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ピタゴラスちゃんのジレンマ  作者: 伊吹 由
第1章 犯人を追え!
11/41

第10話  理事長と手紙と私

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前回までのあらすじ


私、ピタゴラス。この物語の主人公。


3月14日、早朝。憧れのルブラン君の靴箱の中に、誰かが書いたラブレターを発見。


それを盗み見た私は、これを書いた人物(犯人)は数学倶楽部の部員と確信した。同じ数学倶楽部のデカルトちゃんとラッセルちゃんと共に、犯人を探し出そうとする。


デカルトちゃんの提案で、ポール公園に向かった私達。怪しい人物を追いかけたけど、逃げられてしまう。そしてその人物は、これ以上ルブラン君に関わらないでというメッセージを残していた。


私はメッセージを無視。ルブラン君の家に向かった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


   第10話  理事長と手紙と私


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ストーカーでも何でも、好きによぶがいい。私は惚れた相手に一直線。生年月日や血液型、住所だって調べ上げる。


「さすがピタゴラス教団の教祖様」


誰!?


「・・・ ・・・」


気のせいか。


住所はすでに調べていた私。でも、実際彼の家の前まで来たのは今日が初めて。


それにしても・・・


「すごいお屋敷・・・」


お金持ちの子と聞いてはいたけど・・・ 私の目の前には、3階建ての大きな洋館が建っている。数学的に言うと、50m×50m×15mの直方体がスッポリ入るといった感じかしら。


屋敷に入るためには、大きな正門を通らなければいけない。門には誰も立っていないけど、何かしらのセキュリティはあると思う。


目的はあのラブレターの主を見つける事だけど・・・


「ルブラン君・・・ 姿、見せないかな?」


いつしか私の視線は、犯人ではなく愛しの人を探していた。



・・・ ・・・。


7時ちょうど。ここに来て30分以上経つけど、特に変わった事はない。


と、思っていたら・・


「ピタゴラス君!」


電柱の影に隠れていた私に、透き通るようなテノール声がかけられた。


「ロ・・・ サンジェルマン理事長!?」


思わずロリコンと言おうとしたのは秘密。


「こんなところで・・・ 君は何を?」


視線は鋭いが、声は優しい。でも、通行人にも見えないように隠れていたのに・・・ なんで、私がここにいると?


「あ、えーっと・・・ その・・・」


理事長はチラリとお屋敷の方に視線を合わせた。そして再び私を見る。


「ルブランに、会いに来たのか?」


「え!? あ、いえ・・・」


いきなりど真ん中にストライクを投げ込まれた私は、しどろもどろに答える。


「・・・ ・・・」


理事長は無言で、スーツの胸ポケットに手を突っ込んだ。そして・・・


「ついさっき、ある女の子に会ってね。

 これをピタゴラス君に渡してくれと・・・」


「え?」


私に手紙を差し出す。


【ピタゴラスに告ぐ】


「!?」


ゴクリと唾を飲み込んだ。


「ま、まさか・・・」


「・・・ ・・・」


理事長が私の表情を伺っているけど、気づかない。震える手で、私はその手紙を受け取った。


「だ、誰が!?」


封を切る前、思わず理事長に大声で聞いてしまう。


「大きな帽子を目深まぶかにかぶって、黒いコートを着けていた。

 だが・・・


 顔を隠すようにしていたから、誰なのかはわからない。

 君の知り合いでは?」


公園で見たあの子だ!


「私が近くを通りかかったら、突然現れてね。

 【これを、あの電柱の影にいるピタゴラスちゃんへ渡して下さい】


 そう言って手紙を渡すと、すぐに走り去ったよ」


「・・・ ・・・」


起こりえない事が起きている。


部長とデカルトちゃんと別れた後・・・ 私は2人に黙って、ここに来た。ここに来る事は、誰にも行ってない。その私を先回りした!?


「ありえない・・・」


「手紙を・・・ 見ないのか?」


理事長が手紙を見るように促す。


「・・・ ・・・」


理事長に背を向けた私は、すぐに中に入っていた1枚の便せんを取り出した。


【今すぐ、市立病院へ行きなさい! ルブラン君、死んじゃうわよ!】


またしても1行。だけど・・・


「・・・ ・・・」


背中に理事長の視線が突き刺さる。


「な・・・ 何が・・・」


何が起こってるの!? 私の頭は混乱の極みだ。


もし・・・


もし、この手紙の内容が真実なら? 出所は未だに不明だが、この手紙の主は私の行動を知っている。そして今度は、ルブラン君が死ぬとまで言ってきた。


デタラメ? 私に報復するための嘘? それとも、まさか・・・ 


ホントにルブラン君は、死んじゃいそうなの?


心拍数が上がっていく私。


「り、理事長。さよなら! また明日、学校で!!」


とっても嫌な予感がした私は、大通りに出てタクシーを止めた。


「病院まで!!」


運転手にそう告げると、祈るように窓の外を見上げる。


「この手紙が、デタラメであることを証明しなければ・・・」


安心できない。



・・・ ・・・。


私があわててタクシーに乗り込む姿を・・・


「・・・ ・・・」


じっと見ていた理事長。


「有理数と直角三角形を愛する・・・ ピタゴラス君か・・・」


そう言いながら、彼は・・・


ルブラン君のお屋敷の中へ姿を消した。




            (第11話へ続く)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

次回予告


あまりにも突然の出来事だった。


ルブラン君は・・・ 


交通事故に遭って・・・



次回 「 第11話 ルブラン君の死 」

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