・・・」


私の記憶はない。何がどうなっているのか、その判断能力もない。


好きな人を失った・・・ それが事実なのだろうけど、その意味すらわらかない。哀しみだとか愛だとか、生きるだとか死ぬだとか・・・


今の私は何もわからない。


「・・・ ・・・」


真っ赤な目を理事長に向け・・・


私は抜け殻のように、呆然と立っていた。



・・・ ・・・。


放課後、数学倶楽部。


「私のせいよ!!」


デカルトちゃんと部長を前に、私は自分を責めていた。


「ホントは・・・ ホントは私・・・

 ルブラン君の靴箱から、あのラブレターを盗んだの!!」


正直に話す。


「私が盗まなければ・・・

 ルブラン君は公園に行っていた。交通事故にも遭わなかった!」


テーブルに突っ伏し、大声でわめいた。涙は出てこない。


「はわわ・・・」


デカルトちゃんは、どんな言葉をかけたらいいかわからない様子で・・・


「・・・ ・・・」


部長は、無表情で私を見ている。


やがて部長は腕組みをし、わめく私を見ながら眉間にしわをよせた。


「・・・ ・・・」


何かがに落ちないといった様子だ。数分後、ようやく部長が口を開く。


「ねぇ、ピタ子さぁ。昨日、病院行ったんだって?

 ルブラン君が運ばれた病院に?」


「それが何よ!!」


逆ギレ気味で返事した。


「どうしてピタ子・・・ ルブラン君が病院に運ばれた事、知ってたの?

 僕たちは誰一人、彼が事故に遭った事を知らなかった。


 今朝の全校集会までね」


「・・・ ・・・」


沈黙を保つ私。


「・・・ ・・・」


しばらくして私は、ポケットからあの手紙を取り出した。理事長から譲り受けたその手紙を、テーブルの上に広げて置く。


【今すぐ、市立病院へ行きなさい! ルブラン君、死んじゃうわよ!】


「これ・・・」


「え!? また、手紙もらったの? 誰から!?」


「はわわ~・・・」


「みんなと別れた後、理事長と偶然会って・・・ 

 この手紙を渡された・・・」


「理事長から!?

 まさかコレ、理事長が書いたわけじゃないでしょ!?」


直接会ってるんだから、手紙経由で会話するわけがない。


「じゃぁ、誰の手紙なの!?」


「大きな帽子かぶった、黒コートの子から・・・

 私に渡すように手紙を預かったって。


 多分、公園で私が見たのと同じ子だと思う・・・」


「はわわ~ それでPちゃん~ 病院にいたんですか~」


「どこで!? どこでそれ、もらったの!? 学校?」


私は首を横に振る。


「ルブラン君の・・・ 家の前。あの手紙の主を捜したくて・・・」


ここまで来たら、何もかも正直に話すわ。


「そこで理事長と会った?」


「うん・・・」


「・・・ ・・・」


ちょっと悩んだ表情を浮かべた部長は


「なるほど。偶然にしては、出来過ぎな気もするけど・・・」


【今すぐ、市立病院へ行きなさい! ルブラン君、死んじゃうわよ!】


「・・・ ・・・」


じっとその文面を凝視する。


「あのさ・・・」


「 ? 」


不意に部長は私の手を握ってきた。


「な・・・ なに?」


ゆっくりと顔をあげる私。デカルトちゃんも、部長に視線を合わせる。


「僕、思うんだけど・・・」


部長は、衝撃的な事を口にした。


「ルブラン君・・・ 殺されたんじゃないかな?」


「はわ!?」


「えぇ!?」



            (第12話へ続く)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

次回予告


部長は昨日の出来事を紙に書き始めた。


そして理事長から貰った手紙の裏に書かれた【from θ】を見て・・・


手紙の主を特定する。その人物は、1日前に私達が遭遇した人物の中に・・・


次回 「 第12話  部長の予言 」

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